公安に餌付けされたDJ
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幼馴染のゼロは昔から凄い奴だった。それに負けないようにっていうよりは、サポートしてやりたい気持ちが強かった。俺の自慢の不器用な親友だからね。
「ゼロ、腕少し擦り剝いてるよ?どうしたの?」
「ああ、今日、歩道橋の上から女の子が降ってきて、それを受け止めた時かもしれない」
「え!?その子大丈夫だったの?」
「問題ない、怪我はしていないはずだ。それよりも精神的に疲れてそうだったけどな。風見に渡そうと思っていたおかずを押し付けてしまったよ」
「ふふっ、昔はからきし料理出来なかったのに、だいぶ様になってきたな」
「ヒロが教えてくれたからね。あの子、びっくりするくらい軽くてさ、しかも説教じみたこともしてしまった」
「無事ならいいね」と声をかけると、「もう会うことは無いだろ」とゼロは澄まして笑った。
***
「君に拒否権は無いぞ。こちらは今すぐ現行犯逮捕してやってもいいんだがな」
「全てが勝手すぎる.....あんなに美味しいお弁当を作ったお兄さんがこんな極悪非道な人だなんて.....」
「失礼だな。僕は君の命の恩人と言っても過言ではないだろう?」
「別に助けてなんて言ってない!」
「ほぉ、どうやら本当に捕まりたいらしい」
「ちょっと!この前の事件誰のお陰だと思ってんのさ!そもそもあんな機密情報漏洩するとか頭おかしいから!」
「それは、こちらのミスだと謝っただろう」
「それが謝る態度かぁ!?」
ガチャガチャと手錠をぶら下げるゼロとキャンキャン吠えている子犬みたいな彼女とのやり取りは、部下が見たらなんて思うだろう。何を言われても狼狽えないゼロだが、少しだけ楽しそうだった。
「なぜそこまで断る?君も多少の正義感があってあそこまでしてくれたんだろ?」
「あの時は、居ても立っても居られなかっただけで、そう何度も危険な真似は出来ない。まあ、私も結果的に助けられて良かったところはあるけど....」
「?」
「とにかく、元々の仕事内容と大きく変わる部分が多いし、危険なのはもう絶対嫌!」
「そうか、では両手を差し出してもらおうか」
「くっそぉ....」
本当はこの小さな女の子を助けてあげたいところだけども、こちらも仕事としてやってきた訳である。
そろそろ、親友を助けに行こうか。
***
ずっとお礼を言いたかったお弁当のお兄さんが、まさかの雇い主で、こんなに横暴で偉そうなやつだったなんて!ここまで第一印象をズタズタにされる感覚は初めてだ。しかし、本当にまずい。このままだと、ムショってやつなのでは?迫ってくる鉄の塊に怯えている時、びっくりするくらい優しい声がかけられた。
「ゼロ、オレにいい考えがあるよ」
「ヒロ、勝手に出てくるなよ」
「いいじゃないか。ねえ君、こちらとしては、今まで通りシステムの漏れが無いようにして欲しいだけなんだ。だから命に関わるようなことには巻き込まないよ、安心して?約束するからね」
「....本当?」
「ああ、本当だよ。もし何かあったらオレ達が守ってみせるから」
突如として現れた王子みたいに優しい紳士に眩暈がしそうだ。頑なに断っていた私は呆気なく敗北してしまった。それにしても良い声だな、彼の声をサンプリングしてDJの時使ったら世の女の子がメロメロになってしまいそうだ。
紳士さんの方へ体を向き直し、「今まで通りなら」と小さく呟いて了承した。
私ってこんなにチョロかったっけ。
まずは前回の事件についての流れを3人で情報交換していく。警察の事はよく分からないけど、きっとこの二人はエリートってやつなんだと思う。理解力がすごいなんてもんじゃない。一通り情報を掴んだ後、二人はこちらに向き直した。
「『ネームレス』という名前で我々は君の事を呼んでいる。今後は僕と、ここにいるヒロと、風見という部下の三人と主にやり取りを行うことになる。よろしく頼む」
「じゃあ、この前の違法作業はチャラ?」
「まあ、捜査において違法は付き物だ。迅速な調査、感謝するよ」
(偉そ~)
「よろしくね、オレは諸伏景光、ヒロって呼んでいいよ!」
「よろしくヒロ!本当綺麗な声してるね」
「本当かい?まあそれは、ゼロのお陰かな」
「僕とはいささか対応が違うな」
なんだかんだ歳が離れ過ぎている訳でもなさそうだし話しやすい。あの二人の雰囲気を感じさせるのは気のせいだろうか。正直違法作業はもう勘弁である。勿論私は、ブラックでなくてホワイトのハッカーだから。
「ねえ、名前聞いちゃダメ?ネームレスって呼ぶの違和感あって」
「うーん、橘だよ」
「ふふっ、分かった。いつか教えてね」
「うーん、気が向いたらね」
「そろそろ戻るぞ」と、声をかける降谷はドアの前に放置された私のお宝をまじまじと見つめていた
我ながら今日は大収穫である。お目当ての物は全てゲット出来たし、近くのCDショップの店員が作る紹介ポップは最新の音楽チャートを上手くまとめられており、何枚も写真を撮った。そのせいで、遅くなってしまったのだけれども。
「なるほど、この機材を使って仕事をしている訳か」
(.....DJのね)
「ノイズキャンセリング?少しでも情報を聞き逃さない為か?仕事熱心だな」
(.....DJのね)
「重そうだね、車で来てるから近くまで送ろうか?」
「いいよ、タクシー拾うから」
そう声をかけて帰ろうと荷物を取って準備しようとした時、降谷に先に荷物を取られてしまった。
「橘、最近ご飯は食べているのか?」
「まあ、前よりは」
「その割に今日も顔色は優れていないようだな」
「最近ちょっと、缶詰状態、だったから」
「時間も時間だし、夕ご飯でもご馳走しよう」
「へ?」
荷物を持ってくれた降谷は「車を取ってくる」と、すぐに下に降りてしまった。「ゼロなりのお礼だよ」と、ヒロに声をかけられそのまま手を引っ張られた。
まあ、急ぎの案件は無いだろうし、今日は配信お休みにしようかな。
そういえば、最後にご飯食べたのいつだっけ。
あれ、最後に寝たのはいつだっけ。
「橘ちゃん、何歳くらいかな。だいぶ幼く見えるけど、お父さんやお母さん心配しないかな」
「父親の方は他界しているぞ。母親は幼い頃に家を出たきりだそうだ」
「先に車に向かったのってそれを調べるため?まったく、仕事が早いね」
後部座席で糸が切れたように寝ている彼女は、首に下げているヘッドフォンに大事そうに手を当てていた。声すら出せなくなって辛かったオレにゼロが居てくれたように、この子に寄り添える人は居るのだろうか。多分、ゼロと考えていることは一緒だ。お礼とこれからよろしくっていうのも兼ねて、腕を振るおうじゃないか。
***
「...ええっと、これは一体、、、」
並べられた色鮮やか料理に呆気を取られてしまったが、まずここは誰の家?、ここに来るまでの記憶が無いぞ。目の前には男性二人がエプロンをつけて次々と料理を盛り付けているようで、ふかふかとしたソファの上でぼーっと見惚れてしまった。この二人、だいぶ絵になる。
「お、やっと起きたね!冷めないうちに食べようよ」
「橘の好きな料理は把握できなかったから、勝手にこの前のおかずと栄養も取れそうなものを選んだぞ」
「え、本当に?また、あの味が食べれるの?」
「いくらでも食べていいから、これからちゃんと毎日食事をしてくれ」
「善処します」
「まあまあ、ゼロはこう見えて心配しているだけだから。まあ、これからよろしくってことで乾杯!」
ジュースを注がれたグラスを差し出され、3人で乾杯した。早く20歳になってお酒を片手にフロアを沸かせてみたいところだ。だが、その前に今は目の前の料理を楽しむことにしよう。二人が同時に「いただきます」と行儀良く挨拶しているから、私も見習って「いただきます」と手を合わせて呟いた。
「うわっ、やっぱり美味しい!この肉じゃが美味しいね」
「それはヒロ」
「あ、じゃあ、この魚の煮つけ!」
「それもヒロ」
「くっ、あはは!橘ちゃん面白いね!」
どの料理も美味しいのにピンポイントにヒロの作った料理ばかり褒めている私は、悪いことをしている気分だった。それにしても二人のご飯はびっくりするくらい美味しい。じんぺーはまあ置いといて、お萩の料理も美味しかったが、この二人は確実に凝ってる度合いが違う気がする。
「どうした?箸が止まってるぞ」
「いや、この間もこんな感じで食事したことあったなあって思い出してさ、その二人と降谷とヒロがなんか似てるなあって思って、二人も幼馴染だったりする?」
「うん、幼馴染だよ。も、ってことはその二人も?」
「そうそう!やっぱり似てるなあ!」
「ほら、冷めるから早く食べなさい」
いつか、四人で食事してみたいなあとか、ちょっとだけ考えてみた。
この二人とは、今は仕事上の関係だけど、打ち解ける気がしているのは最近人と関わる機会があったのと同じようなことがあったからかもしれない。
私の周りに警察官が四人。何とも頼もしい。
***
三人でご飯を食べた日から何日か経って、新しい機材のセッティングや依頼をこなす時間に追われていた。何週間か前の軽く口ずさんでしまった動画をうまい具合にSNSに拡散され、有難いことにDJとしての私を知ってくれる人は増え続けている。協力者の仕事もあれ以来大きな案件はなく、DJの仕事に専念していた。
「この曲は、こっちに持ってきてっと。ああでも、BPM合わせられるかな、この間に短く別の曲混ぜて...」
なかなか理想に届かない現状に、重いため息を吐いた。本当に幸せが逃げていくような気さえした。配信もろくに出来ていなくて、何から手をつければいいのかわからなくなってしまった。
そんな状態の私にさらなる試練がメールとして送られてきた。
仕事用のメールボックスを覗くと、これまたはじめましてのプロデューサーで、ザワザワと胸騒ぎがした。一通り、メールの内容に目を通すと、文字通り頭をしっかりと抱えた。
『はじめまして DJ @iriさん。こちらは芸能プロダクション〇〇の者です。早速ですが__』
「ゼロ、腕少し擦り剝いてるよ?どうしたの?」
「ああ、今日、歩道橋の上から女の子が降ってきて、それを受け止めた時かもしれない」
「え!?その子大丈夫だったの?」
「問題ない、怪我はしていないはずだ。それよりも精神的に疲れてそうだったけどな。風見に渡そうと思っていたおかずを押し付けてしまったよ」
「ふふっ、昔はからきし料理出来なかったのに、だいぶ様になってきたな」
「ヒロが教えてくれたからね。あの子、びっくりするくらい軽くてさ、しかも説教じみたこともしてしまった」
「無事ならいいね」と声をかけると、「もう会うことは無いだろ」とゼロは澄まして笑った。
***
「君に拒否権は無いぞ。こちらは今すぐ現行犯逮捕してやってもいいんだがな」
「全てが勝手すぎる.....あんなに美味しいお弁当を作ったお兄さんがこんな極悪非道な人だなんて.....」
「失礼だな。僕は君の命の恩人と言っても過言ではないだろう?」
「別に助けてなんて言ってない!」
「ほぉ、どうやら本当に捕まりたいらしい」
「ちょっと!この前の事件誰のお陰だと思ってんのさ!そもそもあんな機密情報漏洩するとか頭おかしいから!」
「それは、こちらのミスだと謝っただろう」
「それが謝る態度かぁ!?」
ガチャガチャと手錠をぶら下げるゼロとキャンキャン吠えている子犬みたいな彼女とのやり取りは、部下が見たらなんて思うだろう。何を言われても狼狽えないゼロだが、少しだけ楽しそうだった。
「なぜそこまで断る?君も多少の正義感があってあそこまでしてくれたんだろ?」
「あの時は、居ても立っても居られなかっただけで、そう何度も危険な真似は出来ない。まあ、私も結果的に助けられて良かったところはあるけど....」
「?」
「とにかく、元々の仕事内容と大きく変わる部分が多いし、危険なのはもう絶対嫌!」
「そうか、では両手を差し出してもらおうか」
「くっそぉ....」
本当はこの小さな女の子を助けてあげたいところだけども、こちらも仕事としてやってきた訳である。
そろそろ、親友を助けに行こうか。
***
ずっとお礼を言いたかったお弁当のお兄さんが、まさかの雇い主で、こんなに横暴で偉そうなやつだったなんて!ここまで第一印象をズタズタにされる感覚は初めてだ。しかし、本当にまずい。このままだと、ムショってやつなのでは?迫ってくる鉄の塊に怯えている時、びっくりするくらい優しい声がかけられた。
「ゼロ、オレにいい考えがあるよ」
「ヒロ、勝手に出てくるなよ」
「いいじゃないか。ねえ君、こちらとしては、今まで通りシステムの漏れが無いようにして欲しいだけなんだ。だから命に関わるようなことには巻き込まないよ、安心して?約束するからね」
「....本当?」
「ああ、本当だよ。もし何かあったらオレ達が守ってみせるから」
突如として現れた王子みたいに優しい紳士に眩暈がしそうだ。頑なに断っていた私は呆気なく敗北してしまった。それにしても良い声だな、彼の声をサンプリングしてDJの時使ったら世の女の子がメロメロになってしまいそうだ。
紳士さんの方へ体を向き直し、「今まで通りなら」と小さく呟いて了承した。
私ってこんなにチョロかったっけ。
まずは前回の事件についての流れを3人で情報交換していく。警察の事はよく分からないけど、きっとこの二人はエリートってやつなんだと思う。理解力がすごいなんてもんじゃない。一通り情報を掴んだ後、二人はこちらに向き直した。
「『ネームレス』という名前で我々は君の事を呼んでいる。今後は僕と、ここにいるヒロと、風見という部下の三人と主にやり取りを行うことになる。よろしく頼む」
「じゃあ、この前の違法作業はチャラ?」
「まあ、捜査において違法は付き物だ。迅速な調査、感謝するよ」
(偉そ~)
「よろしくね、オレは諸伏景光、ヒロって呼んでいいよ!」
「よろしくヒロ!本当綺麗な声してるね」
「本当かい?まあそれは、ゼロのお陰かな」
「僕とはいささか対応が違うな」
なんだかんだ歳が離れ過ぎている訳でもなさそうだし話しやすい。あの二人の雰囲気を感じさせるのは気のせいだろうか。正直違法作業はもう勘弁である。勿論私は、ブラックでなくてホワイトのハッカーだから。
「ねえ、名前聞いちゃダメ?ネームレスって呼ぶの違和感あって」
「うーん、橘だよ」
「ふふっ、分かった。いつか教えてね」
「うーん、気が向いたらね」
「そろそろ戻るぞ」と、声をかける降谷はドアの前に放置された私のお宝をまじまじと見つめていた
我ながら今日は大収穫である。お目当ての物は全てゲット出来たし、近くのCDショップの店員が作る紹介ポップは最新の音楽チャートを上手くまとめられており、何枚も写真を撮った。そのせいで、遅くなってしまったのだけれども。
「なるほど、この機材を使って仕事をしている訳か」
(.....DJのね)
「ノイズキャンセリング?少しでも情報を聞き逃さない為か?仕事熱心だな」
(.....DJのね)
「重そうだね、車で来てるから近くまで送ろうか?」
「いいよ、タクシー拾うから」
そう声をかけて帰ろうと荷物を取って準備しようとした時、降谷に先に荷物を取られてしまった。
「橘、最近ご飯は食べているのか?」
「まあ、前よりは」
「その割に今日も顔色は優れていないようだな」
「最近ちょっと、缶詰状態、だったから」
「時間も時間だし、夕ご飯でもご馳走しよう」
「へ?」
荷物を持ってくれた降谷は「車を取ってくる」と、すぐに下に降りてしまった。「ゼロなりのお礼だよ」と、ヒロに声をかけられそのまま手を引っ張られた。
まあ、急ぎの案件は無いだろうし、今日は配信お休みにしようかな。
そういえば、最後にご飯食べたのいつだっけ。
あれ、最後に寝たのはいつだっけ。
「橘ちゃん、何歳くらいかな。だいぶ幼く見えるけど、お父さんやお母さん心配しないかな」
「父親の方は他界しているぞ。母親は幼い頃に家を出たきりだそうだ」
「先に車に向かったのってそれを調べるため?まったく、仕事が早いね」
後部座席で糸が切れたように寝ている彼女は、首に下げているヘッドフォンに大事そうに手を当てていた。声すら出せなくなって辛かったオレにゼロが居てくれたように、この子に寄り添える人は居るのだろうか。多分、ゼロと考えていることは一緒だ。お礼とこれからよろしくっていうのも兼ねて、腕を振るおうじゃないか。
***
「...ええっと、これは一体、、、」
並べられた色鮮やか料理に呆気を取られてしまったが、まずここは誰の家?、ここに来るまでの記憶が無いぞ。目の前には男性二人がエプロンをつけて次々と料理を盛り付けているようで、ふかふかとしたソファの上でぼーっと見惚れてしまった。この二人、だいぶ絵になる。
「お、やっと起きたね!冷めないうちに食べようよ」
「橘の好きな料理は把握できなかったから、勝手にこの前のおかずと栄養も取れそうなものを選んだぞ」
「え、本当に?また、あの味が食べれるの?」
「いくらでも食べていいから、これからちゃんと毎日食事をしてくれ」
「善処します」
「まあまあ、ゼロはこう見えて心配しているだけだから。まあ、これからよろしくってことで乾杯!」
ジュースを注がれたグラスを差し出され、3人で乾杯した。早く20歳になってお酒を片手にフロアを沸かせてみたいところだ。だが、その前に今は目の前の料理を楽しむことにしよう。二人が同時に「いただきます」と行儀良く挨拶しているから、私も見習って「いただきます」と手を合わせて呟いた。
「うわっ、やっぱり美味しい!この肉じゃが美味しいね」
「それはヒロ」
「あ、じゃあ、この魚の煮つけ!」
「それもヒロ」
「くっ、あはは!橘ちゃん面白いね!」
どの料理も美味しいのにピンポイントにヒロの作った料理ばかり褒めている私は、悪いことをしている気分だった。それにしても二人のご飯はびっくりするくらい美味しい。じんぺーはまあ置いといて、お萩の料理も美味しかったが、この二人は確実に凝ってる度合いが違う気がする。
「どうした?箸が止まってるぞ」
「いや、この間もこんな感じで食事したことあったなあって思い出してさ、その二人と降谷とヒロがなんか似てるなあって思って、二人も幼馴染だったりする?」
「うん、幼馴染だよ。も、ってことはその二人も?」
「そうそう!やっぱり似てるなあ!」
「ほら、冷めるから早く食べなさい」
いつか、四人で食事してみたいなあとか、ちょっとだけ考えてみた。
この二人とは、今は仕事上の関係だけど、打ち解ける気がしているのは最近人と関わる機会があったのと同じようなことがあったからかもしれない。
私の周りに警察官が四人。何とも頼もしい。
***
三人でご飯を食べた日から何日か経って、新しい機材のセッティングや依頼をこなす時間に追われていた。何週間か前の軽く口ずさんでしまった動画をうまい具合にSNSに拡散され、有難いことにDJとしての私を知ってくれる人は増え続けている。協力者の仕事もあれ以来大きな案件はなく、DJの仕事に専念していた。
「この曲は、こっちに持ってきてっと。ああでも、BPM合わせられるかな、この間に短く別の曲混ぜて...」
なかなか理想に届かない現状に、重いため息を吐いた。本当に幸せが逃げていくような気さえした。配信もろくに出来ていなくて、何から手をつければいいのかわからなくなってしまった。
そんな状態の私にさらなる試練がメールとして送られてきた。
仕事用のメールボックスを覗くと、これまたはじめましてのプロデューサーで、ザワザワと胸騒ぎがした。一通り、メールの内容に目を通すと、文字通り頭をしっかりと抱えた。
『はじめまして DJ @iriさん。こちらは芸能プロダクション〇〇の者です。早速ですが__』
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