③体育祭
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あれから私は点滴が効いてある程度だるさが抜けるまで、保健所のベッドでぐうぐう寝ていた。涎たらしてたっぽいけどマスクのおかげで大惨事にはならずに済んだ。ありがとう偉大なるマスク。
と、まあそんな感じで寝ている間に人が来たらしく、その会話で私は目が覚めた。
「うるさいよホラ!心配するのは良いがこれから手術さね」
「シュジュツー!!?」
手術…?
え?私手術されちゃうの?たかが風邪なのに!?
「や、やだーーーッ!!!」
バッと起き上がって見れば目の前は締め切ったカーテン。誰も私の周りにいる様子はない。
あれ…私じゃない?じゃあ誰が。そう思いそっとカーテンを開けて見れば両腕を固定されている緑谷くんだった。
「緑谷くん!?」
「おや、アンタ起きたのかい。随分ぐっすり寝てたね」
「あ、そうなんですか?」
「澪さん…うるさくしてごめんね。」
「ううん、いいよ。だいぶ体楽になってるし。今試合してきたの?凄い姿になってるけど大丈夫?」
「うん、まぁなんとか…。轟くんと戦って負けちゃった」
「……そっか」
ぐるぐる巻きにされた包帯を見つめてから緑谷くんを見て聞けば、彼はゆっくりと頷いた。その目には少し涙が浮かんでいて、悔しいことは一目瞭然だった。
緑谷くんは馬鹿じゃないしよく考えるタイプの人だ。散々消さんには個性のことで注意されてるし、彼のケガと様子を見るかぎりだと無茶ではなく、無理をしたんだろう。
それに今日、体育祭が始まる前に轟くんと緑谷くんは少し揉めていた。きっとその辺のことでも緑谷轟戦で色々あったんだろう。
「さっき、皆の心配してたね。」
「…うん」
「私は皆と違って試合の流れ観てないけど、緑谷くんの怪我見てたらいつか誰も望んでない結果になってしまいそうで怖いや」
…死んじゃったら全部終わりなんだからね。
ポツリと呟いて彼の深い緑色の瞳を見やれば、こちらにも視線が返ってきた。
その瞳は少し驚いたような、動揺した顔をこちらに向けていた。
「……澪…さん?」
「…なーんて、こないだのことも考えたらお前が言うなってね!はははっ!」
よし、居づらい空気だから出ていくか…!
なんか枯れ木みたいなおじさんがちょっとハラハラした面持ちで私たちのコト見てるし。
「リカバリーガール、点滴ありがとうございました。体も楽になったからとりあえずスタジアムの生徒席に戻ります」
「具合悪くなったらまたおいで」
「はい」
保健所から出て、後ろ手で閉めたドアノブを離さずにギュ、と握りしめればじんわりと冷たさが手に広がった。
「何わかりきったこと言ってんだ私は。」
あーやだやだ、余計なお節介だこんなの。
パン、と軽く頬を叩いて私は皆の所へ戻った。
***
席の方に戻れば皆からまた大丈夫かと聞かれてしまった。このデジャヴ感!
「みんなに心配かけてばっかりだね、ありがとう。ただの風邪だから大丈夫だよ」
「きっと最近の疲れがドッとでたのね、ケロ」
「んー、なのかな。地味に相澤先生にチクチク言われそうで怖いや」
「え?相澤先生ってあんま前の失敗は不必要に掘り下げたりしなくね?」
「えっそうだっけ?」
上鳴くんに指摘されたけれどいまいちピンと来ない。
そうだっけ…いつも私あのおっさんに縛られながらネチネチ言われてた気がって…………弟子だからじゃないか。
しかもアレは私が消さんに向けてタイミング間違えて誤爆しちゃった時のことだ。
あとはお家腹減りすぎて消さんのゼリー奪ったことかな…?
…ううん、これは私が悪いのかなって気になってきた。あの時ちゃんと謝ったけれども。
「…ごめん気のせいだった」
「だよな?」
「う、うん………あ、三奈と常闇くんだ」
「あの二人も意外とやるよな!」
「ね。どっちがどういう戦術で勝つのか楽しみ」
「はぁっ!」
「甘い!」
「わっちょっと待って!?」
三奈は個性を使って応戦しているものの、やはり常闇くんの個性にはとても苦戦しているようで、最後はあっさりと場外にて負けてしまった。
「あーっやっぱり常闇くん強い…!」
「今のところ皆あの個性の立ち回りに翻弄されてるもんなぁ」
「あーあ、二人と戦ってみたかったな。私の場合海じゃないし、あっちは近接だから相性悪いだろうけど」
「そういや澪はモロ遠距離だもんな。近接で来たらどうすんだ?対策とかしてんのか?」
「…んー、その辺はまぁ多少はね。でも正直言って遠距離から狙いを定めて確実に攻撃する方が得意。」
「個性把握テストでもキロ単位出してたもんな。すげー支援に捗りそうだよなぁ」
「うん、まぁ…あ、三奈おかえり」
三奈は腕をだらりと垂らしていった
「ただいま〜…もう最悪…負けちゃった」
「結構粘ってたのにね」
「芦戸も悪くなかったぜ!」
「上鳴に言われてもねぇ」とジト目で言われて彼はウェイ…と落ち込んだ。
「あ、次始まるみたいだよ。」
次は、爆豪くんと切島くんの試合みたいだ。
私はまたスタジアムの方へと視線を戻した。
***
端的にいうと、今回の体育祭は宣言通り爆豪くんが一番を獲った。本当に伏線回収能力のすごい子だ。
でも絵面が酷い。なんだあれ…セメントス先生のコンクリに括り付けられて、腕は拘束。更に煩いのかハウンドドック先生みたいなやつつけられてる爆豪くんはとてもじゃないが1位にはとても見えなかった。
そしてオールマイトとの掛け声が噛み合わないなどがあったが、特に問題なく体育祭の幕は閉じた。
「おつかれっつうことで 明日明後日は休校だ。プロからの指名等をこっちでまとめて休み明けに発表する。ドキドキしながらしっかり休んでおけ」
まぁ、私は残念ながらほぼ私は第一種目でリタイア状態だったし、ほとんど指名なんてないよなぁ。
海難系のヒーロー事務所があればそこにしたいよね。
「てなわけで以上だ。起立、礼。さようなら」
さよーならーと掛け声をみんな口にして帰る。
私も帰ろうと思ったが、ちょっと私は足早にC組へと足を運んで行った。C組も丁度HRが終わったみたいで、担任の先生が出てくるところを見送り、教室に頭を入れて近くの人に声をかけた。
「あの、このクラスに心操人使くんいますよね?ちょっと呼んでもらってもいいですか?」
「ヒーロー科が?…まぁいいけど。おーい心操、ヒーロー科の女の子が呼んでるぞー」
ちょっと微妙な顔をされてしまったけどなんなんだろう。まぁ…その辺は触れないでおこう。
「アンタ…ヒーロー科の艦澪だっけ?」
「や!名前知っててくれたんだ!」
顔はマスクで隠れているものの、なるべく笑顔と伝えられるくらいの笑顔をキメて、手を顔の横に挙げて挨拶をしてみれば、こともあろうに彼は至極嫌そうな顔をした。なんでさ!
「…まぁまぁまぁまぁ!そんな嫌そうな顔しないでさ。ちょっと2階の休憩スペースまで行こうよ」
「……いやだって言ったら」
「やりたくないけど力づくで行こうかなって思ってる」
「お前なら勝てそうだ」
「やってみる?」
ちょっと挑発気味に言えば心操くんは眉を顰めた。
私と心操君の身長、体格差はかなりあるけれど、私は心操くんに勝てる自信はあるし心操くんもまた私が個性を使わなくてもきっと何かしら対策していると理解してくれたのか抵抗はせずに付いてきてくれた。
でもめちゃくちゃしぶしぶ付いて行きます。って態度されたけど。地味にそっちの方が傷つくね!
あとこの説明だけするとまるで心操くんを誘拐しようとしている敵みたいだ…。
なんとか休憩スペースまで付いてきてくれた彼は私が自販機のジュースを買うのを後ろから見守っていたものの痺れを切らしたのか彼は私に話しかけてきた。
「なぁ、一体何の用なんだ?」
「サイダーとみかんジュースどっちがいい?選んで」
「聞けよ…。…サイダー」
「ん。じゃあはい、これお礼。心操くんへの用事はリカバリーガールのところまで連れてってくれてありがとねっていう感謝の用事でした」
そう言ってサイダーを渡せば、訝しげな表情を浮かべていた心操くんはああ、とやっと腑に落ちた表情をしていた。
「それか。操ったことで文句言われるのかと思ってた」
「まぁあれは正直ムカついたけど競技中のことだし、それはそれこれはこれってことで。別に恨んじゃいないよ。むしろその個性を受けた身としてはすごい能力だと思ったよホント」
「そんなの上辺だけの言葉だろ」
「うわ、心操くんの反応と個性を考えると今まで散々どんな扱い受けてたのか想像つくけど、どんだけ拗らせて捻くれちゃったのさ…」
「察することができるならほっといてくれよ」
「いやまぁ、別に私は心操くんの友達でも恋人でも肉親でもないからほっておくけど…」
心操くんにそれを言うとちょっと驚いた顔をしてた。いや、どうしてさ…。
「てっきりお前お節介なやつだと思ってたから」
「間違ってないけどその辺絶対センシティブなやつだし触れないよ。あとしれっと私の心を読まないで!?相澤先生じゃないんだから!」
「あ、そういえば」
「今度は何さ!?もうお礼は終わったから帰ってもいいよ!?」
「お前相澤先生と何か教師と生徒以外での関係あるの?」
……!!!!!
「ないよ!!!」
「いやめっちゃあるよって顔してるしめっちゃ体上下に揺れてるよ」
「ここここれは悪寒による武者震い!」
「悪寒と武者震いってイコールにならないけど」
「だまりな小僧!」
「!?」
「とりあえず私は点滴打ってもらったけどまた風邪ぶり返したら大変だから帰るね!さようなら!」
「あっちょっとま…いいか。」
後ろから相澤先生に聞けばいいかって呟いたのが聞こえた気がしたからそれだけは勘弁!!!と叫んで帰った。
帰宅したあと、お父さんとお母さんは体育祭を見ていてくれたらしく、途中でリタイアをした理由を聞かれた。
途中で風邪をひいて具合悪くなったからリタイアしたんだと話せばお父さんからは過剰に心配され、お母さんからはあららとご飯をうどんにしてくれた。
ちなみに本日は個性も使ったので、消化にいいうどんにしてもらったものの、しっかりとおかわりしてしまったのである。
ごちそうさまでした。