出会いをたいせつに
ーそれは、700年前。
私たちは「弧霊(こだま)」と呼ばれていて、日本各地で祀られていました。
私は狐の姿をしていますが、これは仮の姿で、詳しくは知りませんが‘鬼族の使い‘と呼ばれています。
弧霊は如月森(きさらぎもり)に住んでいまして、それはそれは静かで穏やかでとても住み心地がよい場所でした。
そこにある一人の人間の青年がやってきました。皆は驚きました。なぜならこの如月森には守神がいて、人間が入れないように結界を張ってあるからです。
皆はその青年を警戒しましたが、青年は戦おうとする氣も感じられず、煮るなり焼くなり食べるなり好きにしろと言いました。
ある弧霊が青年に飛びかかろうとすると、守神が叫びました。
「やめなさい!」
「どうしてですか?ここは人間が立ち入ってはならない場所なのですよ」
「この青年は私の息子だ。といっても産んだわけではなく育て親なのだが」
守神は一つずつ順を追って話しました。
如月森の守神に就く前に世界を旅していた時、この青年に会ったこと。
青年はー鳶(とび)は親も身寄りもなく、たった一人で生きていたこと。
守神は鳶を育て、自由に生きさせること。
「だから私がここを去る時、鳶の面倒を見てやってはくれまいか」
「近々、どこかへ行かれるのですか?」
「最近は‘人荒らし‘も増えてきた。私もそちらで対処せねばならんのだ。出雲にもここ数年行っておらぬしな」
「しかし、この地は結界が消滅してしまうのでしょう?」
「安心してくれ。ここには私の力が十分に浸み込んでいる。私がいなくとも結界は永遠に消滅しないだろう。万が一、いや億が一敵襲に会い、弧霊が全滅したならば、妖力の強い者が転生術をかければよい。転生に時間はかかるかもしれぬが、いずれ弧霊は崇められるだろう」
そして守神は如月森を去っていきました。
鳶を置いて。
鳶は私たちと存在はほぼ一緒の感じでした。
体を変化させたり、狐火を出せたり、口にするものも野草や木の実でした。
本当に鳶は人間なのかと疑う時もありました。
しかし、神に育てられたとなればまあ難しい業も可能になるのも当たり前だと思って皆納得しながら平穏な日々を送っていました。
その平穏がある時、打ち破られました。
人間が攻めてきたのです。
仲間は必死に戦いましたが、倒しても倒してもきりがありません。
しまいにはあれだけたくさんいた弧霊たちが骸となって横たわっていました。
弧霊の長老が最後の最後に転生術を発動させました。
しかし、魂を遺したのはいいものの、魂の器、つまり肉体がないので、ほとんどが転生できていないのです。
弧霊の肉体はとても作りが複雑で、作るのに約500年近くかかりました。
私たちは「弧霊(こだま)」と呼ばれていて、日本各地で祀られていました。
私は狐の姿をしていますが、これは仮の姿で、詳しくは知りませんが‘鬼族の使い‘と呼ばれています。
弧霊は如月森(きさらぎもり)に住んでいまして、それはそれは静かで穏やかでとても住み心地がよい場所でした。
そこにある一人の人間の青年がやってきました。皆は驚きました。なぜならこの如月森には守神がいて、人間が入れないように結界を張ってあるからです。
皆はその青年を警戒しましたが、青年は戦おうとする氣も感じられず、煮るなり焼くなり食べるなり好きにしろと言いました。
ある弧霊が青年に飛びかかろうとすると、守神が叫びました。
「やめなさい!」
「どうしてですか?ここは人間が立ち入ってはならない場所なのですよ」
「この青年は私の息子だ。といっても産んだわけではなく育て親なのだが」
守神は一つずつ順を追って話しました。
如月森の守神に就く前に世界を旅していた時、この青年に会ったこと。
青年はー鳶(とび)は親も身寄りもなく、たった一人で生きていたこと。
守神は鳶を育て、自由に生きさせること。
「だから私がここを去る時、鳶の面倒を見てやってはくれまいか」
「近々、どこかへ行かれるのですか?」
「最近は‘人荒らし‘も増えてきた。私もそちらで対処せねばならんのだ。出雲にもここ数年行っておらぬしな」
「しかし、この地は結界が消滅してしまうのでしょう?」
「安心してくれ。ここには私の力が十分に浸み込んでいる。私がいなくとも結界は永遠に消滅しないだろう。万が一、いや億が一敵襲に会い、弧霊が全滅したならば、妖力の強い者が転生術をかければよい。転生に時間はかかるかもしれぬが、いずれ弧霊は崇められるだろう」
そして守神は如月森を去っていきました。
鳶を置いて。
鳶は私たちと存在はほぼ一緒の感じでした。
体を変化させたり、狐火を出せたり、口にするものも野草や木の実でした。
本当に鳶は人間なのかと疑う時もありました。
しかし、神に育てられたとなればまあ難しい業も可能になるのも当たり前だと思って皆納得しながら平穏な日々を送っていました。
その平穏がある時、打ち破られました。
人間が攻めてきたのです。
仲間は必死に戦いましたが、倒しても倒してもきりがありません。
しまいにはあれだけたくさんいた弧霊たちが骸となって横たわっていました。
弧霊の長老が最後の最後に転生術を発動させました。
しかし、魂を遺したのはいいものの、魂の器、つまり肉体がないので、ほとんどが転生できていないのです。
弧霊の肉体はとても作りが複雑で、作るのに約500年近くかかりました。