③体育祭
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艦澪、やっっっと退院しました!
手に書いてあった時間通りに治ったよ。やった。
折れてた足も完治でいい感じで、足取りも軽やかだぜって回転ジャンプしちゃう。あはうふあはうふ…まるで不審者だわ、やめよ。
そして同時に思う自分の人外感。やめて、もうこの事には考えるのをやめたはずよ、と頭ン中でヒステリックに叫んでおいて頭をぱっぱらぱーにした。考えるのをやめたのだ。そういうシステム。深く考える必要はない。そう、思考放棄。
「おはようございまーす」
「あっ澪じゃねぇか!大丈夫か!?」
上鳴くんの呼びかけをきっかけに私は皆にたくさん大丈夫だった?と心配の声をもらった。
何て優しい子供達なんだ…ともう涙なしでは語れない。
そういえば、と辺りをキョロキョロすると、梅雨ちゃんが私の所に来て優しく「澪ちゃん、心配したわ。」とその大きな手で私の手を包んで握ってくれた。
「ごめんね、ありがとう。もう大丈夫」
怖がらせてごめんね、と私よりもほんの少し背の低い彼女を抱きしめて頭をポンポンを軽く叩くように撫でれば、ケロ、と一言鳴いて「怖かったのは、あなたの方じゃないの?」と返された。
あぁそうか。梅雨ちゃんと峰田くん、緑谷くんは私が記憶ないことは知らないのか。
てっきり消さん辺りが三人に教えてあげてるかと思ったけれど。まぁ消さんが私の同意なしで色々と教える理由もないもんね。
「梅雨ちゃん、もしよかったらお昼私とご飯食べない?こないだの事で、ちょっと話したくて。」
「ええ、いいわよ」
「あの場にいたのってあと緑谷くんと峰田くんもだよね?」
「ええ。でも峰田ちゃんはずっと見ていなかったから私と緑谷ちゃんで十分よ」
「あ、本当?わかったよ。じゃあ緑谷くんもお昼一緒に食べよう」
オイラだけハブられた!?なんで!?
人徳の問題だな…。なんて会話が聞こえた。
そんなやりとりを見てから緑谷くんにも「いい?」と目線を合わせると、控えめに頷いて返事をしてくれた。
「ホームルーム始めるぞ。さっさと座れ」
「はぁい」
ホームルームが始まると、消さんはおはようと挨拶をした後に「艦、退院おめでとう」と言ってくれた。
ありがとうございますーなんて軽く答えて終わった後に消さんに呼ばれて体育祭のことの概要が書いてあるプリントを貰った。でもこれ病院にいるときに渡して欲しかったよ?
…あ、消さん睨まないで。怖い。
―…時は少々流れ、昼。
「二人ともー、食堂行こー」
そう声を掛ければ二人はすぐ私の所に来て一緒に食堂へ向かってくれた。
なんか久しぶりにマイク先生見た気がしたけどあんな露骨にウザ絡みする人だっけ?なんて梅雨ちゃんに話せば「マイク先生も澪ちゃんが無事で嬉しかったのよ」と答えてくれて、緑谷くんも物凄く頷いてくれた。思わず「そ、そうなのかな」ってちょっと照れくさそうに言ってしまった。
…そうか、そんなに皆私の事心配してくれてたのね。ちょっと驚いた。
そういえば、とほどよく談笑する二人を見てクラスの固まり始めているグループを考えてみる。
特に誰とグループになってっていうのはまだわかってないけど、この二人と私の組み合わせはあんまりないのかもしれない。
梅雨ちゃんと常闇くんと組まされるのはなんとなくわかるけれど。
ちょっとレアなのかもなぁ思いながら私は食堂でカレー大盛をもらった。
適当に端の方に三人で座って食べると緑谷君がふとこちらを見て来て何かを話したそうだった。
あ、ちょっとまってね。今私も話したいところだけど思った以上にお腹すいてたみたいで口の中ハムスターみたいにパンパンだわ。詰め込みすぎた。
「っ、ごめん。はい、何かあればどうぞ緑谷くん」
「う…うん。艦さん、本当にもう大丈夫なの?あの敵に…」
「ああ待って待って。澪でいいよ。苗字、長くて呼びにくいでしょ?」
「えっあっ…み、お…さん」
「同い年なのになんだか私が年上みたいだね」
「澪ちゃん、緑谷ちゃんはそういうのに慣れてないわ」
「ひぇ!あっ、ごめ…っ!女の子と話し慣れてなくって…!」
「本当だね、ごめんごめん。」
面白いなぁ緑谷君…いや、いかんいかん。子供だからと言って彼はもう立派な男の子。あんまりこういう所を笑ってはダメだね。緑谷くんの自尊心を傷つけてしまうぞ。
「名前さえ呼んでくれるならさん付けでも構わないよ。それでね、ケガの方はもう本当にもう大丈夫。時間はかかったけれど個性のお陰で完治してるの」
ほら、と怪我の部分を見せたいが、それをやるにはお腹を見せなければならないので流石にお預けにした。
そういうのはクラスメイトとかじゃなくてもっと関係が深い人とじゃなきゃ無理だわ。まだ痴女になる気はないというかまだってなんだまだって。
そうやって心底が痴女みたいなのやめな?
「ねぇ二人とも。話は本題に入るんだけどね。私、今日は貴方達に聞きたい事があって話しかけたの。」
「聞きたいこと?」
「何かしら」
「あの時の私の状況」
「「え?」」
「私、あの時の記憶がないの。今まで個性を使っていてそんなことは一度もなかったから先生から写真を見せてもらった姿に変身できるなんて知らなかったの。」
「個性の…暴走?」
「…わからない。だから今回で二人があの時私に感じたことや、見たこと。わかったことを教えてほしい。」
二人は顔を見合わせてから頷くと、あの時のことをこと細やかに話してくれた。
「やっぱり私…だったんだね」
「ええ。」
「でもね、あんな禍々しい生物を使っててもね、澪さんは必死に先生のことを守ろうとしてあの敵と戦ってたんだ。
でも、何のことかはわからないけどあの姿になった時、『もう、繰り返したくない』とも言ってた」
「…繰り返し…たく…」
私はジワリと汗で滲んだ手を軽く握ってしまった。
「澪ちゃん、これは私の好奇心だし、言いたくないなら言わなくていいわ。
何かそう言いたくなるようなこと、過去にあったの?」
遠慮がちに梅雨ちゃんが聞いてくれたけれど私は少し沈黙をして考え、少しだけならと話した。
「昔、個性が発動してない頃なんだけど、年上に大事な友達がいてね、私とその子が襲われたときに、力がなくて守れなかったことがあったの。」
二人は黙って聞いてくれている。
ごめんね、ちょっと嘘吐いてるよ。
「私は大怪我したし、その子とも疎遠になってしまったことがあって。
もうお互い機会があって和解はしてるけれど、無力な中大事なものが失う怖さを知ってね。それがトラウマになってるのかもしれない」
「…そっか」
「だから私があの敵に吹っ飛ばされて水難ゾーンのプールに落ちた時、また守れないのか…って後悔しながら気を失っちゃったし」
「…ってなると、ああなったのは澪さんの後悔…負の感情の念が強かったから…?」
…上手いこと前世のことはごまかして話せたと思う。
ただ、それを皮切りにブツブツと横で喋り始めた緑谷くん。これは怖い。
「ブツブツブツブツ」
「「…」」
私が
てか食堂初めて使ったけどめちゃくちゃおいしいね?食べる手が止まらないわ。
「緑谷ちゃん怖いわ」
「あっねぇそういえば澪さんには副作用みたいなのってないの?」
「副作用?」
「うん。僕みたいに個性を使うとボロボロになっちゃうとか」
「あー、私の場合は飯田くんみたいな感じで食事で補う燃料制なの。だから使い終わったあとはめちゃくちゃお腹減るし燃料ない状態では個性は使えないの」
「そっか。…それなら、きっと澪さんが変身したのってまだ十分燃料にも余力があったからかな?
わからないと思うけど、燃料の残り具合とかも気にしてみたらいいのかもしれない。」
…なるほど。考えたことはなかったけれど、言われてみれば少し思い当たる節があるから緑谷くんの意見は納得できるかもしれない。
「断言は出来ないけれど、意識失う前はまだ燃料は十分残ってた。
でも次起きた時、燃料を最後まで使い切ってた感覚があったから可能性は十分にあるし、その後に起きた体調の変化のことも考えるとちょっとスルーできない意見かも」
「体調の変化?やっぱり澪ちゃん具合悪いんじゃないのかしら?」
「ううん、そっちじゃないんだよね。変化が起きてるのは食欲の方なの。」
「「食欲…?」」
「いつもは個性で燃料使い切った後って今日食べてる大盛りのカレーライスを食べるくらいでも大方回復するのね。だけど今回の出来事で全然お腹減ってる感覚がなくならないの。
あ、お代わりしに行ってきていい?」
「行ってらっしゃい。沢山貰ってくるといいわ」
「え?それって?!」
「うん。ちょっとごめん、戻ったらまた話すー。」
私は人が少なくなった受付けに行ってラッシュさんに「カレーおかわりしたいんですけど少なかったので大盛り分四人前一気にもらえませんか?」と言うと「え!?そんなに!?」って言われた。
ええ、そんなにです。
「ほ、本当に食べられるの?」
「食べます。イケます。お米もカレールウも絶品ですし」
「君お米の美味しさわかるの!?」
わかります、とサムズアップをして「ラッシュさんの住んでる新潟の米はやっぱり雑味も全然なくって、かつ粘りや香り、味も際立っててとても美味しいですよね。流石新潟です」なんて軽く話せば彼は泣いた。どうやらこんなにお米を好んで食べ、微細に米の味のわかる学生がいたことに感動したらしい。
いや、割りと今喋ったこと抽象的だった気がするけどいいのか?あ、いいのか。
まぁ今私はその米の風味を打ち消すかのごとくカレーをぶっかけて食べるんだけどね。
何か嬉しくなっちゃったらしいラッシュさんは最初はそんなに食べられるの?って心配してたけど、この話をしてから快く普段使わないであろう大きな皿にカレーを盛ってくれた。やった。
多分これ見た目が獣系の人とかに使う皿だろうな。おい誰だ今ボソッと大食い女って言ったの。って爆豪くんかよ!
また変なところ見られてしまったけど気を取り直して席に戻ると二人はもう食べ終わっていて、追加で持ってきた私の皿を見て真顔になっていた。
梅雨ちゃんは私に沢山貰ってこいっていったじゃん!?
そんな目で私を見ないでよ!
まぁ私がこんなに貰ってくるなんて思わなかったんでしょうけど!
「い、今もそんなに食べなきゃダメなの?」
「………うん。なんかね、食欲が止まらなくて食べても食べてもお腹が減るの。
多分これで一旦治るとは思うんだけどまた夜になったら沢山食べなきゃで、多分これがあの姿になった時のペナルティかもなーと思ってる」
緑谷くんと梅雨ちゃんが心配してる横で私はひょいパクひょいパクひょいパクひょいパク。
うーん…美味しい。手が止まらない。
「それは大変だね…」
「まぁ、病院で目が覚めた時はもっと食欲が酷かったからこれでもだいぶ治ってきてる方だよ。
だからあと多分3日くらいはこの調子だろうから、収まるまではお母さんからお昼は食堂にしなさいって言われてるんだよね」
「ケロ…流石にお母さんも大変ですものね。心中察するわ」
「最初話した時は嘘つくなって怒られたからね…でも本当にお腹減ってるって話をしていつもの倍の量食べておかわりって言ったら信じてくれたよ」
そのあとお父さんに
「今澪の体が一生懸命に健康になろうと修復してくれてるんだな。ママ、澪にたくさんご飯炊いてあげて!冷蔵庫の食料ありったけ出してあげなさい!」
って超ポジティブなこと言われたけどお母さんに
「もう白米しかないわよ!」
って嘆かれてしまったことを良く覚えてる。
母とはこんなやりとりしたことないから随分と印象に残った。
ごめんね…って思いながらその日は塩むすびにして食べたし、そのあと24時間営業の業務用スーパーに買い物行ってしこたま米と作らなくてもいいおかず(海苔の佃煮とか煮豆とか)もたくさん買ってくれたのは本当に申し訳なかった。
ごめん二人とも。破産させる気はないからね。
「…ふぅ、ご馳走様でした」
「た、食べ切ったー!」
「凄いわね、スプーンを運ぶ手が最初から最後まで止まらなかったわね、ケロ」
「美味しくてついね!あ、お昼休み終わっちゃうしもう戻らなきゃね。二人とも、あの時できた出来事とか考察とかしてくれてどうもありがとう。
まだああなるきっかけみたいなのは完全には掴めてないけれど、最初よりは理解も深めることができたし、ヒントにはなったかも。」
「そっか、もしまた何かこうかもって思ったらまた澪さんに話すよ」
「うん、ありがとう緑谷くん。あと梅雨ちゃんもね」
「いいのよ、諸々わかるといいわね」
「うん」
さてさて。
今日を入れてももう体育祭は二週間もない。とりあえずまだ全快とは言えない体を頑張って元に戻しますか。
待ってろ体育祭!
私にはちょっとした目標があるんだ!
頑張るぞーっオーッ!