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ファンタジー・ノスタルジア

この物語は、どの歴史にも載っていない程の遠い遠い、昔の話である。

 この世界には"魔族"と"人間"が共存していたが人口のほとんどが魔族で溢れていた。
それもよくある話であり、力ある者と力なき者と極端に均衡が別れてしまったがため、弱肉強食の世界になってしまったのだ。
より強大な能力を持つ魔族は人間を虐げるだけでは飽き足らず、ついには弱い魔族もを虐げ、争い、己の能力で力自慢をしたり生きるために領土を拡大すべく魔族同士が小競り合いをする日々が当たり前となる。
その多くの魔族の中で先祖が領土争いで負けてしまったため特定の土地に根を張らず、地を転々として生きる魔族が居た。

移住魔族——。
3〜4日の拠点を作り、時が過ぎたらまた違う土地で暮らす、世界を転々として生活を送ることからそう呼ばれる様になった。
この世界を転々とするという事は他の魔族の領地にも足を踏み入れる事にもなるのでいつ戦闘が起きてもいいように専用の戦闘部隊も移住魔族の中で配属されている。しかしながら彼らは先祖の事もある為か、あまり争いを好まない。世界の魔族中では真ん中くらいの力はあるが弱者でも無いのに争いごとは好まないのだ。なので戦闘も必要最低限しかしない。
他の魔族にとってそれだけでも十分珍しいのにさらに珍しい人物がいる。

"ガーター=ペチュニ"

彼はこの移住民族の族長の一人息子でありながら一族の中で一番争いが苦手で嫌いだった。死者はおろか、ケガ人さえ出るのが嫌いなガーターはいつも平和的解決を訴えてきたが族長である父親、その他の側近達にいつも却下され、逆に"平和的解決とは何か"と聞かれるとガーター自身も言葉に詰まってしまうのだ。それ故、"族長の息子なのに臆病者だ"、"なんたる腰抜け"と部下達にまで囁かれ、嘲笑われてしまう。
最初こそは落胆や恥じらいもあったが、そんな人生が20年以上も繰り返していくうちに心のどこかで"多少の争いは仕方のない事かもしれない"と諦め心も付いてしまっていた。族長である父に洗脳されるかの如く、"ある程度の争いはやむを得ない、犠牲もまた付きものだ"と言われ続けられているからかもしれない。はたまた、この世界を20年以上見てきた自分の結論なのかもしれない。それすらも自分自身で分からなくなっていた——。


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