約束は、今も
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入学式の後それぞれのクラスへと移動し、座席表の通り廊下側の最後列に座った。私の所属する1組は教室棟の端、体育館から1番遠い教室だった。どこに移動するのも不便そうでついてないなーなんて考えていたが…それよりも気になることがある。
入学式の時からずっと、周りの人がこちらをチラチラ見ている。気のせいと片付けていたがどうにもそうではないらしい。制服は校則通りに着ているし、化粧なんてしていない、髪だってちゃんと梳かしてきた。なんだか落ち着かなくて、辺りをキョロキョロと見回すと、1人の女の子と目が合った。その子はこちらへと小走りでやってくると、前のイスを動かし向かい合わせに座る。戸惑う私にその子は開口一番。
「めっっっっちゃ可愛いね!!」
私の目をじっと見つめて放たれた言葉に、驚いて固まってしまった。いや、正確には"この女の子から放たれた"ということに驚いた。小さな顔に大きな目、丸みのあるショートカットが整ったその顔を際立たせている。どこからどうみても綺麗な子が、なぜ私に…
「ごめんね突然!ついテンション上がっちゃって…私は仙道茜、アカネって呼んで」
全く反応のない私に気づいたのか、自己紹介をしてくれた。弾けるような笑顔に思わず見とれてしまう。
「あ、あの、私も入って良いですか…?」
突然隣から聞こえた声に、振り向くとそこには可愛らしい女の子。控えめに上目遣いで私達2人を見ている。
茜「もちろん!名前は?」
芽衣「初めまして、吉川芽衣です。近くにある富ヶ丘中出身です。その、クラスに知ってる子が全然いなくて…良かったら仲良くしてください!」
華奢な体をさらに小さくして話す彼女。なんだか儚げに見えるのは色素の薄い瞳と淡い栗色のふわふわした髪の毛のせいだろうか。この子もまた…可愛い…。
茜「よろしく!で、あなたは?」
突然現れた美少女2人に気を取られ、自分が名乗っていないことをすっかり忘れていた。
『雪白陽です。最近ここへ越してきました。6年前まで住んでたけど、全然記憶が無いので色々教えて貰えると嬉しいです…!』
茜「あっ私も最近引っ越してきたの!まあ東京からだけど」
芽衣「へ〜そうなんだ!」
同中の人同士すぐにグループが出来るものだと思っていたから、2人に知り合いがいないと聞いて少し安心した。
芽衣「陽ちゃんは?どこから越してきたの?」
きた、この質問。
『えっと……一応アメリカから…』
「「アメリカぁ!?」」
予想通りの反応が返ってくる。
茜「てことは、帰国子女?」
『まぁ…』
茜「英語ペラペラ?」
『生活できるくらいは…』
「「えぇぇすっごぉい!」」
目をキラキラさせて私を見る2人。きっとアメリカでの素敵な生活を想像しているのだろう。でも実際のところ住んでいたというだけで特別何かがあった訳では無い。それに今から6年前、小3でアメリカに引っ越すというのは皆が想像している以上にハードルが高く、楽しいことばかりではない。なんとか話題を逸らそうと考えていると、気になっていた事を思い出した。
『そういえばさ、さっきからみんなに見られてない?』
3人で話している間も感じていた視線。私の言葉に2人は顔を見合わせる。
茜「そりゃ見るよね」
芽衣「うん、絶対見ちゃう」
当然とでも言うように納得した表情をしているが私には全く分からない。
『どういうこと?』
芽衣「陽ちゃん相当目立ってるから、みんな気になるのよ」
『え、どの辺が?』
茜「ん〜、顔とか…」
『顔!?なんか変なとこある?』
芽衣「ないない!変とかそういう事じゃないよ!」
『じゃあなんで』
茜「それは、(可愛いから)ねぇ…」
芽衣「(可愛いもん)ねぇ…」
『ねぇって何が?』
何度聞いてもはっきりとは教えてくれない。結局理由は分からないまま、やってきた担任によって会話は遮られたのだった。
