DB夢短編・ネタ
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拾ったけれどもそこまで
面倒を見たつもりはない
《side:××》
壁に背を預けて欠伸を噛み殺す。
路地裏の薄暗さ、酒と煙草の安っぽい臭いにも随分と慣れてきた。
「おいガキ〜、いつものよろしく」
おつかいでも頼もうと子供へと投げたはずの貨幣は、うっかり目測を見誤って泥水へと沈んだ。
いや、わざとじゃない。
きっとそうなる運命だったんだ、だからそんな目で見るなって……やめろよ。
思わず目を逸らす。
「……また酒か?あんた、少しは自分で動けよ」
「そう言うなって……こちとら飲まないとやってらんねぇの。売り切れちまう前にさっさと適当な食いモンと追加の瓶、買ってきな」
子供は泥塗れのカネを乱暴に拭うと、舌打ちをして走り出す。
生意気な子供だ。同じ尻尾をもつサイヤ人の生き残り。でも、名もなきモブサイヤ人の自分とはまるで役目が違う。
──あいつは、ターレスはどうやって主人公に負けるんだったかな。
答える声はない。
◇◇◇
子供が買ってきた果実はそこそこに甘かった。
しかし、その中途半端な甘さが、
途端に無味へと変わった果実を、子供へと放った。
「……買ってこいって言ったのはあんただろ」
「はぁ?何言ってんだ。こんなもん買ってきたお前が悪いんだよ、もっと見る目を養え……お前が買ったんだから、お前が食えよ」
酒やら記憶やらのせいで碌に味わえない自分が無理に飲み込むより、こいつの反応を見る方が面白いに決まってる。
目が丸くなった子供を見て、思わず笑みが溢れる。
やっぱまだガキだ。
「はっ、なんだその顔。……ふふ、お前のしみったれた生活を考えれば、うまい部類か?」
「ウマ、イ……これが?」
「まあそんなんでも、ここじゃそこそこ値打ちもんだしな。エネルギー補給のための食事とは違う、舌で味わう贅沢ってやつさ。下級戦士じゃこの先味わえるとも思えないから、今のうちに楽しんどけ〜」
まあ、未来のお前ならこんなもの掃いて捨てるほど食えるんだろうけど。
今のうちに、まだ拙い反応を楽しませてもらおう。
こっちが色々手を回してやっと手に入れてるものを、こいつらはカリスマやら才能やら運やらで軽々と上回っていく。
そのくせ未来の負けは確定しているんだから、まったく、運命ってのは皮肉なものだ。
にしてもこのガキ、随分と無防備だが、これがあのターレスのようになるんだよな。
……どうせ未来が決まってんなら。
決まった未来は仕方がない。
自分が介入しようがしまいが結末は変わらないのだ。
どうせなら、楽しい生き方を。
「おい、これも食ってみな。飛ぶぜ」
「は?飛ぶってなん……ア゙ッ?!カッッラ!!!ふざけ、クソッ辛すぎんだろ!!!!」
引っかかって涙目になる子供は、普段が嘘みたいに年相応だった。
◇◇◇
子供は飲み込みが早い。
散々いじり倒して揶揄ってやろうと思ってたのに、小賢しいあの子供はすぐに対策を打ち立てて防ぎ通し、果てはやり返してまでくる。
楽しみにしてたご当地クッキーが、激甘なくせにエグ味もある罰ゲーム系グミに変わっていた時は流石にキレたが。
それでも、日が経つごとに未来の片鱗を見せる子供を見るのは、悪くなかった。
そんな毎日が続いた、ある日。
「なあオヤツどこやっ……あ?いねぇな」
普段ならいるはずの場所に、いない。
勝手にうろつくにしても、あの年齢のガキが行けるところなんぞ限られている。
一体どこへ。
──しばらくして見つけたあの子供は、図体ばかりでかい野盗に踏みつけられ、地べたで痙攣していた。
「……は?」
こいつは死なない。死ぬことはない。
そう知っている。
でも、このガキはただ生きてればいいんじゃない。飄々としてずる賢く生き抜かなきゃいけないんだよ。いつか
そう決まってる。
どんなに手を尽くしても惑星ベジータが滅びたように、伝説のスーパーサイヤ人の追放が止められなかったように、不変の事実だ。
「無様なもん見せんなよ」
上に乗っていた邪魔者が無駄口を叩く前に喉笛を潰し、蹴飛ばす。
「ガキ。お前はターレスなんだろ?潰れてんじゃねぇ。負けたっていいが惨めに死ぬな、負けで終わらせるな。勝て」
せっかく楽しく遊んでんだから、最後まで突き通せよ。
……そこから数週間のことは、思い出したくない。
数週間後、我に帰って恥ずか死ぬようなことがあった。それだけ。
マジでテンションに任せて何やってるんだ、何言ってるんだ?!!!
「……見ろよあの星。昨日砕いた衛星が輪みたいに光ってる」
もう黄昏れることしかできなくて、無我の境地である。
わーおそらきれい。
……本当に、何やってんだろう。
意味もないのにこんな子供の面倒を見て、そのくせ理想を強制して。
クソくだらねぇ。
ああ、多分疲れてるんだ。
のんびり余生過ごしたい……バカンスとか。なんかうまいこと仕事減らせないもんかな。
そう、
たとえば、銀河パトロールが見回ってるから遠征は延期もしくは中止、とか。
◇◇◇
思いつきのまま銀河パトロールにフリーザの情報を売った、
ら。
パトロールがヘマしたらしく速攻でバレた。
「クソッ!!」
修正力ってやつか?!バカンスはフリーザ軍には認められないのか?!労基に訴えんぞ、んなもん存在しないけど!
休暇をくれ、どうしてもって言うなら自宅警備の仕事でもいい。
迫る追手を前に、どうにか休みをもぎ取ろうと頭を高速回転させる。
ふと、名案が浮かんだ。
「おいガキ……いや、ターレス。ちょっと買い出し行ってこい」
「……は?なにをいって、」
「お前すばしっこいしどうせ今は死なないんだからさ、走り回れば囮くらいにはなるんじゃないか?ほら、いつもの調子でチョロチョロ走っときゃいい」
追手には、運命パワーで死なない方を追ってもらおう。
大丈夫だ、何年先かは知らんがお前は地球を攻めるまで生き延びれる。あいにくこちとら名もないモブだから、いつ死ぬかわからんもんで。
許せガキ。
笑顔のまま子供の胸ぐらを掴み、通りの向こう側へ放り投げる。
そのまま追手が動くのを待って、のんびりと迂回する。
そのはずだった。
「まてまてまて、何でこっちばっか来るんだよ!!そう言う定めなのか?!」
飛ぶ、避ける、とにかく走って飛んで攻撃して。
背後には追手の山。分断されるどころか追手という追手が丸ごと後ろについてきている気がする。
どうにか建屋で撒けないか。
そう飛び込んだ場所は、火気エネルギー弾禁止の文字。
燃料庫だった。
……嫌な予感がする。
前門の燃料、後門の追手。
続々とたどり着いた追手がひしめくようにこちらへ光線銃やらエネルギー弾を構える。
「ちょっと待てお前ら何をする気だ……?」
そしてそのまま、
「やめろ、攻撃はマズ──あっ」
火花が散る。エネルギー弾が燃料に直撃する。
ああ、やりやがった。ここ燃料庫だぞ?!正気かこいつら。
ぶわりと白のような赤のような光が視界を埋め尽くし、ついで衝撃、吹き飛ぶとともに熱気に炙られる。
「チクショウ、運命なんかクソ喰らえーーーッ!!!」
直後、叫び声をかき消すように、耳をつんざくような大爆発が地を揺らした。
──X年後。地球。
死んだかと思った?ところがどっこい生きてる。大怪我だったし火傷やら傷やら跡だらけだが。
サイヤ人様々である。Gよりしぶとい、なのになぜ滅んだのか。
それが
空を覆う巨大な樹木の根本、懐かしの顔を見送らんと酒を煽る。
飲まないとやってらんねぇよ、相手からしちゃ一介のサイヤ人との出来事だろうが、こっちからしてみればしばらく面倒見てたガキの晴れ舞台だぞ。
まあ死んでも地獄がある世界だから、きっと向こうで楽しくやるんだろうが……地獄似合いすぎるなあいつ。ご出身?
そう現実逃避をしていたら、不意に首筋に冷たい何かを突きつけられる。
はっと身を固めると同時に、聞き覚えのある声が耳元で囁いた。
「おいおい……育児放棄か?」
手から酒瓶が滑り落ちる。
ガラスの割れる音ともに振り返った先には──
──ターレス。
もう地獄に行ってるはずのヤツがいた。
「ゲッ……!?なっ、お前生きてたのか?!」
「お陰様でな。それにしても、自分で買ったものは責任を持って面倒を見ろと教えたのは、あんただろ?散々金と手間かけて育てといて無一文で放り出すなんて、酷いじゃねぇか……ふふふ」
「あー、あー……そんなこと、言ったか?」
全く記憶にない。
そんな拾った生き物の面倒はちゃんと見ようねみたいな、道徳的なことこいつに教えただろうか。否、ない。
戸惑いながら肩をすくめれば、ますます喉元の指が力を増す。
存在しない記憶で切れるのはやめろ!!そもそもお前が五体満足で生きてるってことは、まだ映画ストーリーの途中じゃないのか?!自分のようなモブサイヤ人が出演していた覚えはないし、部外者にかまってないでさっさとそこで口開けてる主人公に凸れ!!
訴えようにも、下手に口に出したら喉を貫かんばかりの圧を感じる。
しばし様子を伺っていれば、ターレスはゆっくりと口を開いた。
「なあ……サイヤ人は子が親を殺す、って話聞いたことあるよな?」
「あ?そういや、んなことほざいてるやつもいたな。それがなんだ?お前親なんかとっくにいないだろ」
急に何の話だ。
もしや手にかけることなく、惑星ベジータの滅亡とともに親が死んだ自分はサイヤ人として未熟、とか言いがかりつけられるんだろうか。
そんな予想は大きく裏切られた。
「──オレが今あんたを殺したらさ、あんたとオレは親子になるとおもうか?」
……?
え?いやこいつ何言ってん、は、親子?
親子?!!!
おいなんかバグってんだけど!!!ターレスってこんなこというヤツじゃないって、ほんと、何がどうしてそうなった?!
「や、そうはならねぇだろッ!!?……たぶん。おい何笑ってんだてめ、」
終
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