噂の彼女
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一旦家に釣竿を取りに寄ると山城さんは釣竿見るなり、
「えー、釣りー!?いやだよー!!私、餌とか触れないし!!」
『餌なら俺がつけるからさ。ほら行こうよ。』
と、何とか説得していつもの防波堤に向かう。
約束通り俺が彼女の釣竿にも餌をつけてあげて2人並んで釣りを始めた。
「釣れないねぇ…。」
『あはは。まだ始めたばっかじゃん。そんなすぐ釣れるもんじゃないよ。』
彼女は退屈そうに海を眺めていたので俺は聞きたかったこと聞いてみることにした。
『ね。話したくなかったら話さなくてもいいけど。なんでそんな変な噂ばっか流されてるのか教えてくれない?』
「噂じゃなくて事実かもしれないよ?」
彼女は笑いながら顔でそう答えた。
『いや、それはないね。俺、人を見る目に長けてるから。山城さんの事まだ噂でしか知らない時は本当にそうなのかなって思ってたけど、今は性格が悪いとか男癖が悪いとか全部嘘だって分かってる。
妬みや嫉妬かなって思っててたけど、それにしてはあれはちょっと行き過ぎてるでしょ?』
「そっか。今まで他の人には話さなかったし、話さないって決めてたんだけど何か仙道君には話してもいいかなーって思えてきちゃった。」
そして山城さんはゆっくり話を始めた。
「まぁ軽い嫌がらせを受けてたのは入学した時からずっとだよ。
私、高1の時全日本のユースに選ばれたんだけどその時に高校卒業したらアメリカに行こうって決めたの。
でも2年生の時に肘の靭帯を怪我して実は今も治療中で…。そんなにひどい怪我じゃないから治療しながらでもテニスができてるけどアメリカに行くのはしっかり怪我を治してからにしたほうがいいって先生やコーチにも言われて…。
だから私は日本で大学に進むことに決めたの。ウチのテニス部は関東体育大学のテニス推薦が毎年1枠あるからね。
でも、私全然知らなかったんだけど副キャプテンのマイもその推薦枠を狙ってたみたいで…。
アメリカ行きがダメになったからマイが狙ってた推薦枠を取るなんていくらなんでもひどいんじゃないかって他の部員たちから責められて…。
そこからかな、いじめがエスカレートしていったのは…。変な噂流されたり、ロッカー荒されたり、ラケット隠されたりもした…。」
『そっか。そんなのただの逆恨みなのにな。辛かったね。』
「ううん。確かに逆恨みなのかもしれないけど、私は同じチームメートの前のこと何も分かってなくて。それが悔しくて申し訳なかった…。」
辛い話をしているはずなのに、一切そんなそぶりを見せない。
そんな健気な彼女の頭を俺はポンポンと優しく叩いた。
そんな時、
「あれっ?なんか竿が重い。」
『魚来てるんだよ!山城さん、早くリール巻いて!!』
「えっ!これどーやって巻くのよ!?」
と、なんだかんだで2人で力を合わせて魚を釣り上げた。
あんなに釣りを嫌がっていた彼女も釣った魚を見てうれしそうな顔をしていた。そんな彼女の嬉しそうな顔を見て俺もまた嬉しくなった。
「仙道くん、今日は本当にありがとう。すごく楽しかった。」
ペコリと頭を下げてそういった。
『いや、こちらこそ。俺も楽しかった。あと…、話してくれてありがとう。いろいろ思うことあるかもしれないけど、君は自信を持って関体大に進んだらいいよ。』
「あっ、実は…。今日断っちゃったんだ関体大の推薦…。」
『えっ?ええーっ!?いいのかよ!!関体大って言ったら全国でも屈指のテニス強豪大学だろ!?』
俺は驚きのあまり周りも気にせず大きな声を出してしまった。
「いーのっ!どうせ私は怪我が治ればすぐにアメリカだし。だから大学なんてどこでもいいのっ!」
そう言って彼女はニカッと笑った。
その笑顔はいつもの強がっているものとは違って、なんだか清々しいように思えた。
『じゃあさぁ、深体大にしなよ。俺と同じ深体大!関体大ほどではないけど、あそこもそこそこ強豪だろ?』
「うーん、それもいいかも…!」
『でさ、その後一緒にアメリカ行こう!俺もいずれはアメリカでバスケするつもりだからっ!』
「あははっ。いいねいいね!」
そう言って笑う彼女が可愛くて俺は思わずぎゅっと抱きしめた。
「ちょっ!仙道くん…?」
彼女は驚いた様子で俺の腕の中でもぞもぞと動いていた。
『俺、その顔好き。その笑ってる顔。でもあの無理して笑ってる顔は嫌い。』
「じゃあまた笑わせてよ。」
『おっけー。任せて。ねぇ、リリコって呼んでもいい?』
「うん、いいよ。」
『ねぇ、俺リリコの彼氏になってもいい?』
「えー?考えとく。」
『前向きに頼むな。』
「うん、わかった。」
山城を腕の中に閉じ込めたままそんな会話をして、しばらくそのまま2人とも動かなかった。
お互いにそれが心地良かったから。