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恋わずらい

あの事件から、10年後。
26歳になった私は、平凡に進学をして平凡に就職をした。
あの出来事で、私の周りは何も変わらなかった。
けれど、私の心は大きく変わっていた。
強く、決心したことがあるのだ。
会社からの帰り道を、ピンヒールを鳴らして歩く。
「…ただいま、帰ったよ」
部屋の扉を開け、声をかけると「おかえり、今日の夕飯はトマトカレーだよ」と笑いながらハルが出迎えてくれる。
透き通るような金髪に、黒水晶のような瞳。
きらきらと、花のように微笑む彼女を絶対に幸せにすると10年前のあの日、決心したのだ。
「ハルは、今…幸せ?」
何の気なしに聞くと、
「幸せだよ。子冬が傍にいるからね」
と暖かい声で返されて、幸せってこういうことなんだろうな。と思った。
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