駅に到着し彼女は荷台から降りた。


「仙道先輩、わざわざありがとうございました。また明日！」


『おう。また明日な。』

そう言って彼女を見送ろうと改札のほうの掲示板を見ると赤い文字でこう書かれていた。



【人身事故による運転見合わせ】



改札に入ろうとした彼女もその文字に気づき足を止めた。



『リリコちゃん家どこ？チャリで送るよ。』


「私の家、小田原の方なんです。とても自転車で行ける距離じゃ…。」



ここから小田原なんて電車でも1時間以上かかるじゃないか。
そんな遠くから通っていたのか…。


しかしどうしようか。
このまま1人ここに置いていくわけにはいかない。


人身事故もついさっき起こったばかりのようなので、運転が再開されるのももう少し先になりそうだ。


もうこれしかない…。
俺はある1つの提案を彼女にした。





『俺のアパートすぐ側だからさ…。その…泊まってく？』


どうでもいい女の子たちには簡単に言えるこの言葉も、リリコちゃんに言うのに凄く緊張した。


「えっ！いや、そんなのダメですよ！」


リリコちゃんは真っ赤な顔しながらそう言った。

大体の女の子たちは俺がそう誘えばホイホイついてくるって言うのに。
なんか新鮮な感覚だなあ。なんて呑気に考えてしまっていた。


『じゃあちゃリリコんどうするの？いつ運転再開されるかはわからないんだよ？歩いて帰るの？それとも野宿？』


「うぅ…。」


何も思い浮かばなくて困った様子のリリコちゃん。


『俺だってかわいい後輩をこのまま置いて帰るわけにいかないんだから。大丈夫だって、何もしないから。』


「じゃ、じゃあ…。申し訳ありませんが、お言葉に甘えさせてもらっていいですか…。」


『もちろん』


こうして俺は再び彼女を後ろに乗せて自分の家向かった。「お邪魔します。」

そう言って彼女は礼儀正しく靴を揃えて俺の部屋に入った。


女の子を家に連れ込む事は珍しくはないことだが、他の女の子と違ってなんだか緊張してしまう。


『リリコちゃん、お腹すいたっしょ？俺、たいしたものは作れないけどご飯作っておくから、先にシャワーを浴びといでよ。』


そう言って俺はタンスからパジャマ用にと服を出して渡した。


そういう関係ではないし、かわいい後輩とそういう行為は絶対にしないと神に誓っていた俺だったが、彼女がシャワーを浴びっている間はずっとそわそわしていた。


だけどそれは彼女も同じようで、家に着いてからも終始緊張しているようだった。


お風呂から出てきた彼女の姿を見ると、さすがに俺の服とだとさすがにでかすぎたようでTシャツは膝位まで、ズボンは引きずっていた。
そんな姿が少し可愛くていとおしく思えた。


『はははっ。子供が大人の服着てるみたい。さすがにデカいね。でもそれしかないから我慢してね。』


「もうっ！あんまり笑わないでくださいよー！」


リリコちゃんはまた顔を赤らめて恥ずかしそうにしていた。



その後、俺が作ったチャーハンを2人でテレビを見ながら食べていた。　

リリコちゃんはおいしいと言いながらうれしそうに全部食べてくれて俺はそれがすごく嬉しかった。



ご飯を食べ終わり俺が風呂から上がると、片付けや食器を洗ったりしてくれていた。


『食器洗ってくれたんだ。ありがとね。』


「私、居候ですから。これくらいは。」


『あはは。居候じゃなくて大事なお客さんだよ。明日も朝練で早く起きなきゃだしそろそろ寝ようか。リリコちゃん、ベッド使っていいよ。』


「えっ？じゃあ仙道さんはどこで寝るんですか？」


そう言ってリリコちゃんはくるっと部屋を見渡す。
ワンルームの狭いこの部屋にはソファーは無い。