変更されない場合は「海月(クラゲ)」となります。
~清掃員は宝石の夢を見るか~
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晴れ渡る青空の下、心地良い春風を受けながら私は荷物の詰まったキャリーケースと貴重品の入ったカバンを手に、これから住み込みで働く就職先へと辿り着いた。
「ここがツキノプロダクションの後続寮……」
近づけば近づく程、天高くそびえ立つ高層マンションに圧倒される。いったい何階建てなのか、入口近くで最上階を見上げようとすると首を痛めそうなほど遠い。
管理者用の裏口から入り、マンションの管理人の黒部さんに挨拶して、先日送った荷物が届いている自室へ黒部さんの説明を聞きながら向かう。手渡された自室のカードキーは無くさないように付属の専用ケースにしまう。ケースにはキーホルダー用の穴もあった。
(解りやすいように後で何か付けようかな?)
「それじゃあ、今日はとりあえず1階から各階の紹介をざっくりするから、荷物を置いたら出ておいで?」
「はい!すぐ置いてきます!」
荷物を適当な隅に置いてすぐに部屋を出た。その後、黒部さんに連れられて、1階から10階までの説明を受けた。1階は応接室、ピアノ室、レッスンルーム。2階は食堂と私や黒部さんが使う管理人室兼住居。3階から11階がアイドルグループの居住スペースとなる。
私の仕事は1階の共有スペースや食堂、各階の通路清掃など他にも色々ある。
「海月ちゃん、仕事は明日からでいいよ。お部屋片付けたいでしょう?」
そう黒部さんが優しい口調と笑顔で言ってくれたので、お言葉に甘えることにする。お礼を言って黒部さんと別れ、自室に戻り片付けに専念した。
窓から見える空が暗くなった頃、部屋もだいぶ整理出来た。
「よし、明日から頑張るぞ」
* * *
朝、朝食の手伝いも終わり、アイドルの人たちが仕事に行き始めたので、各階の通路は今が掃除時だ!
掃除道具を片手にエレベーターで11階から順に降りていこう。降りてきたエレベーターに誰も乗っていない事を確認して乗り、11階のボタンを押す。エレベーターは上に滑るように登っていき、すんなりと11階へと着いた。
が、着いた途端何かをけたたましい音がする。音のする方を見ると金髪の男の子が必死に扉を叩いている。
ドンドンドンドンッ
「翔さぁーーん!起きてください!コンサートに遅れますよ!?」
ドンドンッ
「翔さぁーーーんっっ!!!!」
彼が叫んでいる言葉を拾うと、どうやらその部屋の住人が予定の時間が迫っているのに起きていない、かもしれないようだ。しばらくすると必死の形相で合鍵を使って入っていった。
(ショウさん……。そういえば少し年上の昔馴染みも芸能界デビューしたって言ってたな。いや、まさかねぇ……)
もう中に入れたのだから大丈夫だろうと思い、通路の掃除を開始しようとした時。
「うわぁーっ!!」
先程の部屋から叫び声が聞こえた。さっきの男の子の声だ。
(えっ、何!?何かあったの!?急病人!?死体!?仕事初日に事件になんて出くわしたくないよ!?でも、緊急時なら何か手伝わないと!しかもさっき聞いた名前から知り合いの顔も過ぎるし、余計不安になる!)
開いたままの扉の奥を覗き、勇気を出して声をかけてみる。
「あのー!どうしましたかー!叫び声が聞こえたんですけど!」
すると奥の部屋からさっきの男の子が出てきた。何故かとても困った顔をしている。若干顔色も悪いような……。
「ど、どうしましたか……?」
「……すみません、ちょっと手伝って頂けませんか」
「い、いいですよ!」
鬼気迫る面持ちで言う彼に気圧されて了承した。何かと思って駆けつけてみると、白髪の青年が部屋から眠たげに出てきた。その顔にとても見覚えがあった。さっき金髪の彼が叫んだ名前が引っかかったけど、まさか本人とは……。
「しょ、翔くん!?」
「あれ?海月?どうしてここに?」
「え?お知り合いだったんですか!?」
予想外の展開に驚く金髪の彼。そんな彼にふわりと微笑んで私を紹介しだす翔くん。
「うん、彼女は海月。昔からの友人なんだ。海月、彼は白瀬優馬くん。僕と同じVAZZROCKのメンバーだよ」
「そ、そうなんですか。ご友人だったなんて」
「……二人共お急ぎでは?」
「はっ!そうでした!すみません海月さん。手伝ってもらいたいんです!コンサートに向かうタクシーが後もう数分で玄関に到着してしまうんです!!」
優馬くんは必死すぎて今にも泣きそう。よし、手伝うよ!
「じゃあ荷物まとめるね!優馬くんは朝食をお願いします!」
「わかりました!」
「じゃぁ僕はー」
「顔を洗って、着替えて!」
「ください!」
「はーい」
* * *
何とかタクシーには間に合い、時間通りに二人は会場へ向かった。ドタバタ劇を黒部さんに伝えたら驚かれてすぐ笑われた。
「でも、知り合いが一人でもいるのは頼もしいじゃない。よかったわね」
「はい」
黒部さんが優しくて本当に良かった。
そして夜。食堂のテーブルを拭いていると、優馬くんが食堂に入ってくるなり私を見つけたようで、笑顔で歩み寄ってきた。
「海月さん。朝は本当に助かりました!ありがとうございました」
「いいえ、原因が知り合いだったから対処できただけですよ。また困った事があったよ言ってください」
「ありがとうございます」
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第一話書けた。続くか心配……
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