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恋わずらい

それから一週間が経ち、私とハルは4時30分から少しの間、駅前などでお喋りをするようになっていた。
ハルは私が学校での出来事などを話すと楽しそうに聞いてくれて、それがたまらなく嬉しかった。
けれど、ハルは自分のことをあまり語らない。
名前以外のことを聞くと、少し困ったような顔をするのだ。
また、言葉を交わすようになってもハルの性別は分からなかった。
身長は高いけれど、喉仏は目立たない。
手や足は大きいけれど、声は澄んだように高い。
服装はいつだって白いロングTシャツに、黒のスラックス。
名前は男の子みたいだけれど、時折見せる影のある表情は女の人よりもずっと綺麗だ。
でも、今更本人に「男ですか?女ですか?」と確認する勇気はない。
そこまで考えて、思考を停止させる。
ハルが男の子でも女の子でも、仲良くなりたいといい気持ちは変わらないからだ。

「最近、子冬何か雰囲気変わった気がする!もしかして、好きな人でも出来た?」
学校での授業が終わり、昼休みになった瞬間、そう聞かれた。黄色いリボンで茶髪を二つに結って私を見つめる彼女は友達の、佐野めぐみだ。
「別に…好きな人って言うか、気になる人が出来ただけだよ」
適当に誤魔化そうとすると、余計に食いつかれる。
「どんな人?学校の子?」
結局私は恋愛物の噂が好きな彼女に、ハルのことを相談することにした。
「ふーん、ハンカチを拾ってもらうって…何だかロマンチックな出会い!で、その人は何歳くらいなの?年上?」
めぐみはキラキラと目を輝かせる。
「…年齢は、わからないけど私と同じくらいだと思う」
「へえ、どこの学校の人?ここらへん?」
尋ねられて気が付く、ハルは私と同い年に見えるが学校に行っている素振りはない。
「…たぶん、この辺の学校じゃないと思う」
そう答え、もっと聞かせてよ!とはしゃくめぐみを軽く受け流し、昇降口まで歩く。
ハルのことを知りたい、けれど、ハルが明言しないことを本当に詮索してもよいのだろうか。胸の辺りがもやもやと霞んでいく。
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