ゴロゴロ/潮江文次郎
夢主の名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「にゃ! にゃっにゃーにゃにゃにゃにゃ!」
「えーなに? くそ、一生の不覚?」
文次郎は地面を叩く。柔らかい肉球の足で。普段なら、ドン! というところだけど、本日は音もなく、たしっと地面に肌が触れたような音がした。
私の最愛の彼は今日、かわいい猫ちゃんになってしまった。文次郎じゃなくて、黒と茶色の毛を持つ、にゃん次郎に。
元を正すと、伊作の薬の効果……案の定、薬を被ったのだ。それも、六年生全員……。
フーフー言って、キレている文次郎の頭を撫でる。
「文次郎、もしこのまま一生ねこちゃんでも私、ちゃんと愛してるからね……。私のかわい子ちゃん……」
「にゃ! にゃにゃ!」
なんかキレてはいるものの、恋仲である私に爪は立てられないようで、タシッタシッと撫でる手を叩くだけだった。
折角だし、猫吸いなるものをやってみようと、顔を茶色と黒の体に埋める。すう、と息を吸い込む。日向の匂いがする、と感動も束の間、頬を力強く押される。いつもの力強くてゴツゴツした手、ではなく、ぷにっぷにのハリのある肉球に押された。
「ふふ、肉球ぷに次郎」
「にゃにゃにゃ、にゃにゃにゃにゃにゃにゃ……」
「んー? あとで覚えてろよ? 何よー、へそ天してるくせに〜!」
わしゃわしゃお腹を撫でてやると、抵抗を見せながら文次郎は眠ってしまった。
戻るのか心配だけど、今はかわいい彼の頭を撫でた。すうすう寝息を立てている。
「今日は徹夜できないね」
ぎゅう、と抱きしめて、私もいつの間にか、眠っていた。
「よう、目ぇ覚めたか」
「ん、おはよ〜……。…………あれ? え、も、文次郎さん……?」
目を覚ますと、目の前には愛おしい彼。そう、人間の。
寝ている私を下敷きに、覆い被さっている。
「あたしの猫ちゃんどこ!?」
「うるせー! よくも可愛がってくれたな!」
「可愛かったから仕方ないじゃん! にゃあにゃあ鳴いちゃってさ! 可愛くないわけないじゃん!」
「だー! 言うな、馬鹿! 可愛いとか!」
顔を真っ赤にした文次郎は私の口を、かわいかったあの肉球の前足ではなく、ゴツゴツの手で塞いだ。そして、悪い顔でニヤリと笑った。
「お前も今から撫で回してやるから、覚悟しろ」
「え、ちょ、待って!」
「問答無用!」
文次郎が私に触れようと手を伸ばした、その瞬間。
——ゴロゴロ。
猫の喉を鳴らす音がした。私は文次郎の前に手を出して、制止させた。
「ちょっと待って、文次! 猫ちゃんのゴロゴロの音するよ!」
「あ?」
「近くからするんだけど……、どこかな?」
周りをキョロキョロと見渡すけど、猫ちゃんの姿はなく。でも、まだ、ゴロゴロ音がする。
辺りを見渡して、時折文次郎と目が合うと、そのゴロゴロは大きくなる。
「……」
私は、文次郎と目を合わせる。また、大きめにゴロゴロと音がする。少し、文次郎の頬を撫でてみる。ゴロゴロが大きくなった。
「……え、も、文次郎さん……」
「……言うな」
「大好き大爆発して、ゴロゴロ言ってるの……? え、かわいい……、喉だけ猫ちゃんのまま……?」
「う、うう、うるせえ!」
動揺してるけど、ノドはまだ鳴っていた。かわいい。喉だけ猫ちゃん……!
「ふ、ゴロゴロよく鳴るノドね。文次郎ってば、かわいいんだから」
文次郎の顎をくいっと持ち上げたら、顔を真っ赤にした。
「う、うるせ……」
顔を背けて、小さく呟いた。ゴロゴロと喉を鳴らしたまま。
