プリンセス登場
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「霧島くんが3 Majestyを抜けるかもしれない」
まさか数時間後にそんなことを聞かされるとは、このときのわたしは思いもしなかった。
いつもと変わらない日常。
お客さまをお迎えして、愛情込めたお料理を提供して「ごちそうさま」と笑顔で帰ってもらう幸せ。
充実した毎日。レストランを切り盛りしながら、時おり考えてしまうのは好きなひとのこと。
例え不可能だとしても、夢見てしまう。
もし、司さんが恋人だったらーーー。
あのロイヤルブルーの瞳がわたしだけの為に微笑んでくれたら、持てる限りの愛を振り絞って全力で愛するのにな。
なんて、どんな世代の女性も虜にしている司さんは、わたしの一方的な愛なんていらないよね。
所詮ファンのひとり。
「どうもありがとう」と爽やかな笑顔で終わる。
司さんに釣り合うような美貌があったらちょっとは希望も持てたのかもしれないけど、とびきり美人ってわけでも人目を引くような容姿でなもない。
しがないレストランのマスターじゃ、司さんから与えれるのは、精一杯愛情込めて作ったご飯食べてもらって「ごちそうさま」の小さな微笑みのみ。
自嘲気味に笑ったとき、カランカランとベルが鳴ってレストランの扉が開き、ハッとした。
咄嗟に時間を見るとそろそろ午後のティータイムだ。
それまでレス子はテーブルの同じところをふきんで何度も拭いていたことに気付いていなかった。
いけない。
仕事中だった。
慌ててお客様様をお出迎えすると、入ってきたのは今さっきまで考えていた司さん本人だった。
「司さん……! いらっしゃい、ませ……」
思わずレス子がちぐはぐな出迎えをしてしまったのは、霧島司の手を取り、見知らぬ女性が現れたからだ。
目を惹くプラチナブロンドの緩やかなロングヘア、コバルトブルーの魅力的な瞳、目鼻立ちの整ったすっきりした輪郭。シルバーグレーのワンピースを着たモデルのような女性をエスコートしていた。
司さんの大きな手の平に、ネイルを施したほっそりした手を乗せている。
見て分かる通り、異国の女性。
しかもかなり魅力的な。
伴って連れてきた女性のことで頭がいっぱいで、身動きすら取れない。
誰……?
司さんが異性と一緒にレストランに来たのは初めてだ。
ショックのままレス子が立ち尽くしていると、霧島が一歩進み出て注意を引いた。
どうやら穴が飽きそうなほど女性のことを見ていたようだ。
「紹介させてくれ。彼女はプリンセス、マリエッタ」
名前を呼び、後ろを振り返って手を引くと高さのあるヒールを履いたマリエッタと呼ばれた彼女がレス子の前に来た。
「ブリュアイランド国のプリンセス、マリエッタよ」
流暢な日本語が綺麗な声で流れてくる。
「プリンセス!?」
「ああ、フランスの南、地中海にある小さな国の第一王女なんだ」
本物のお姫様。
今度はびっくりして見つめていると、霧島がマリエッタの手を離し今度はレス子の手を取って隣に並んだ。
「このレストランでマスターをしている彼女こそ、俺の最愛の彼女、レス子なんだ」
あれ。司さん、緊張してる? 珍しく汗ばんだ手の平に気を取られていてなんて紹介されたのか気づかず、
「あ、どうも。はじめまして」
紹介されて慌てて頭を下げる。
けれど、あれ?
いま司さん、なんていった?
最愛の彼女?
えっ! 誰が!?
プリンセスの登場以上にびっくりして目を大きく見開いたまま、横に立つ司さんの胸、肩、がっしりした首もと、顔へとゆっくり見上げる。
見下ろすロイヤルブルーの瞳がなにか訴えかけている。握る手を少し強めに握られて、聞きたいことはたくさんあるけれど、いまは余計なことを言わない方がいいのかもしれないと気づいた。
我慢して口は閉じているものの、頭のなかはクエスチョンマークだらけだ。
口から聞きたいことが飛び出しそう。
目の前の美しい女性はプリンセスで、わたしが最愛の彼女っていったの!?
どーして!? なんで!!
わたし、いつの間に司さんの彼女に!?
あ、これは夢?
もしかして夢???
ただただこの展開に驚くレス子、彼女の反応をうかがう霧島。互いに見つめあっていると、
「おかしいわね」
マリエッタが違和感に気付いたようだ。
胸の前で腕を組み、疑うように目を細めふたりの様子を見つめている。
「愛するひとに再会したらまず喜びの口付けをするのではなくて?」
「!!」
「!!」
口付け!!
わたしが驚いている側で司さんが身を硬くしたのが、握ったままの手を通して伝わってきた。
「それは……プリンセスの前で失礼を欠くのではと」
霧島がそれとなく交わす。
「あら、愛するひとへの愛情表現を否定するつもりはなくてよ。それとも司、やはりあなた」
「いや」
マリエッタの言葉を交わしきれなかった霧島が手を上げてそれを制した。そのまま霧島の手がレス子の肩に置かれ、飛び上がる彼女を反転させて向き合う形になる。
えっと。
ちょっと、待って。
口付けってキスだよね?
司さんが愛するひとにキス……。
そうこうしている間にも司さんは身を屈めて、端整な顔が近づいてくる。
ひぃえぇぇぇえ!!
心の準備!
色々と心の準備させて!!
レス子の乱れまくりの心情とは違い、霧島のほうは取り乱すことなく顔めがけて頭を下げてきている。
睫毛を半分閉じた霧島の顔が大接近。
まっ、ままままま!!
頬に息遣いを感じるほど迫り、反射的に思い切り目を閉じる。
『すまない。このまま合わせてくれ』
早口で小さく囁かれた言葉に続いて、マリエッタにも聞こえるようにわざと音を立て唇でわたしに触れた。
唇の端、角度によっては唇にキスしたように見えるかもしれない。
ドキドキして離れていく司さんを見上げると、やっぱり取り乱したところはなく落ち着いているように見えた。
「メガネ」
霧島が呟いて、胸ポケットやジャケットのポケットを探り出す。
メガネを探しているようだけれど、探してるメガネはちゃんといつもの定位置にかけてある。
「顔にかかってます……!」
「そうか」
小声で教えると霧島はメガネに手をやり、ホッとしたように小さく息を吐き出した。
もしかしたら思ったより落ち着いてないのかもしれない。
「まぁ、いいわ」
そんなふたりをじっと見ていたマリエッタは興味を失ったのか、プイッと横を向いた。
緊張が解けて体から力が抜ける。どうらやこの場をなんとかやり過ごせたようだ。
ふたりを席に案内して、いつも通り仕事に戻るものの他のお客様の接客をしている間もふたりのことが気になって、気づくとそちらの席を見ていた。
マリエッタのほうは霧島の手を取り、親しげに話しかけている。時折浮かべる意味深な微笑みは誘うように甘く、テーブルを挟んだ反対側にいる霧島へ身を寄せる仕草も見られる。
積極的にアピールしているマリエッタと、言葉を交わしたり相槌を打つものの、霧島のほうはやんわりと距離を置いているようだ。
後ろ髪引かれるような気分を味わいつつも、来店中のお客さまにテーブルにコーヒーを運ぶ。どうもと短いお礼をするのは黒服にサングラスの男性。
黒服?
レストランを見回して黒服にサングラスのいかついお客さまが多いことに気付く。
なにかイベントでもあったのかな……。
レストランの異様な光景も気になるが、特に変な動きがあるわけでもなく、静かにお茶の時間を楽しんでいるから危険なことはなさそうだけど……。結局、気になるのはふたりの様子。つい視線はそちらに向いてしまう。
『すまない。このまま合わせてくれ』
と司さんはいった。
明らかに好意を抱かれている相手に、わたしを恋人と偽ったのは相手が他国のプリンセスでハッキリとした態度が取れないから?
司さんとプリンセスの間になにがあったんだろう。
わたしはこのまま司さんに合わせればいいの?
ううーん、と唸っているとサングラスに黒服の男性一人が席から立ちあがり、マリエッタに近付いた。「失礼致します」と胸に手を当て頭を下げる。
「プリンセス、そろそろお時間です。次のお仕事が待っております」
「もうそんな時間なの?」
明らかにがっかりした様子で立ち上がると、周りの客が一斉に立ち上がっては驚いた。
サングラスに黒服のお客さんが全員立ちあがり、ぞろぞろとマリエッタの後を付いていく。
な、なんなの。
この異様な光景……もしかしてマリエッタのSP!?
「司、見送って」
マリエッタが振り返って手を差し出すと、黒服の群れが割れ、霧島への道が現れる。霧島がすっと立ち上がる間、マリエッタの視線がレス子に注がれた。
上から下までじっくりと注がれた視線は、自分と比べるとなんてちんちくりんなのかしら、といったような気がした。
「レス子、あなたに会えて良かったわ。またお会いしましょう」
「それではまた後で」
レス子に向けた霧島の声に頷くと、何が気に入らないのかマリエッタの足が止まった。
「あなたたち本当にお付き合いしているの?」
不信感から眉を寄せたマリエッタに、霧島と視線を交わしたレス子は困惑顔。
「この国では人前であまり愛情表現はしないものなんだが……」
足の長い霧島は数歩でレス子の元にたどり着き、さっと頬にキスをして戻っていく。
抵抗も混乱もする暇もなく、司さんの唇に頬がさらわれる。
唇の感覚が残る頬に手をやって、様になる長身のふたりが並んで歩いていく。黒服の集団が後に続き、その中にふたりの姿が消えていくのをぼんやり見送った。
まさか数時間後にそんなことを聞かされるとは、このときのわたしは思いもしなかった。
いつもと変わらない日常。
お客さまをお迎えして、愛情込めたお料理を提供して「ごちそうさま」と笑顔で帰ってもらう幸せ。
充実した毎日。レストランを切り盛りしながら、時おり考えてしまうのは好きなひとのこと。
例え不可能だとしても、夢見てしまう。
もし、司さんが恋人だったらーーー。
あのロイヤルブルーの瞳がわたしだけの為に微笑んでくれたら、持てる限りの愛を振り絞って全力で愛するのにな。
なんて、どんな世代の女性も虜にしている司さんは、わたしの一方的な愛なんていらないよね。
所詮ファンのひとり。
「どうもありがとう」と爽やかな笑顔で終わる。
司さんに釣り合うような美貌があったらちょっとは希望も持てたのかもしれないけど、とびきり美人ってわけでも人目を引くような容姿でなもない。
しがないレストランのマスターじゃ、司さんから与えれるのは、精一杯愛情込めて作ったご飯食べてもらって「ごちそうさま」の小さな微笑みのみ。
自嘲気味に笑ったとき、カランカランとベルが鳴ってレストランの扉が開き、ハッとした。
咄嗟に時間を見るとそろそろ午後のティータイムだ。
それまでレス子はテーブルの同じところをふきんで何度も拭いていたことに気付いていなかった。
いけない。
仕事中だった。
慌ててお客様様をお出迎えすると、入ってきたのは今さっきまで考えていた司さん本人だった。
「司さん……! いらっしゃい、ませ……」
思わずレス子がちぐはぐな出迎えをしてしまったのは、霧島司の手を取り、見知らぬ女性が現れたからだ。
目を惹くプラチナブロンドの緩やかなロングヘア、コバルトブルーの魅力的な瞳、目鼻立ちの整ったすっきりした輪郭。シルバーグレーのワンピースを着たモデルのような女性をエスコートしていた。
司さんの大きな手の平に、ネイルを施したほっそりした手を乗せている。
見て分かる通り、異国の女性。
しかもかなり魅力的な。
伴って連れてきた女性のことで頭がいっぱいで、身動きすら取れない。
誰……?
司さんが異性と一緒にレストランに来たのは初めてだ。
ショックのままレス子が立ち尽くしていると、霧島が一歩進み出て注意を引いた。
どうやら穴が飽きそうなほど女性のことを見ていたようだ。
「紹介させてくれ。彼女はプリンセス、マリエッタ」
名前を呼び、後ろを振り返って手を引くと高さのあるヒールを履いたマリエッタと呼ばれた彼女がレス子の前に来た。
「ブリュアイランド国のプリンセス、マリエッタよ」
流暢な日本語が綺麗な声で流れてくる。
「プリンセス!?」
「ああ、フランスの南、地中海にある小さな国の第一王女なんだ」
本物のお姫様。
今度はびっくりして見つめていると、霧島がマリエッタの手を離し今度はレス子の手を取って隣に並んだ。
「このレストランでマスターをしている彼女こそ、俺の最愛の彼女、レス子なんだ」
あれ。司さん、緊張してる? 珍しく汗ばんだ手の平に気を取られていてなんて紹介されたのか気づかず、
「あ、どうも。はじめまして」
紹介されて慌てて頭を下げる。
けれど、あれ?
いま司さん、なんていった?
最愛の彼女?
えっ! 誰が!?
プリンセスの登場以上にびっくりして目を大きく見開いたまま、横に立つ司さんの胸、肩、がっしりした首もと、顔へとゆっくり見上げる。
見下ろすロイヤルブルーの瞳がなにか訴えかけている。握る手を少し強めに握られて、聞きたいことはたくさんあるけれど、いまは余計なことを言わない方がいいのかもしれないと気づいた。
我慢して口は閉じているものの、頭のなかはクエスチョンマークだらけだ。
口から聞きたいことが飛び出しそう。
目の前の美しい女性はプリンセスで、わたしが最愛の彼女っていったの!?
どーして!? なんで!!
わたし、いつの間に司さんの彼女に!?
あ、これは夢?
もしかして夢???
ただただこの展開に驚くレス子、彼女の反応をうかがう霧島。互いに見つめあっていると、
「おかしいわね」
マリエッタが違和感に気付いたようだ。
胸の前で腕を組み、疑うように目を細めふたりの様子を見つめている。
「愛するひとに再会したらまず喜びの口付けをするのではなくて?」
「!!」
「!!」
口付け!!
わたしが驚いている側で司さんが身を硬くしたのが、握ったままの手を通して伝わってきた。
「それは……プリンセスの前で失礼を欠くのではと」
霧島がそれとなく交わす。
「あら、愛するひとへの愛情表現を否定するつもりはなくてよ。それとも司、やはりあなた」
「いや」
マリエッタの言葉を交わしきれなかった霧島が手を上げてそれを制した。そのまま霧島の手がレス子の肩に置かれ、飛び上がる彼女を反転させて向き合う形になる。
えっと。
ちょっと、待って。
口付けってキスだよね?
司さんが愛するひとにキス……。
そうこうしている間にも司さんは身を屈めて、端整な顔が近づいてくる。
ひぃえぇぇぇえ!!
心の準備!
色々と心の準備させて!!
レス子の乱れまくりの心情とは違い、霧島のほうは取り乱すことなく顔めがけて頭を下げてきている。
睫毛を半分閉じた霧島の顔が大接近。
まっ、ままままま!!
頬に息遣いを感じるほど迫り、反射的に思い切り目を閉じる。
『すまない。このまま合わせてくれ』
早口で小さく囁かれた言葉に続いて、マリエッタにも聞こえるようにわざと音を立て唇でわたしに触れた。
唇の端、角度によっては唇にキスしたように見えるかもしれない。
ドキドキして離れていく司さんを見上げると、やっぱり取り乱したところはなく落ち着いているように見えた。
「メガネ」
霧島が呟いて、胸ポケットやジャケットのポケットを探り出す。
メガネを探しているようだけれど、探してるメガネはちゃんといつもの定位置にかけてある。
「顔にかかってます……!」
「そうか」
小声で教えると霧島はメガネに手をやり、ホッとしたように小さく息を吐き出した。
もしかしたら思ったより落ち着いてないのかもしれない。
「まぁ、いいわ」
そんなふたりをじっと見ていたマリエッタは興味を失ったのか、プイッと横を向いた。
緊張が解けて体から力が抜ける。どうらやこの場をなんとかやり過ごせたようだ。
ふたりを席に案内して、いつも通り仕事に戻るものの他のお客様の接客をしている間もふたりのことが気になって、気づくとそちらの席を見ていた。
マリエッタのほうは霧島の手を取り、親しげに話しかけている。時折浮かべる意味深な微笑みは誘うように甘く、テーブルを挟んだ反対側にいる霧島へ身を寄せる仕草も見られる。
積極的にアピールしているマリエッタと、言葉を交わしたり相槌を打つものの、霧島のほうはやんわりと距離を置いているようだ。
後ろ髪引かれるような気分を味わいつつも、来店中のお客さまにテーブルにコーヒーを運ぶ。どうもと短いお礼をするのは黒服にサングラスの男性。
黒服?
レストランを見回して黒服にサングラスのいかついお客さまが多いことに気付く。
なにかイベントでもあったのかな……。
レストランの異様な光景も気になるが、特に変な動きがあるわけでもなく、静かにお茶の時間を楽しんでいるから危険なことはなさそうだけど……。結局、気になるのはふたりの様子。つい視線はそちらに向いてしまう。
『すまない。このまま合わせてくれ』
と司さんはいった。
明らかに好意を抱かれている相手に、わたしを恋人と偽ったのは相手が他国のプリンセスでハッキリとした態度が取れないから?
司さんとプリンセスの間になにがあったんだろう。
わたしはこのまま司さんに合わせればいいの?
ううーん、と唸っているとサングラスに黒服の男性一人が席から立ちあがり、マリエッタに近付いた。「失礼致します」と胸に手を当て頭を下げる。
「プリンセス、そろそろお時間です。次のお仕事が待っております」
「もうそんな時間なの?」
明らかにがっかりした様子で立ち上がると、周りの客が一斉に立ち上がっては驚いた。
サングラスに黒服のお客さんが全員立ちあがり、ぞろぞろとマリエッタの後を付いていく。
な、なんなの。
この異様な光景……もしかしてマリエッタのSP!?
「司、見送って」
マリエッタが振り返って手を差し出すと、黒服の群れが割れ、霧島への道が現れる。霧島がすっと立ち上がる間、マリエッタの視線がレス子に注がれた。
上から下までじっくりと注がれた視線は、自分と比べるとなんてちんちくりんなのかしら、といったような気がした。
「レス子、あなたに会えて良かったわ。またお会いしましょう」
「それではまた後で」
レス子に向けた霧島の声に頷くと、何が気に入らないのかマリエッタの足が止まった。
「あなたたち本当にお付き合いしているの?」
不信感から眉を寄せたマリエッタに、霧島と視線を交わしたレス子は困惑顔。
「この国では人前であまり愛情表現はしないものなんだが……」
足の長い霧島は数歩でレス子の元にたどり着き、さっと頬にキスをして戻っていく。
抵抗も混乱もする暇もなく、司さんの唇に頬がさらわれる。
唇の感覚が残る頬に手をやって、様になる長身のふたりが並んで歩いていく。黒服の集団が後に続き、その中にふたりの姿が消えていくのをぼんやり見送った。
1/1ページ