JBA短編・ネタ



「おいちょっと待ちな、空条くんよォ…テメェってのはちょっと口が悪いんじゃあねーか?」

「…あ゙ぁ゙?」


195cmもの威圧感のある巨体から、乱入者へギロリと鋭い視線が向けられる。

18歳とは思えぬ眼光に思わず震え上がった周囲であったが、視線の先の生徒──80年代によく見られた、いかにもチンピラといった風貌であった───は承太郎の顔色など気にも留めずにあっけらかんと言い放つ。

「そういう時はよォ〜テメェなんて言葉じゃなくて、『オメェ』っていうんだぜ!

近所のじーさんが教えてくれたんだけどな、『お』を着ければ丁寧語になんだってよ!スゴくね!!?!オレ、初めて聞いた時はビビっちまったよ!!」


……何をいってるんだこいつは。奇しくも皆の心が一つになった瞬間である。

意味がわからなすぎる生徒の言葉に体育教師は竹刀を取り落とし、野次馬たちは互いに顔を見合わせて理解できている者を探した。

承太郎はといえば一呼吸のシンキングタイムを挟み、考えることをやめた。彼は頭の回転が早かったので、早々に考えるのは無駄無駄…と切り替えたのであった。

「丁寧語って『です・ます』とかをつけるんじゃねェのか?」

野次馬のどこからか無謀にも乱入者した生徒へ声を上げる。なにか間違っていると言うことを指摘しようとしたのだが残念。その男子生徒はそんなアンサーで解決するような奴ではなかった。

「です、ます…だと?」

野次馬の言葉に雷でも食らったかのように固まる生徒。

「…あっそうか!わかったぜ!!スゲーな、これも丁寧語だったのか……!」

「……一応聞くぜ、何がどうわかったんだ」

「アレだろ、『です』みたいに英語に変えることで遠回しにブッ倒すってのを伝えてよぉ、『ます』は…さかな?」

そこは数学だろうが!!高校生でマスを訳せないなんて大丈夫か?いや、『デス=死』を覚えてるだけマシか?

「近所のじいさん?ああ、Gさんな!名前は知らねーんだけどよくグラグラ言ってるからGさんなんだ。海外で先公してたっぽくて、日本語は勉強中だっていってたぜ!!」

そのあだ名はやめて差し上げろ。あとお前が言ってる丁寧語(?)とそいつが言ってる丁寧語は多分ちょっと違う。


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※いつかの未来

「そんな物騒な言葉はダメだぜ。そう言う時はこう言うんだ……オメェは必ず、デス!!!」

(あのあと誰も間違いを正してやらなかったのか……)

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「先公が竹刀は愛のムチって言っててよぉ…ムチって何も知らねーことだろ?竹刀は愛を知らねーって、なんだか同情しちまって……」

なんでこう、常識ィ〜ッてことを知らねーのに無駄な知識はあるんだ…?

ムチってのは乗馬とかで使う鞭だぜ。

「鞭…?いやいや、嘘だろ空条くん。竹刀は鞭じゃねーよ何言ってんだ」

お前が何を言ってるんだ。

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※いつかの未来

「あの先公なかなか丁寧なヤツだったからよー、オレも丁寧に呼んでやろうと思うぜ!『お先公』ってな!!」

「面倒事になる前にやめとけ」

「え?なんで?」

「そりゃお線香って勘違い……いや、何でもない。とにかくやめておけ」

「空条くんがそう言うならまあ、そうすっか!あ、そういやさぁ昨日おばーちゃんの見てたドラマで新たな事実を知ったぜ」

「……すでに嫌な予感がするが、なんだ?」

「先公とかエテ公の公ってあるだろ?公爵っていう偉い人は名前の最後に『公』をつけることがあるらしい」

……もう予想がついた。

「つまり先公はセンって名前だったんだ!!きっと湯屋で働いてたんだろーな…」

やっぱり、そんなことだろうと思ったぜ。違うからな。

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「なあ空条くん、コショコショ話ってしたことあるか?」

……いや。コショコショ話はねぇな。

「なっ、マジかよ。ウチの近所でしか流行ってなかったのか…?勿体無ェ」

コソコソ話じゃないのか?

「いんや、コショコショだぜ。やってみるか?腹から声が出るようになる」

(ヤな予感)…遠慮しとく。

「ちぇ。そンなら他のヤツ誘ってやろォっと」

しばらくしてから奴に『コショコショ話』を持ちかけられ声が枯れるまでくすぐられ続けたクラスメイトの勇姿を俺は忘れないだろう。



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「エジプト?ヘェ〜いいな、俺も行こっと」

「てめ……お前、エジプトを知ってたのか」

ていうか気軽すぎないか?近所のスーパーとかとでも勘違いしてないかコイツ。

「あったりまえだぜ!!カイロが有名なんだろ、オレちょうど寒いと思ってたんだよォ〜」

「……ちなみに、カイロって冬に使うあのカイロじゃないだろうな」

「ほっかほかのカイロ以外になんかあンのか?」

「そんなことだろうと思ったぜ…エジプトのカイロは地名だ」

「ちめいって」

「待て。致命的の致命じゃなく、その土地の名前、街の名前みたいなヤツだ」

「なァるほど〜〜!カイロ町が有名なのか!!あんま聞いたことない町だけどばあちゃん家くらい遠いのかぁ?」

「……まぁ、それでいい。お前の婆さん家より遠いから行くのはやめとけ」

「エッ!?ブラジルより遠いのか?!」

「そこよりは近い」

英語が致命的な割に国際的な家庭じゃねーか……そういや、ブラジルの公用語はポルトガル語か。

──翌日。

「そういやポルトガル語は喋れんのか」

「リスポーン!!」

「……ポルトガルの首都はリスボン(・・・・)だ」

ちなみにリスポーンはゲームでキャラクターが復活する時によく使われるが、英語で水中で卵が孵化するという意味を持つSpawnにReという接頭語をつけた言葉である。

ポルトガル語は関係しない。

見当違いな返答にわずかに落胆する自分に驚く。

俺は、コイツに期待してたのか。

衝撃を受ける自分をよそに目の前のヤツは呑気なもので、へぇ!と初めて聞いたように驚いていた。

「おい、さっき授業で出てきただろうが!!」

「Não entendi!」

耳に慣れない言語だが承太郎にはわかる。

そう。コイツがブラジル出身ならば、と昨日帰ってからポルトガル語の挨拶と簡単な問答を調べてしまった根は真面目な承太郎にはわかってしまうのだ。

「知らなかっただと……?おちょくってんのかお前」


何の間違いか青春の50日間を共にしてしまい季節外れの転校生と共に彼を友と呼ぶようになることを、承太郎はまだ知らない。



▼おバカ

バカって言われると怒る。「お」がついてるなら無問題。

緑の改造学ランの転校生が来る頃、おばーちゃんがヨーロッパ旅行中にタチの悪い風邪をもらい寝込んでしまう未来がある。

よくわかンねーけど空条くんちも親が熱出してそれを解決しにエジプト行くんだって?じゃ、俺も行くかァ!!

弾丸エジプトツアーに参加する。

自分に色々教えてくれるおばーちゃんを尊敬しているので「お」ばーちゃん呼び。



▽ものしり(未来の)博士

おバカが一々指摘するので「テメェ」ではなく「お前」って呼んでる。「オメェ」っていうのはなんとなく趣味じゃなかった。

ジジイって呼び慣れてないので5回に1回「おじ、ジイ」となりがち。おバカは「尊敬と反感で揺れ動く心…!多感な時期だな空条くん」と言い、たんこぶを作ることになる。
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