雑多ネタ
名前(カタカナ推奨)
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元気かな。
先日
実はあのあと僕は
でも安心してください。いつのまにかローブを着せられてたけどケガはないし、ここ数年で1番ぐっすり眠っちゃったくらいです。
さて、そんなこんなで見知らぬ棺に入れられてた僕だけど、今どこにいるでじょう。
なんと、僕は今───すごい怪しいサバトの集会みたいな場所にいます。
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住所職業不定、間借り暮らしのロバ獣人。
それが、15歳までの僕──アウグストの肩書きだった。
昨晩、現自宅こと住み込みバイト先の離れへ向かってトボトボ歩いていたら、背後から猛スピードの馬車に轢かれた。そこから記憶がない。
目が覚めたら、僕は暗い箱の中にいた。
「交通事故!!示談金もらってない!!」
慌てて飛び起き箱の蓋を押し開けると、そこは薄暗い講堂。
宙に浮かぶ無数の棺桶。そしてその中から出てくる、刺繍入りの高そうなローブを着た同年代の青少年たち。
なんだその服。何かのミサ?
ふと嫌な予感がして自分の体を見れば、最悪なことに僕の服装も彼らと同じローブに換わっていた。
「は?僕の一張羅は?鞄は?」
おはようからおやすみまでほとんどを共にし財布も兼ねている一張羅と他全財産が詰まってる鞄がない。
いくら質の良さそうなローブとはいえ、無断でしかも全部持ってくのは代償が大きすぎない!?
入っていた棺桶の隅から隅まで、アリ1匹見逃さないくらい探したが、両者とも影も形もなかった。
事故の時破損がひどくて捨てられたのか?
もしそうならば賠償金をしっかりもらわないと生活というか命に関わる。所持金ゼロ、元手もなく頼れる親族もなし、今日のご飯も危うい身なのだ。
正直加害者は助走をつけてぶっ飛ばしたいが、お金には変えられない。復讐は心が躍るけど今はひとまず生き延びないといけない。
「誰かお話しできそうな人いないかな……」
周囲はどうも自分と同じ境遇っぽそうな男児ばかり。
まとめ役とか、主犯…いや首謀……いや。とにかく事情に詳しそうな人から荷物の場所を聞き出してあわよくばガッポリもらいたい。
そんな僕の思いが届いたのか、明らかに我々とは異なる雰囲気の、ものすごいボリュームのファーコートを着こなしたモノクロな色味の男がやってきた。
この人絶対お金持ち。上手いことやればこれは示談金弾むかもしれないけど、同時にプライドとリスクも高そう。
被害者じゃなさそうな人が現れホッとしたのも束の間、初対面で犬呼びされた上に首根っこを引っ掴まれ、僕は黒フードの集団が集まる不穏な儀式会場に放り込まれた。
「えっ示談金」
「ふざけたことを言ってないで大人しく式に参加しろ」
「あれ……耳遠いのかな?半分白髪だし」
「子犬。いいか?お前の瀕死のセンスに叩き込め。これはファッション、反応としては素敵!センスある!は最低ラインだ。しかしクドクドと媚び諂われるのも面倒だから、学園長……はダメか。ポムフィオーレの連中に手袋でも放って教わるんだな。金云々は美的感覚を養ってから他の奴に言え」
何を言われたのかよくわからないまま、男は踵を返して去っていった。
多分喧嘩を売れと言われた気がする。ポム……フィナーレ?に。
それだけは理解できたが、それにしても、どう見たって僕の耳はロバの耳だ。だのに終始子犬と呼んでいたので、眼科に行った方がいいんじゃないだろうか。
「──次。前へでなさい」
重々しい声に呼ばれ、またひとり、青年が怪しげな鏡の前に進んでいく。
付近には数多の棺桶が宙に浮き、黒いフードを被った集団に囲まれるその様は、なにかの儀式のようだった。
超絶怪しい現場からお送りします。
この儀式だが、どうやら、鏡に一人ずつ名前を告げていくことで何か振り分けられるらしい。
獣人が多いグループ、海の匂いが強いグループ、妙に顔が良すぎるグループ……。ある程度の基準で分けられているようだが、共通するのは全員「若い男」で「それなりに健康」ということ。
常識知らずとよく言われる僕でもわかる。
僕は拉致され、全財産を奪われ、着せ替えられている。まず間違いなく誘拐と窃盗だ。そして集められているのは「健康な若い男」たち。
誘拐した青少年に金をかけて身綺麗にするなんて……より高く売るための“商品化”としか思えない。
「……人身売買だ」
「え〜オレたち売られんの? ヤバ。入学式って聞いてきたんだけど」
「うわ誰?!」
唖然と呟くと、ぬっ、と隣にいた翡翠色の髪の男が覗き込んできた。
海の匂いと共に届く薬の匂い。
おそらく魔法薬で「人化」している人魚。
ていうか、この人いま聞き捨てならない言葉を言ったな。
「……え? 入学式? なにそれ」
「ここ来る前に説明あったじゃん」
「覚えがない。僕、帰宅途中に馬車に轢かれて目が覚めたらここだったし。それ詐欺じゃないの?」
「ジェイドとアズールにも来てたけど」
「……知り合いにも送りつけて本物っぽさを出す手法があるって、聞いたことある。カモを安心させるための偽装だって」
僕の言葉に、人魚くんの目が真剣味を帯びる。
「は?オレ、文化祭でここきたことあるし」
「文化祭?いや、もしかしたら“商品”の展示会の可能性も」
「王族を巻き込んで?陸のことあんま知らないけど殿下がいるとか言ってるヤツいたよ」
「じゃあ違うか……」
「ま、オレは顔見たことねぇし本当かは自分で確認すれば?少なくとも、珊瑚の海の王族とかはココにいないっぽいねぇ」
「それじゃあ出まかせの可能性あるじゃん!!」
「でも、
ぺらりと人魚くんが一枚の紙を──手紙を見せる。
均一に漉かれた滑らかな紙、微かに魔力を感じる封筒。そして間違いようのない鏡に鴉を写した校章。
先日僕の元に届いた手紙と同様のものだった。
手紙。そう、届いた時知り合いの警官に、戸締りしているはずの部屋に帰ったら不審物があったと相談したら「本物だ」とお墨付きをもらった入学証書だ。
「ほ、本物……てことは、これホントに入学式とかだったりする?」
「ウン。はじめに学園長が挨拶してた、内容は聞いてねぇけど。ギンザメくんさぁ、ずっと人身売買会場だと思ってたの?ヤバいね」
「ヤバい。入学金払ってないのに。強制徴収かな?ローン組める?」
「しーらね。てかそこじゃなくね?」
入学案内なんか手元にないし、お金も含めて全部鞄や普段着の中だ。
とりあえずなくなった全財産を探してキョロキョロしていると、冷ややかな声が割って入った。
「君たち、さっきから騒々しいよ。式の途中なのだから静かにすべきだ」
振り向くと、薔薇のように真っ赤な髪の少年が立っていた。
背は低いが、その立ち振る舞いは毅然としている。
「あ? なに……って、ちっちぇ〜! なんでここに稚魚がいんの? 場所間違えちゃった?」
周囲の気温が、一気に下がった気がした。
どう考えても地雷、不躾、ノンデリな発言。小さいと言われた少年は、見る間に顔を髪と同じくらい真っ赤にして震え出した。
「てか髪!赤いのに熱くねぇの!」
人魚くんが興味津々で少年の髪を鷲掴む。
どこかで何かが切れた音が聞こえた気がする。具体的にいうと堪忍袋の尾とか。
僕は反射的に数歩下がった。
「……人を侮辱した上に、勝手に髪を鷲掴むなんて。いい度胸がおありだね?」
赤い髪の少年が、腰に差していたペンを抜く。
その先端には、宝石のように煌めく石。
まさか。
「──ファイアショットッ!!」
轟音と共に炎が僕の前髪を焦がし、横にいた人魚くんが吹き飛んだ。
「うわぁぁああ!?ほんとに打った!?!!」
僕は耳を抑えて叫んだ。
チラリと見えた校章と同じ鏡をモチーフにした特有のマジカルペン。そしてさっきの手紙。
大規模な詐欺集団の可能性は捨てきれないけど、つまりここはNRCの入学式───名門だが巷で個性を尊重しすぎて殴り合いをしていると言われるような学校の入学式というと。
……魔法の撃ち合いが日常茶飯事って本当だったんだ。
魔法有りの乱闘から逃れるため壁の隅に身を隠していると、タイミングが良いのか悪いのか鏡の選別の順番が回ってくる。
魔法なのか、有無を言わさず前に進まされ、鏡と対面する。
《汝の名を告げよ》
「正気か?!この惨状を見て中止しようとか思わないの?!」
暗い鏡にうっすら反射する自分の姿は酷いもので、頬は煤けおろし立てのようにシワひとつなかった黒ローブはヨレ、髪はボサボサでロバ耳も後ろを向いている。
しかし僕の叫びも虚しく、鏡は沈黙するばかり。側に立つ怪しいペストマスクの男も「賑やかですねぇ」と呑気なばかりだ。やっぱりどう見ても不審だけど本当に入学式なんだろうか。
鏡が同じフレーズを繰り返す。
《汝の名を告げよ》
「なんか壊れたおもちゃみたいだ。これ、大丈夫なんですか?」
「由緒正しき闇の鏡になんてことを!!世界でも数少ない超貴重な魔道具ですよ!」
《汝の名を告げよ》
「なるほど、経年劣化かつ希少故に直すのも難しいと……ところであなた誰です?」
「学園長ですが!?エッ、入学するのに、しかもさっき挨拶をしたばかりなのにワタシを知らないんですか!?」
ガクエンチョー……ガクエン、長……学園長!?
この人が?!
さっきまでずーーーーーーーっと功績云々を語ってたから洗脳ついでにヤバい団体の実績をひけらかす儀式の進行役かと思った、なんて言えない。
本音を呑み込み、学園長()のことはなかったことにして僕は鏡に向き直った。
鳥の囀りが聞こえる。
《汝の名を告げよ》
「そういやここには個人情報保護法とかはないんだろうか」
「このNRCにそんなもの適用されませんよ。さあ後ろが詰まってるので早くお言いなさい!」
「やはり魔境……アウグストです」
《……ふむ。汝の魂は、捻れ混ぜられた破片。幸か不幸か歪んだまま固定され、冥府の底へと続いている》
何言ってんだこの鏡。
ちんぷんかんぷんなことを言われ状況も忘れてポカンと惚ける僕をよそに、鏡が言い放つ。
《汝の魂の形は───イグニハイド!!!》
「えっサバナなんちゃらじゃないんだ」
「はい?……嗚呼、外見の話ですか。マァ当校の寮分けは内面も重視しますからね、よくある事ですよ。さ、アナタの寮はあちらです」
「ちょっと待ってください!ひとつだけ、僕の全財産どうなったんですか?返してください!」
「え?落としたかスられたんですか?それなら自分で取り返してください。まったく最近の子は自主性が……」
「違います。ここにきた時には無くなってたんです!…………だめだまったく聞いてない」
そのままくどくど説教まがいのご高説を垂れ流す自称学園長なペストマスクの男に諦めをつけ、僕は喧騒をBGMに“イグニハイド”らしき集団へと足を向けた。
ほとんど誘拐な入学案内にどこに行ったかわからない服と鞄。怪し過ぎる自称学園長。式典の最中に魔法をぶっ放す生徒。
今のところヤバい雰囲気しか感じてないけど本当に大丈夫なんだろうか、ここ。
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───追記。
お兄ちゃんは随分と“常識外”な学校に来てしまったようです。
あと4年。
頑張って、必ず5体満足で戻ります。
君の幸福を願って。
アウグスト・タッカー
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