ガラガラッーーー


俺が体育館の扉を開を開けた瞬間、




「コラァーーーー！！仙道ー！！このバカモンがァーーーーーー！！！！何をしておったー！！！！」


案の定監督のものすごい雷が落ちる。



『すっ、すみません、監督。今日も寝坊です。』



頭をポリポリ掻きながら苦笑いで答えると、



「まったくお前は。インターハイ予選も近いというのにたるみ過ぎだ。もう少しエースとしての自覚を持ってだな」


監督の長い説教が始まったなぁと聞き流してると俺の後ろに隠れていた先程の女の子が口を開いた。


「ちょっとお父さん。自分だってお弁当忘れてたるんでるんじゃない？仙道くん、校門で迷ってた私をここまで案内してくれたんだしもう怒んないであげてよ。」



「リリコ！！！！！な、何故ここに！？」




そう言って彼女は田岡先生にお弁当ボックスを差し出した。



ん…？
お父さん……？



『えっ！！お父さん！？！？』


思わず心の声が漏れてしまった。



「お前にお父さんと呼ばれる覚えはないわい！！」


『あっ、いや。そういう事じゃなくて…。なんか…似てないなーと。』


「なにィーー？」



激怒する田岡先生と後ろでザワつく部員たち。

まさかこんな可愛らしい女の子が田岡先生の娘だと言うのだ。みんなが驚くのも無理はない。


「あなたが仙道さんだったんですね。教えてくれればよかったのに。ここまで案内してくださってありがとうございました。」


そう言ってリリコちゃんは礼儀正しく俺にペコっと頭を下げた。



『どういたしまして。君こそ田岡先生の娘さんなら最初からそう言ってくれれば良かったのに。』


茶化すように俺はリリコちゃんに言う。



「いや、なんか親子って照れ臭いじゃないですか。本当はこっそりお弁当渡して帰るつもりだったのに仙道さんが怒られてたから。」


『ははは、そっか。助けてくれてありがとな。』


俺とリリコちゃんは2人で顔を見合わせて笑った。


リリコちゃんは時計を見ると、


「あっ。私も今日は練習あるからそろそろ行かないと。じゃあねお父さん。」


と言って体育館を出ようとしていた。




「おお。わざわざ悪かったな。練習頑張れよ、リリコ。」


扉の前まで我が娘を見送る田岡先生。



「うん、じゃあ行ってきまーす。」


体育館を出て行こうとするリリコちゃんの後ろ姿をぼんやり見つめていると彼女は再び振り返り俺の方を見た。


「仙道さーん、ありがとう！またね！」


とヒラヒラと手を振ってくれた。
それに俺も手を振りかえす。




…またね！か…。





その日からしばらく彼女のことが頭から離れなかった。