扉を開けて
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「扉間、おまたせ!」
「……別に待っとらん。特に待ち合わせとかを決めてるわけでもなし。」
「なんか逢引みたいなこと言ってるね。」
「お前が、そこは別に待ってないというところだの何だの、うるさいからだろうが!!」
「あはは、ごめんごめん。いざ言われてみると面白くて……あ!そうだ、ちょっと来て!!」
新緑が鮮やかな森の奥深く。
イヅキがこっそり集落を抜け出してやってきたのは、古びた社跡。
そこにはイヅキと歳が近そうな銀髪赤眼の少年が立っていた。彼がしばらく前から度々あっている"うちはじゃない子"、もとい扉間だ。
挨拶も早々に、イヅキは社の裏手に扉間を引っ張って行く。
連れて行った先には、草むらに隠れるように苔むした石版が落ちていた。
「これを見せたかったの。ねぇ、なんか似たようなの、どっかで見なかったっけ?」
扉間は少し顔をしかめた。
「先の時代の争いについての巻物……いや、アレに書いてある内容とはよく似ているが少し異なるか。」
「それ!!詳しいことはまだわからないけど、明らかに関係してそうだし面白そうじゃない?」
「ああ。興味深いものを見つけたな。」
──2人は、この社の過去を解き明かそうとする同志だ。
この社で偶然出会ってから、2人はこうして歴史や風習についてよく話した。
初対面が、イヅキが書物を床一面広げて寝転がっていたところに巻物を山ほど抱えて扉間が入ってきたなんて出会い。
一眼見て『コイツ、同類……!』と思った二人は、相手が誰かはさておき、この朽ち果てた社について考察談義をし始めた。
なにせ、互いに任務や家事の合間、ちびちび一人で調べてたところに出てきたお仲間。
少しでも情報を落としてもらえれば捗るし、当時のイヅキは訓練をサボりがちでとても忍びらしさがない子供だった。
イヅキは扉間が忍びだとは気づかなかったし、扉間もこんなボケボケしたイヅキが忍びだとは思わなかった。
二人がまだ戦場に出たこともなくて、他の忍びを知らず幼かったと言うのもある。
そうして、今。
───やらかした、かもしれん。
扉間……千手扉間は、胸の中でつぶやいた。
何をかというと、社跡で出会った少年 イヅキのことである。いざこざとかそういうのではなく、彼の動きがおかしいのだ。
出会った当初のイヅキを思い出す。
ドタバタとやかましい動き。
昼飯に魚を取ろうといえば、気配を消すどころか足を滑らせ魚に逃げられる。挙げ句の果てには初対面の自分が分けた握り飯を無警戒に完食する始末。
鈍臭くて、忍びじゃない人間ってのはこうも警戒心がないものかと唖然とした記憶がある。
さて、今のイヅキはどうか。
魚どころか、時には自分ですら気配がつかめない時があるし、先ほど草むらに入った時もほとんど音がしなかった。
握り飯に関しては相変わらず無警戒だが……
……やることなすこと、どことなく自分の動きと似ている。
忍びである、自分と。
思えば、寝不足で足音が気になって資料に集中できなかった時。
『もう少し静かに動いてくれんか。歩く時は踵から。』
『わかった、ごめんね扉間。』
イヅキが岩場で足を滑らせた時。
『こういうところはバランスさえ取れていれば滑らん。細い棒や丸い石の上を立ったり歩いたりして練習するといい。』
『なるほど。やってみる!』
狩やら釣りやらで魚は疎か周辺の野生生物に逃げられた時。
『狩のときは周囲に溶け込め。心は水面のように落ち着かせろ。』
『はい、扉間先生……!』
……心当たりしかない。
もしかしたら自分は忍びを育てるの才能があるかもしれんな、将来は教師か、と扉間は現実逃避した。
しかし目の前にはどこからみても恥ずかしくない忍びの子供(イヅキ)がいる。確かにイヅキは忍びであるうちは一族の子なので間違いではないが、それを知らない扉間は焦った。
(一般人なのに、忍びっぽく育ててしまった!!)
ストレスでキリキリと痛む胃を押さえ、口を開く。
「すまん、イヅキ。」
「へ?何、お腹でも壊した?」
「いや……強く生きろよ、お前。」
「よくわかんないけど、お腹の強さには自信あるよ!」
ぽん、とお腹を叩くイヅキ。
扉間の頭に、"責任"の二文字が重々しくのしかかった。
忍びと思われたら、どこの一族のものかと警戒され、街中でも尾行されたり何か盛られたり……危険度が跳ね上がるだろう。
こんなぽやっとしたやつが生きていけるとは思えない。
そんな扉間の内心も知らず呑気に笑うイヅキに、扉間は重い口を開いた。
「いいか。家族やオレ以外からもらった物は安易に口にしてはならん。可能であれば他の奴が口にしてから、そうでなければ匂いを嗅いだり少し舌に乗せたり、様子を見てから飲み食いしろ。」
──とりあえず、コイツが腹下す前に他人から貰ったものを軽々しく口にしないよう、躾けなければ。
ほわほわと笑うイヅキを前に、扉間は決意した。
「……別に待っとらん。特に待ち合わせとかを決めてるわけでもなし。」
「なんか逢引みたいなこと言ってるね。」
「お前が、そこは別に待ってないというところだの何だの、うるさいからだろうが!!」
「あはは、ごめんごめん。いざ言われてみると面白くて……あ!そうだ、ちょっと来て!!」
新緑が鮮やかな森の奥深く。
イヅキがこっそり集落を抜け出してやってきたのは、古びた社跡。
そこにはイヅキと歳が近そうな銀髪赤眼の少年が立っていた。彼がしばらく前から度々あっている"うちはじゃない子"、もとい扉間だ。
挨拶も早々に、イヅキは社の裏手に扉間を引っ張って行く。
連れて行った先には、草むらに隠れるように苔むした石版が落ちていた。
「これを見せたかったの。ねぇ、なんか似たようなの、どっかで見なかったっけ?」
扉間は少し顔をしかめた。
「先の時代の争いについての巻物……いや、アレに書いてある内容とはよく似ているが少し異なるか。」
「それ!!詳しいことはまだわからないけど、明らかに関係してそうだし面白そうじゃない?」
「ああ。興味深いものを見つけたな。」
──2人は、この社の過去を解き明かそうとする同志だ。
この社で偶然出会ってから、2人はこうして歴史や風習についてよく話した。
初対面が、イヅキが書物を床一面広げて寝転がっていたところに巻物を山ほど抱えて扉間が入ってきたなんて出会い。
一眼見て『コイツ、同類……!』と思った二人は、相手が誰かはさておき、この朽ち果てた社について考察談義をし始めた。
なにせ、互いに任務や家事の合間、ちびちび一人で調べてたところに出てきたお仲間。
少しでも情報を落としてもらえれば捗るし、当時のイヅキは訓練をサボりがちでとても忍びらしさがない子供だった。
イヅキは扉間が忍びだとは気づかなかったし、扉間もこんなボケボケしたイヅキが忍びだとは思わなかった。
二人がまだ戦場に出たこともなくて、他の忍びを知らず幼かったと言うのもある。
そうして、今。
───やらかした、かもしれん。
扉間……千手扉間は、胸の中でつぶやいた。
何をかというと、社跡で出会った
出会った当初のイヅキを思い出す。
ドタバタとやかましい動き。
昼飯に魚を取ろうといえば、気配を消すどころか足を滑らせ魚に逃げられる。挙げ句の果てには初対面の自分が分けた握り飯を無警戒に完食する始末。
鈍臭くて、忍びじゃない人間ってのはこうも警戒心がないものかと唖然とした記憶がある。
さて、今のイヅキはどうか。
魚どころか、時には自分ですら気配がつかめない時があるし、先ほど草むらに入った時もほとんど音がしなかった。
握り飯に関しては相変わらず無警戒だが……
……やることなすこと、どことなく自分の動きと似ている。
忍びである、自分と。
思えば、寝不足で足音が気になって資料に集中できなかった時。
『もう少し静かに動いてくれんか。歩く時は踵から。』
『わかった、ごめんね扉間。』
イヅキが岩場で足を滑らせた時。
『こういうところはバランスさえ取れていれば滑らん。細い棒や丸い石の上を立ったり歩いたりして練習するといい。』
『なるほど。やってみる!』
狩やら釣りやらで魚は疎か周辺の野生生物に逃げられた時。
『狩のときは周囲に溶け込め。心は水面のように落ち着かせろ。』
『はい、扉間先生……!』
……心当たりしかない。
もしかしたら自分は忍びを育てるの才能があるかもしれんな、将来は教師か、と扉間は現実逃避した。
しかし目の前にはどこからみても恥ずかしくない忍びの子供(イヅキ)がいる。確かにイヅキは忍びであるうちは一族の子なので間違いではないが、それを知らない扉間は焦った。
(一般人なのに、忍びっぽく育ててしまった!!)
ストレスでキリキリと痛む胃を押さえ、口を開く。
「すまん、イヅキ。」
「へ?何、お腹でも壊した?」
「いや……強く生きろよ、お前。」
「よくわかんないけど、お腹の強さには自信あるよ!」
ぽん、とお腹を叩くイヅキ。
扉間の頭に、"責任"の二文字が重々しくのしかかった。
忍びと思われたら、どこの一族のものかと警戒され、街中でも尾行されたり何か盛られたり……危険度が跳ね上がるだろう。
こんなぽやっとしたやつが生きていけるとは思えない。
そんな扉間の内心も知らず呑気に笑うイヅキに、扉間は重い口を開いた。
「いいか。家族やオレ以外からもらった物は安易に口にしてはならん。可能であれば他の奴が口にしてから、そうでなければ匂いを嗅いだり少し舌に乗せたり、様子を見てから飲み食いしろ。」
──とりあえず、コイツが腹下す前に他人から貰ったものを軽々しく口にしないよう、躾けなければ。
ほわほわと笑うイヅキを前に、扉間は決意した。