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複雑回帰(過去選)

昔、昔の事でした。

所謂プロメーテウスや、天使ルキフェルが人間たちにちょっかいをかけていなかったほど昔、或る砂浜に、綺麗なものが大好きな少年が居りました。

その少年は心の底から綺麗な物……例えば、ダイアモンドとか、エメラルドとか……を愛して居りましたし、何より綺麗なものが大好きな自分の事を、いちばん愛して居りました。

さて、その少年がいつもの様に砂浜を散歩して居りましたところ、ゆらゆらと怪しく揺らめきながら、橙色の光を放つものがありました。

少年は一体どうしてか、その揺らめくものにひどく心惹かれ、──ああ、自分のものにしてしまいたい!──と、強く思いました。

しかし少年が揺らめくものに手を伸ばしてみますと、余りに熱くて触れそうにありません。

それでも諦めきれなかった少年は、神さまにこう、ねがいました。

──どうか、神さま。私にこの、非道く熱く、それでいて、私の心をつかんでしまったこの橙色のものを手に入れる力を、お与えください──と。

それを聞いた神さまは憤慨し、少年の体を美しく透き通るものに変えてしまいました。

しかし少年は、神さまが自分の体を変え、手に取れるようにして下さったのだ、と勘違いしてしまいました。

そこで少年は、もう一度あの、怪しく揺れる橙色のものに手を伸ばしました。

すると、見る見るうちに体が溶けていくではありませんか!
少年は神さまが間違いを犯したのだ、と最初は思いましたが、いや、もしかしたらこの美しいのと同化しているのかも知れない…と思い始めました。

そうして橙色に倒れ込むようにすると、先ず腕が、そして胸のあたりと鼻が、次に顔が、最後に背中が溶けていき、全部、砂浜に落ちて行きました。

それを波が方々へと散らし、様々な島へと持って行きました。

それからと言うもの、砂を少年の体と同じように焼いて見せると、かつての変貌した少年のような、透き通った硝子が出来るようになりました。

そうして美しいものになった少年は、いつまでも、いつまでも幸せで居続けられるようになりました。

おしまい。
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