頼もしい援軍……?
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「どういうことかしら?」
レストランをオープンしてすぐに、レス子は窮地に追い込まれていた。
「な、なんのことでしょう」
まさか壁際に追い込まれ、女性に壁ドンされる日が来るなんて。
レストランを開けて一番のお客様として入ってきたのは黒服を連れたマリエッタ。
レス子を見つけると、ワンピースの裾をなびかせ大股で近づいてきて壁にドン!と追い詰められたのだった。
エレガントな香水の香りと共にキレイな顔が迫る。
「どうして司があなたの家からあんな顔で出てくるの? あなた司になにをしたの?」
「あんな顔……?」
レス子はキョトンとした表情を返した。
「わたくしには見せたことのない笑顔よ!」
「あっマリエッタがレス子を苛めてる!!」
辻の声が響き、ヒステリックに叫ぶマリエッタの後ろから音羽と辻が入ってきた。
「嫌な予感がしたから来てみたんだけど、正解だったみたいだね」
状況を見てとった慎之介さんが眉をひそめた。
「魁斗さん、慎之介さん……!」
マリエッタの影から体を伸ばし、必死の思いで助けを求める。
「おい、レス子が困ってるだろ! 離してやれよ」
早速、辻が助けに入った。女性のマリエッタの体に触れるわけにはいかないので、ギリギリまで近づき強い眼差しを投げた。
「外野のチーズは黙ってて!」
「ち……?」
つかの間の沈黙。
いまなんて?
マリエッタの発言を3人が頭の中でリピートする。
「チーズ……? チーズじゃねぇ! 辻魁斗だし!!」
ゆっくりと持ち上げられた辻の拳がプルプル震えだし、強く閉じられた瞼がピクピクしている。いまにも爆発してしまいそうな勢いだ。
そんな辻を見ても、マリエッタは片方の眉を持ち上げただけで動じる様子はない。
「知ってるわよ。あなたチーズがお好きなんでしょう? わたくしの手にかかればあなたたちのことなんて簡単に調べられるのよ。だからチーズっていったの!」
「はぁぁぁ!? チーズは好きだけど、それは名前じゃないだろ!!」
「だから外野は黙っててといったのよ」
そこへ音羽がスッと入っていった。
「オトウトをいじめたら僕が許さないよっ」
「ドーナツも黙ってて」
「ド……?」
いまなんて?
マリエッタの発言をまたもや3人が頭の中でリピートする。
「ドーナツ……?」
音羽が小さく呟き、ドーナツなんていわれたら逆に喜ぶんじゃないかと、レス子と辻は音羽に視線を投げた。
「ドーナツだって!? 僕のどこに穴が開いてるの!!」
喜ぶかと思ったらそうてはなく。ドーナツといわれ怒ったのは自分には穴が開いてないから? らしい。
「良く見て! 僕には穴なんて開いてないでしょ!!」
己の胸に手を当てて憤る音羽。
穴があったらこんな音しないでしょ!? と胸をバンバン叩いている。
怒るとこそこ? レス子と辻は心の中で突っ込みを入れた。
「ふん、そんなことどうでもいいわ。分かったらあなたたちは静かにして」
「なんて女だ……!!」
「全くだ!!」
ど、どうしよう。
マリエッタは思いの外、強敵らしい。
プリンセスとして育ったからなのか、お国柄なのか、どんな発言が飛び出すことやら分かったものではない。
向けられたことのない発言に、すっかり振り回されてしまい援軍も足元に及ばないようだ。
「お前たち、何してる」
落ち着いた声が響き渡り、その場が静まる。騒ぎで入り口のベルが鳴ったことにも気づかなかった。
「司さん」
「司」
ほぼ同時に霧島のほうを向いたレス子とマリエッタが声を揃える。
「レス子」
霧島の登場にマリエッタの強固な壁が緩み、そこをくぐり抜けたレス子は霧島に駆け寄る。
レス子が笑顔で迎えると霧島は身を屈め、頬にキスをした。
!!
ドキリとしたものの今度は声を上げなかった。
マリエッタの前だから、挨拶のキスしたんだよね?
当たり前のように頬にキスをする司さんは、すっかりその行為に慣れたみたいに見える。
所作がもう完璧で、堂々としててどこから見ても王子様だ。
わたしは彼の足を引っ張らないように、司さんの彼女を演じるんだ。
頬から離れていく司さんを見上げ、にっこり微笑む。
「司さん、いらっしゃい」
店内に入る日差しが見つめ合うふたりを優しく包む。それはまるで天に祝福された愛し合う恋人たちのように様になっていた。
面白くないマリエッタは霧島に歩み寄る。
「司、わたくしには?」
「君は俺の恋人じゃないはずだが」
「もう。つれないんだから」
即答に感情を隠すことなく膨れっ面をするも、席に座りましょうとエスコートを求めた。
手を差し伸べられたら断るはけにはいかない。
他意はないのだと伝えるようにレス子を見つめ、マリエッタに腕を差し出した。
その後を、邪魔だと邪険にされながらも音羽と辻もついていく。3 Majesty解散の危機を阻止するため、マリエッタの好きにはさせないはず。ふたりがいてくれるお陰で余計な心配をすることもなくて済みそうだ。
注文を受け、厨房に入って準備をしていると、後ろからそっと声がかかった。
「君の家でなにをしていたのかと聞かれたよ」
司さんだ。
フレンチトーストを焼いていると後ろから手元を覗き込んできた。
焼き加減に注意しつつマリエッタのほうを見ると、慎之介さんと魁斗さんが相手をしている。
表情を見るからに、仲良くしている訳ではなさそうだけれど。
不意に慎之介さんが一瞬こちらを見てウインクした。司さんと話すチャンスを作ってくれているのだ。
この機を逃してはいけない。
「あの、それ、わたしも似たようなことを聞かれました」
ガスを切って慣れた手つきでお皿に盛る。口元に手を当て、霧島が頷いた。
「なるほどな。だから今朝は君のところへ来ていたのか」
「慎之介さんと魁斗さんのお陰であまり追求されずに済んだので助かりました」
「俺がもっと早く駆けつければ」
「え?」
素早く付け合わせ用のバナナを切り、包丁に乗せたそれをお皿に滑らせ形を整えるレス子の手が止まる。
「いや、なんでもない」
司さん?
首を傾げるレス子に、霧島は一瞬頭に浮かんだ嫉妬のようなものを押しやって考えを元に戻した。
直接レス子のところへ来たということは、それだけ切羽詰まっているということか。
「だとすると……いまのところ恋人作戦はうまくいっている、と考えて良さそうだな」
一緒にいる時間を重ねれば、より俺たちは恋人らしくなるだろう。
レス子との間に何者も入る隙がないと分かれば、熱しやすく冷めやすい情熱家のマリエッタも波が引くように熱が冷めるはずだ。
マリエッタが俺を諦める日は近いかもしれない。
「次の休み、デートに誘っても?」
「デート!?」
誘われると思ってなかったのか、『デート』という言葉にレス子はかなり驚いた。
「恋人をデートに誘ってはいけないだろうか?」
「そんなことっ……」
カリッと焼けたフレンチトーストにとろりとした黄金色のハチミツがかけられ、フレンチトーストが完成したようだ。
辺りに濃くて甘い香りが広がる。
「嬉しいです」
頬を緩めて頷く彼女に、柄にもなく心が浮き足立つ。
さて、どんな時間を過ごそうか。
霧島の頭の中に、手を繋ぎ、仲良く歩くふたりの姿が易々と浮かんだ。
レストランをオープンしてすぐに、レス子は窮地に追い込まれていた。
「な、なんのことでしょう」
まさか壁際に追い込まれ、女性に壁ドンされる日が来るなんて。
レストランを開けて一番のお客様として入ってきたのは黒服を連れたマリエッタ。
レス子を見つけると、ワンピースの裾をなびかせ大股で近づいてきて壁にドン!と追い詰められたのだった。
エレガントな香水の香りと共にキレイな顔が迫る。
「どうして司があなたの家からあんな顔で出てくるの? あなた司になにをしたの?」
「あんな顔……?」
レス子はキョトンとした表情を返した。
「わたくしには見せたことのない笑顔よ!」
「あっマリエッタがレス子を苛めてる!!」
辻の声が響き、ヒステリックに叫ぶマリエッタの後ろから音羽と辻が入ってきた。
「嫌な予感がしたから来てみたんだけど、正解だったみたいだね」
状況を見てとった慎之介さんが眉をひそめた。
「魁斗さん、慎之介さん……!」
マリエッタの影から体を伸ばし、必死の思いで助けを求める。
「おい、レス子が困ってるだろ! 離してやれよ」
早速、辻が助けに入った。女性のマリエッタの体に触れるわけにはいかないので、ギリギリまで近づき強い眼差しを投げた。
「外野のチーズは黙ってて!」
「ち……?」
つかの間の沈黙。
いまなんて?
マリエッタの発言を3人が頭の中でリピートする。
「チーズ……? チーズじゃねぇ! 辻魁斗だし!!」
ゆっくりと持ち上げられた辻の拳がプルプル震えだし、強く閉じられた瞼がピクピクしている。いまにも爆発してしまいそうな勢いだ。
そんな辻を見ても、マリエッタは片方の眉を持ち上げただけで動じる様子はない。
「知ってるわよ。あなたチーズがお好きなんでしょう? わたくしの手にかかればあなたたちのことなんて簡単に調べられるのよ。だからチーズっていったの!」
「はぁぁぁ!? チーズは好きだけど、それは名前じゃないだろ!!」
「だから外野は黙っててといったのよ」
そこへ音羽がスッと入っていった。
「オトウトをいじめたら僕が許さないよっ」
「ドーナツも黙ってて」
「ド……?」
いまなんて?
マリエッタの発言をまたもや3人が頭の中でリピートする。
「ドーナツ……?」
音羽が小さく呟き、ドーナツなんていわれたら逆に喜ぶんじゃないかと、レス子と辻は音羽に視線を投げた。
「ドーナツだって!? 僕のどこに穴が開いてるの!!」
喜ぶかと思ったらそうてはなく。ドーナツといわれ怒ったのは自分には穴が開いてないから? らしい。
「良く見て! 僕には穴なんて開いてないでしょ!!」
己の胸に手を当てて憤る音羽。
穴があったらこんな音しないでしょ!? と胸をバンバン叩いている。
怒るとこそこ? レス子と辻は心の中で突っ込みを入れた。
「ふん、そんなことどうでもいいわ。分かったらあなたたちは静かにして」
「なんて女だ……!!」
「全くだ!!」
ど、どうしよう。
マリエッタは思いの外、強敵らしい。
プリンセスとして育ったからなのか、お国柄なのか、どんな発言が飛び出すことやら分かったものではない。
向けられたことのない発言に、すっかり振り回されてしまい援軍も足元に及ばないようだ。
「お前たち、何してる」
落ち着いた声が響き渡り、その場が静まる。騒ぎで入り口のベルが鳴ったことにも気づかなかった。
「司さん」
「司」
ほぼ同時に霧島のほうを向いたレス子とマリエッタが声を揃える。
「レス子」
霧島の登場にマリエッタの強固な壁が緩み、そこをくぐり抜けたレス子は霧島に駆け寄る。
レス子が笑顔で迎えると霧島は身を屈め、頬にキスをした。
!!
ドキリとしたものの今度は声を上げなかった。
マリエッタの前だから、挨拶のキスしたんだよね?
当たり前のように頬にキスをする司さんは、すっかりその行為に慣れたみたいに見える。
所作がもう完璧で、堂々としててどこから見ても王子様だ。
わたしは彼の足を引っ張らないように、司さんの彼女を演じるんだ。
頬から離れていく司さんを見上げ、にっこり微笑む。
「司さん、いらっしゃい」
店内に入る日差しが見つめ合うふたりを優しく包む。それはまるで天に祝福された愛し合う恋人たちのように様になっていた。
面白くないマリエッタは霧島に歩み寄る。
「司、わたくしには?」
「君は俺の恋人じゃないはずだが」
「もう。つれないんだから」
即答に感情を隠すことなく膨れっ面をするも、席に座りましょうとエスコートを求めた。
手を差し伸べられたら断るはけにはいかない。
他意はないのだと伝えるようにレス子を見つめ、マリエッタに腕を差し出した。
その後を、邪魔だと邪険にされながらも音羽と辻もついていく。3 Majesty解散の危機を阻止するため、マリエッタの好きにはさせないはず。ふたりがいてくれるお陰で余計な心配をすることもなくて済みそうだ。
注文を受け、厨房に入って準備をしていると、後ろからそっと声がかかった。
「君の家でなにをしていたのかと聞かれたよ」
司さんだ。
フレンチトーストを焼いていると後ろから手元を覗き込んできた。
焼き加減に注意しつつマリエッタのほうを見ると、慎之介さんと魁斗さんが相手をしている。
表情を見るからに、仲良くしている訳ではなさそうだけれど。
不意に慎之介さんが一瞬こちらを見てウインクした。司さんと話すチャンスを作ってくれているのだ。
この機を逃してはいけない。
「あの、それ、わたしも似たようなことを聞かれました」
ガスを切って慣れた手つきでお皿に盛る。口元に手を当て、霧島が頷いた。
「なるほどな。だから今朝は君のところへ来ていたのか」
「慎之介さんと魁斗さんのお陰であまり追求されずに済んだので助かりました」
「俺がもっと早く駆けつければ」
「え?」
素早く付け合わせ用のバナナを切り、包丁に乗せたそれをお皿に滑らせ形を整えるレス子の手が止まる。
「いや、なんでもない」
司さん?
首を傾げるレス子に、霧島は一瞬頭に浮かんだ嫉妬のようなものを押しやって考えを元に戻した。
直接レス子のところへ来たということは、それだけ切羽詰まっているということか。
「だとすると……いまのところ恋人作戦はうまくいっている、と考えて良さそうだな」
一緒にいる時間を重ねれば、より俺たちは恋人らしくなるだろう。
レス子との間に何者も入る隙がないと分かれば、熱しやすく冷めやすい情熱家のマリエッタも波が引くように熱が冷めるはずだ。
マリエッタが俺を諦める日は近いかもしれない。
「次の休み、デートに誘っても?」
「デート!?」
誘われると思ってなかったのか、『デート』という言葉にレス子はかなり驚いた。
「恋人をデートに誘ってはいけないだろうか?」
「そんなことっ……」
カリッと焼けたフレンチトーストにとろりとした黄金色のハチミツがかけられ、フレンチトーストが完成したようだ。
辺りに濃くて甘い香りが広がる。
「嬉しいです」
頬を緩めて頷く彼女に、柄にもなく心が浮き足立つ。
さて、どんな時間を過ごそうか。
霧島の頭の中に、手を繋ぎ、仲良く歩くふたりの姿が易々と浮かんだ。
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