②雄英入学~敵襲撃
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「(ここは…)」
眼が覚めるとまず入った情報は白い天井とカーテン、そして点滴。
「病…院?」
寝返りで打とうかと思ったが、お腹が痛い。
そういえば、あの変な敵と戦った時に一発やられて吹っ飛ばされたんだ…。
でも…こんなに怪我なんてしてただろうか。
腕も青アザだらけで骨もなんとなくキシキシいうし、それに口の中がなんとなく鉄臭い。しかも左足どうした?骨折してるぞ?
…あとどれくらい時間経ったのかわからないけど歯も磨いてないからか口臭いわ…。
つら…と思いながら息を吐き、元の体制に戻って腕を上げてナースコールを探す。
やがて見つけて押せばすぐにパタパタと足音がこちらに向かっているのがわかった。
カーテンを開けたのはお医者さんだった。
ちらりと夕日が目に入って眩しかったが、今は夕方なのか。
「艦さん、眼が覚めましたか!」
「…っは、い。あの…事件からどのくらい経ってますか…」
「はい。丸二日経ってます」
「丸…二日…」
そんなに私寝てたの?
流石に二日も寝通しって結構な怪我だったんじゃないの?
「学校の皆は無事でしょうか…」
「ああ、それなら大丈夫です。詳しい話はとりあえず後にしましょう。先に艦さんの状況を説明しますね。」
「…はい」
お医者さんから説明されると、私のお腹と左足がまぁ酷いことにはなってるけど個性使用中の時に受けた傷は不思議と治りが早いらしく、傷も残らない状態で治ってくれるらしい。
これは…初春たちのおかげだろうか。
あの子たちには感謝の念が絶えない。
「それで、ですね。ここに貴方が搬送された時に手の甲に時間が書いてあったんですよね。治療を施した後はその時間が減ったようなんですが…何かの個性ですか?」
「手の甲?」
気になって手の甲を見てみれば、左手の甲に29:49:50と書いてあった。
「………これはもしかしなくても…」
艦娘たちでいう、
「何か知ってるんですか?」
「………怪我が治るまでの時間です。」
「えっそんな便利な個性があるんですね!」
「いえ…私の個性が軍艦ですので、恐らくですが自分の個性が気を回して治るまで大人しくしていろ、という司令なんだと思います。」
苦笑いして答えると、お医者さんはキョトンとしていた。
多分間違ってない。
この時間見たら全く無理する気持ちがなくなった上にあちらの世界で使っていた“
はぁ、と左手を元の場所に戻してやると、看護師さんがやってきて両親が来ていると教えてくれたので、迎えるべく私はベッドの背中部分を動かしてもらい、二人が来るのを待った。
「お母さん」
「澪…!」
おはよ、なんていつもの調子で言ってみてもお母さんから返事はなかった。
…あれ?……もしかして超怒らせた?
「…っ、よかっ…」
「あ…お母さ「澪!!!怪我は大丈夫か?!」あうあうあうあうんんんんんっっっ」
お父さんん!娘怪我してる!怪我してるからガクガク揺らさないでぇえ!
「パパ!」
「あっ澪ごめんね。パパ心配しちゃって思わず…」
「う、うん…いいよ…心配かけてごめんね」
怪我は酷いものの割と元気そうな様子を見た母は泣き始め、父は心底安心したという普段明るい二人が見せない表情を見た私は申し訳なさでいっぱいになった。
「さっきお医者さんから説明あったけど、怪我も綺麗に治るって」
「2、3週間くらいか…?」
「ううん、不思議な話なんだけど、個性のおかげかあと…30時間くらいで治るみたい」
「あ、明日か!?」
「澪嘘ついてない?無理してるとかじゃないわよね?」
キッとキツく私を見てから母はお医者さんに「どうなんですか?」と尋ねるとお医者さんもううんと唸った。
「でも彼女の今の治癒力は異常ですよ。
おととい搬送された時点ではもっと傷が多く、擦り傷もありましたが見てください。
もうすでに治っていて、更に複数あった打撲痕も赤黒かったのに今はもう黄色いんですよ」
ほら、とお医者さんが見せると流石に納得したのかお母さんは「それなら、本当に治りそうね…」と大人しく引きがった。
「ねぇお父さん、学校側からは何か説明とか、なんか言われた?」
「ん?ああ、謝罪とパパたちが聞ける範囲の事情説明、そして治療費はいただいたよ。敵が来たってことも聞いてる」
「そう。……あ」
「どうしたの?」
「…消さん、イレイザーヘッドは…っ!」
私の言葉を被せるようにノック音が鳴り、父が振り返って「どうぞ」と言えば、包帯だらけの男が入ってきた。
「な、何…!?」
「ああ、相澤先生こんにちは。今日もいらしてくださったんですね」
「えっあっ消さ…先生!?」
「艦。起きたのか」
のそりのそりとゆっくりなペースでこちらに近づいてくる消さん。
顔中が包帯だらけの状態で来られて怯えないわけがない。
「艦さん、今入って大丈夫でしたか?」
消さんが尋ねるとお父さんはええ大丈夫ですよ、ね?とお医者さんにも聞けば「ええ、私達はもう今出るところでしたので」と看護師を連れて部屋から出ていってしまった。
きっと気を遣ってくれたんだろう。
私が暫く驚いた表情で消さんの顔を凝視していると、両親に関係者以外には話せない内容ですので、少し席を外していただけますでしょうか、と消さんは断りを入れた。
「ええ。というよりも、今日は澪が目覚めた姿を見られただけでもう十分ですので、我々は今日はもう帰ります。」
「そうですか、気を遣わせてしまって申し訳ありません」
「いいえ、相澤先生もお大事に」
両親は病室から出て行き、さて、と消さんは私のベッド横にあるパイプ椅子へと座った。
「消、さん」
「なんだ」
「消さん…生きてる…の?」
「ああ、生きてるよ」
ずり、と少し近づいておそるおそる腕を広げると、消さんは少し間を置いたものの、一言「お互い怪我してるからあんまり強くするなよ」とため息をついて私の腕の中に近付いてくれた。
「消さん…!」
そっと抱きつくと、彼の温もりが少しだけ感じ取れることができた。
ああ、消さんはここにいる。
「よかった…っよかったぁ…!また守れないまま失うんじゃないかって、怖くて…っ怖くて…!」
「お前はまだヒヨッコだろうが」
「消さんより年上だしぃ〜…っうぅっひぐっえぐぅっ」
「相変わらず口が減らねぇなこの弟子は。あと俺の捕縛布に鼻水つく。離れろ」
「冷たいい〜〜〜ひぐぅ…私目の前で敵にやられているところ見て怖かったんだからぁ〜〜〜」
離れてからもわんわん泣いていると、何をどうやったのかティッシュ箱が投げつけられておでこにクリーンヒットした。痛い。
「お前、変身してる時のこと覚えてるか?」
「変身?何それ」
そういえば怪我増えてるんだけど、左足とか吹っ飛ばされた時にでも折れたの?と聞くと消さんは黙ってしまった。え?怒らせた?なんか雰囲気怖くない?
「あくまでシラを切る気か」
「は?何言ってんの」
「正直に話せ。これはどういうことだ」
どうやって出してきたのかまたピラリと今度は写真を出してきた。消さん器用だね?
何さ、と出された写真を見れば体が固まった。
…どうして?
「………なん、で戦艦水鬼の、艤装が…」
「センカンスイキ?」
「これ、雄英に出てきたの!?」
思わず服を掴んで勢いよく尋ねると、消さんは少し呻いて「待て。こちらが先に聞いている」とたしなめられる。
「…私は知らないよ。なんでこいつが出たのかもね。だって私消さん助けに行った時敵に一回吹っ飛ばされてそのまま水難ゾーンで意識飛んだし…。
というかそいつでてたってことは戦艦水鬼って敵もでて攻撃されたんじゃないの?大丈夫だった?」
「何を言って……待て」
暫く消さんは目を瞑り考えていたようだった。
「消さん…?」
「…もう一枚写真がある。これはお前で、この写真の姿から元の姿に戻る瞬間を目撃した人間は何人もいる。それを頭に入れて見てくれ」
また出された写真を見れば、青白い肌に長い髪の毛の背の高い女性が写っていた。
この様子だと施設内のカメラにでも写ってたのを印刷したんだろう。
若干の見づらさを感じ、一瞬誰だと思うがすぐにこれは私だということがわかった。
「…うそ」
「本当だ。お前はこの姿になって、脳無と戦っていた。俺やクラスメイトも見ている。
特に緑谷、峰田、蛙吹は一連の流れを見ていたそうだ」
「…そんな、信じられない。何でよりによって深海棲艦になったの…?」
「おい、シンカイセイカンってどういう…」
「…え?私、前にこの艤装に殺されたのに、これを使ってたの…?」
血が引いていくのがわかった。
クシャリと写真を握り締め、若干折れてしまった。
「澪」
「…なに、消、さん」
「お前、本当に何も覚えてないし、この姿になれることは知らなかったんだな?」
「うん…知らない…。知ってたらこんなことになってなかったし、師匠である消さんにもちゃんと話してたよ…」
その答えに消さんは満足したのか、一つ息を吐いて前のめりだった体制から椅子の背もたれに寄りかかる楽な体制に戻った。
「そうか。お前はちゃんと報告すべきものはするやつだったな。いきなり色々聞いて悪かった。」
「…ううん。大丈夫。でも、これちゃんと消さんには話さなきゃ、だ」
一つ、沈黙が走ってから消さんがそうだなと言ってくれたことで私は消さんにちゃんと話すことにした。
「こんな所。だからさっきの写真見た時は正直焦ったし、更にこれが私だって知った時は怖くなった。何がきっかけでああなったのかもわからない」
「…そうか」
「ごめん消さん…覚えてなくて」
「いや。いい。それにお前の反応や話を聞いて白だとわかったことだし、俺はもう帰るとするよ」
「…ん??白?ちょっと待ってどういうこと?」
待ってと服の裾を間一髪で掴んで引き留める。
流石に怪我が痛いのか、首だけこちらに向けるという事はせずに病室の入り口側を見たまま彼は喋った。
「今、お前には内通者ではないかと疑われている」
…は?
「な、内通者…!?」
「そうだ。今回の周到な作戦を行ったこと、そしてカリキュラムの把握の件。内通者でもいないと難しいことだった」
「わ、私違うよ…?」
「知っている。緑谷や蛙吹、他にもお前の戦う姿を直に見た奴らは絶対違うとは言っているし、俺も間近で少し見たが敵意もなく、目の前で死にかけていた俺を守ろうとしていただけだったのがわかった」
私は…深海棲艦になっても消さんのこと、守ろうとしてたの?
…いや、私の気を失う前の事を思い出すと、私は多分消さんが守りたくて、深海棲艦になったのかも、しれない。随分と直感的だがそう信じたかった。
「だが、そうでない外部の学校関係者からしたらお前の生きた艤装の容姿を含め、疑う要素しかないと思っているようだ」
「だから内通者…」
「ったく。もしそうだったら俺は何年こいつに騙されてることになんだ」
ブツブツと文句を言う消さんは珍しい。流石に私と過ごした年数がそこそこ長いからか私に対する不満がちらほら聞こえる。
ちょっとまって今ポンコツっていった?ねぇ?
そんなことを思っている時に私はハッとある事に気付いた。
「ね、下手したら消さんも疑われるんじゃないの?師匠だし」
「その可能性はあるな」
「あるって…私学校やめた方がいいんじゃないの…?」
「やめとけ。そんなくだらんことで辞める必要はないしこれは状況的な判断のみで全く証拠も何もない。
それを言えばこの学校全員内通者の容疑がかけられてもおかしくないんだ。
お前がもし何かを言われたとしてもいい堂々としていればいい。
お前は俺の弟子だ。もし何かあってお前が骨になったときは粉にして海に撒くくらいのことはしてやる」
「消さん…」
流石私の師匠…。
どんな危険な立場になっても最後は私を守って…
ん…?
「今なんて言った?」
「だから、お前に何かがあっても骨は海に撒いてやる」
「…消さん……」
私てっきり俺がお前を守ってやるくらいの台詞を言ってくれるのかなって思ってフライングしてちょっと涙が出てたけど、まさかの骨になるエンドなの…?
そして海に撒かれちゃうの?え?涙引っ込んだじゃん。
「色々文句言いたいけどお互い怪我に響きそうなのでやめとく」
「ぜひそうしろ」
「このおっさんむかつく…」
ツン、とそっぽ向いて無視された。
この人ホントいい加減にしてほしい。
「そういえば怪我はどれくらいで治るか医者から聞いたか」
「え?あ、多分30時間くらい経ったら治る」
「えらい具体的だな」
「だって初春たちが気を利かせて教えてくれたんだもの」
ほらと左てを出して見せてやれば、消さんは納得して「じゃあリカバリーガールはいらなさそうだな」と聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「ちょっとまって。私30時間も寝たきりなのはいやだよ?少しでも治る時間が短くなるならガール呼んでよ消さん…」
「いや、駄目だな。お前には大人しくしてもらう。これは罰だ」
「罰ぅ?一体何の」
「主にお前がこんな怪我したことだな」
「えっ」
なにそれ、一体何の権利があって!
「師匠権利だな」
「表情で思ってる事読まないで消さん。でも私これ関係ないじゃん…記憶なかったし」
ねえ?と消さんに話しかけると、彼からの返事はなく、病室は静まり返った。
どうした、と思ったが喋ることができない空気で。
そしてやっと消さんの口が開いた。
「お前、俺が死にかけてた時どう思った」
「そりゃ、何で、とか助けなきゃ、とか。あと一応今の所一番の心の拠り所にしてる消さんを失うのは怖いって思ったよ」
「俺はお前を拠り所にはしていないが似たような感情を感じた。
病院で目が覚めて話を聞けば弟子もくたばり掛けてるって聞いたからな。本当に心配した上、お前が割と俺の中の順位位置が高いことに気付いて腹が立った」
「因みに順位は…」
「13位だ。ちなみに一から三位までは寝袋、ゼリー飲料、猫だ」
「知ってた」
知ってたよ。そのくらい。てか思ったより私の順位が高いことにびっくりしたよ。
「まぁ、だからこれは嫌がらせだ」
「いやがらせ」
「そうだ。30時間、お前はここで“安全に、安静に療養”しなさい」
…!
「…はーい、じゃあ、お言葉に甘えて、そうします」
「それじゃあな」
「ん。消さん気を付けてね。また明後日学校で」
消さんがヨロヨロと帰るのを見送ると、一人になった病室を眺めた。
…割と暇すぎて寝るしかないんじゃないか。
うわぁと思っているとスッと少しだけドアが開いて消さんの顔だけのぞかせていた。
「澪。二週間後に雄英体育祭があるからな」
ピシャンと病室のドアは閉められ、また病室に沈黙が走る。
「あ、あの…それ最後に、しかもついでみたいに言う…?」
超大事な、ビッグイベントじゃん…?
いや、もう…や、忘れられたまま帰られるよりはよかったか、と自分を納得させる。
何はともあれ…
「五体満足で生きててよかったー!神様、仏様、艦娘様!守ってくれてありがとー!」
私は身体的にも、精神的にも疲れた体を休めることを専念することにした。