噂の彼女
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俺は陵南バスケ部3年、仙道彰。
陵南高校はこの夏ついに神奈川予選を突破し悲願のインターハイ出場を決めた。
茂一や彦一なんかはもう大号泣して喜んでいた。
インターハイ予選が終わった翌週のある日。
「仙道、明日は放課後バスケ部と同じくインターハイ出場を決めた女子テニス部と一緒に理事長への活動報告会だ。キャプテンも同席してもらう。授業が終わったら校長室へ来いよ。絶対に遅れるな?」
『あぁ、了解っす。』
「いいか?絶対に遅れるなよ?」
俺は遅刻常習犯だから釘を刺されるのも仕方がない。
めんどくさいが、理事長への報告と言う事は今後のバスケ部の活動費などにも関わってくる。
明日だけは絶対に遅れるわけにいかないと俺は気を引き締めた。
そしてテニス部と言えば山城 リリコだ。
彼女はテニス部のキャプテン、そしてこの学校では1番の有名人だ。
うちの女子テニス部は毎年全国でも上位に入る強豪校だが、その中でも彼女は頭1つ飛び抜けている。
それもそうだ、彼女は全日本ユース代表であり将来のオリンピック候補とまで言われている選手だから。
ついでに性格の悪さ、男癖の悪さなども有名で、部活動中はまるで女王様で他の部員の扱いが酷いとか、日本代表に選ばれるために全日本の監督と寝たとか言う噂まで流れていた。
外でのワークアウト中、テニス部の練習を見る事はよくあったが、プレイ中の彼女は何というか凛々しく近寄りがたいオーラが出ているのは事実だ。
それゆえにそんな噂が流れてしまっているのだろうか。
しかしいつも誰よりも遅くまで残って練習している姿もよく目にした。
性格の話とかはよくわからないけど、誰よりもテニスを愛し一生懸命なんだろう言うのは知っていた。
まっ、俺は彼女とは話したことも関わったこともないけど。
次の日、校長室へ行くと既に茂一とテニス部の顧問、そして山城さんがいた。
「ふぅ…。なんとか時間通りに来たな、仙道。全くお前はヒヤヒヤさせおって…。」
ホームルームが長引いたせいで俺のせいじゃねーよ。と反論しそうになったがそこは堪えた。
茂一に小言を言われる俺の姿を見て山城さんはクスクスと笑っていた。
俺は初めて近くで彼女を見た。くりっとした大きな瞳に整って目鼻立ち。
不覚にも可愛いと思ってしまった。
そして、
「仙道くん、私はテニス部キャプテンの山城 リリコよ。バスケ部初インターハイおめでとう。お互い頑張ろうね。」
山城さんはにっこりと笑いながら俺に手を差し出した。
正直驚いた。噂でよく聞く山城 リリコとはどんな高飛車な女なんだろうと思っていたら、こんな社交的な子だったから。
『はははっ。知ってるよ、有名人。』
「それはどうも。」
そう言って俺は彼女を茶化しながら差し出された手を握った。
その後校長室で報告会が行われた。理事長や校長の話が思いのほか長くて疲れた。
その後生徒の俺と山城さんは先に退室した。
「ふわ~ぁ。校長たちの話ほんと長かったね。疲れたぁ~。」
そう言って山城さんは大きく伸びをした。
『だな。山城さんはこれから練習?』
「もちろん!インターハイも近いからね。仙道くんは?」
『うーん…。俺は疲れたし今日はサボろうかなぁ。』
「あははっ。それはいいねぇ!」
俺が冗談でそう言うと彼女はまた笑っていた。
その後お互い練習へ向かうため、2人で校舎をしばらく歩きながらいろんな話をした。
なんか想像していた山城さんとは全然違ってすぐに打ち解けた。
「じゃあね、仙道君。いろいろ話せて楽しかった!私たちバスケ部に負けないように頑張るから。またね!」
『おう!俺たちも負けないよ。またな!』
山城さんは俺に手をひらひらと振ってくれたので、俺も振りかえして別れた。
噂に聞く山城 リリコとは全然違って噂を信じてはいけないなぁ。なんて思ったものの、あれだけ可愛ければ、男は放っておくはずがない。
男癖が悪いとか男たらしとかの噂はあながち間違いではないかもしれない。
次の日は雨だったので、いつも外で練習しているテニス部は俺たちと同じ体育館内で基礎トレーニングをしていた。
俺は気がつけば無意識に山城さんの姿を探していた。
今までテニスにも彼女にもそんなに興味がなかったので気にして見た事はなかったが、
彼女は黙々とトレーニングをこなす傍、キャプテンとして他の部員たちに指示を出したり、後輩たちに積極的にアドバイスを行っていて、その姿はただの面倒見の良い先輩といった感じだった。
なのになぜあんな噂が流れているのか不思議でしょうがなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
部活も終盤。俺は荷物を取りに行くため倉庫に行き扉を開けようとすると中に人の気配を感じた。
気づかれないように隙間からこっそり覗くと中にはテニス部の女子部員が3人こそこそと話をしていた。
「竹内、今日練習が終わった後、リリコのロッカーに入ってるユニホームビリビリに破いときなさいよ。」
「でも…。そんなことしたら山城先輩明日の練習試合困るんじゃ…?」
「困らせるためにやるのよ。いい?やらなきゃ次はあんたがリリコみたいになるわよ。」
「わっ、わかりました…。」
中では3年生2人が後輩部員に山城さんに嫌がらせをするように強要していた。
俺は中の3人を今すぐ止めようかとも悩んだが、もしそのせいで山城さんが余計に嫌がらせを受けてもいけない。
俺はすぐさまトレーニング中の山城さんの元へ走った。
『あのさっ!山城さん!お願いがあるんだけど、ユニフォーム貸してくれないかな?』
「えっ!ユニフォーム!?一体何に使うのよ?」
彼女はとても戸惑った顔をしていた。
そりゃ男にユニフォームを貸してくれなんて言われたらそんな顔するのも無理は無い。
実際俺も山城さんに変態とか思われたらどうしようと思いながら聞いている。
しかし俺は今そんな事はどうでもいいと思えるほど必死だ。
『あっ、いや。変なことには使わないよ!バスケ部のユニフォーム新しくしようかなと思ってて。テニス部の参考にさせてもらえないかなぁって。ダメかな…?』
「それならいいけど…。でも明日の練習試合で使うから明後日とかでもいい?」
『いや!急を要するんだ!明日試合は何時から?明日の朝イチで必ず返すから今貸して欲しい!!』
「あ、うん。わ、分かった。」
不審に思われたらどうしようかと思ったが山城さんは俺の勢いに押されてすぐに部室にユニホームを取りに行ってくれた。
「はい。試合は10時からだからそれまでに必ず返してね。いつもみたいに遅刻しないでよ?」
そう言いながら彼女はいたずらっぽい顔をして笑った。
ふぅ…。これでなんとか彼女を守れる。
あれ?山城さんのためにどうして俺こんなに必死なんだろう…?
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