ときめきクリスマス
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夜、閉店後。
吐く息が白くなる寒さに、コートの襟足を握りしめつつ身を竦めながら目的の場所に急ぐ。
見慣れた後ろ姿を見つけ、会う予定だったその人を待たせてしまったことに胸が痛んだ。
「ごめんなさい!」
待ち合わせの時間を過ぎ、申し訳なさいっぱいで頭を下げる。
「お店の方は平気?」
トレンチコートがよく似合うすらりとした長身。身を翻し枯れ草色の前髪を横に流した3 Majestyのリーダー霧島司が気遣う。
どれくらい先に来て、寒い中待ってくれていたのだろう?
いつみても悠然としていて完璧な王子さまをイメージさせる立ち振舞い。
少しでも寒そうにしてくれたら心配だって出来るのに。
見上げる司さんの瞳に、港の公園に隣接された遊園地のイルミネーションが映る。今日は仕事終わりにそのまま待ち合わせの場所に来たのか、メガネをかけていなかった。
「はい。全て終らせて来ました!」
「そうか。いや、こちらこそお店まで迎えに行けば良かったものを、わざわざこんなところに呼び出してすまない」
気にしないでください、という意味を込めてわたしは首を振った。
「クリスマスという特別な日に、君とこうして外で会いたかった」
キラキラ夜の花のように咲く、カラフルなイルミネーションに照らされたロイヤルブルーの瞳が笑顔に輝く。
「俺のワガママに付き合ってくれてありがとう。レス子、メリークリスマス」
「メリークリスマス! 司さん」
わたしも笑顔で返すと、司さんが不意に真剣な表情を浮かべた。
「もうひとつワガママをいってもいいだろうか?」
「もうひとつ、ですか?」
首を傾げると思いもよらなかった言葉が返ってきた。
「君を抱きしめたい」
「えっでも、ここにはたくさんのひとが」
こうしている間も、ロマンチックなクリスマスの夜を求め、遊園地に来たたくさんの恋人たちが目に入る。
「皆、夜の遊園地を楽しんでいる恋人ばかりで、こちらなど見ていないさ」
確かに、恋人たちが見つめる視線の先は色とりどりのイルミネーションか、隣を歩く相手のようだ。
少しの戸惑いのあと、照れを感じながらも頷く。
「……はい」
一歩、一歩とゆっくり歩みを進める司さんが目の前に立つ。見上げるわたしは、そっとその大きな腕に包まれた。
ふたつの影がひとつに重なる。密着したコートの中から伝わってくるぬくもりは、凍える寒さから守られているように暖かい。
司さんからはフワッと爽やかないい香りがした。
「レス子。可能なら、このまま君をどこかへ浚ってしまいたいな」
「え?」
さらりととんでもないことをいわれた気がした。
本心なのだろうか?
不思議に思っていると、司さんが自嘲気味に笑う。
「いや、それでは君が来るのを待っているシンやカイトを裏切ってしまうことになる」
そうだ。
今宵は3 Majestyの皆とクリスマスパーティー。
「行こうか」
離れてしまった体温を名残惜しく感じていたら、優しく微笑む司さんの大きな手のひらが差し出された。
そのさりげなさは、プリンセスをエスコートする王子さまそのもの。
そして、わたしは自然にその手に手を絡ませたのだった。
おしまい
吐く息が白くなる寒さに、コートの襟足を握りしめつつ身を竦めながら目的の場所に急ぐ。
見慣れた後ろ姿を見つけ、会う予定だったその人を待たせてしまったことに胸が痛んだ。
「ごめんなさい!」
待ち合わせの時間を過ぎ、申し訳なさいっぱいで頭を下げる。
「お店の方は平気?」
トレンチコートがよく似合うすらりとした長身。身を翻し枯れ草色の前髪を横に流した3 Majestyのリーダー霧島司が気遣う。
どれくらい先に来て、寒い中待ってくれていたのだろう?
いつみても悠然としていて完璧な王子さまをイメージさせる立ち振舞い。
少しでも寒そうにしてくれたら心配だって出来るのに。
見上げる司さんの瞳に、港の公園に隣接された遊園地のイルミネーションが映る。今日は仕事終わりにそのまま待ち合わせの場所に来たのか、メガネをかけていなかった。
「はい。全て終らせて来ました!」
「そうか。いや、こちらこそお店まで迎えに行けば良かったものを、わざわざこんなところに呼び出してすまない」
気にしないでください、という意味を込めてわたしは首を振った。
「クリスマスという特別な日に、君とこうして外で会いたかった」
キラキラ夜の花のように咲く、カラフルなイルミネーションに照らされたロイヤルブルーの瞳が笑顔に輝く。
「俺のワガママに付き合ってくれてありがとう。レス子、メリークリスマス」
「メリークリスマス! 司さん」
わたしも笑顔で返すと、司さんが不意に真剣な表情を浮かべた。
「もうひとつワガママをいってもいいだろうか?」
「もうひとつ、ですか?」
首を傾げると思いもよらなかった言葉が返ってきた。
「君を抱きしめたい」
「えっでも、ここにはたくさんのひとが」
こうしている間も、ロマンチックなクリスマスの夜を求め、遊園地に来たたくさんの恋人たちが目に入る。
「皆、夜の遊園地を楽しんでいる恋人ばかりで、こちらなど見ていないさ」
確かに、恋人たちが見つめる視線の先は色とりどりのイルミネーションか、隣を歩く相手のようだ。
少しの戸惑いのあと、照れを感じながらも頷く。
「……はい」
一歩、一歩とゆっくり歩みを進める司さんが目の前に立つ。見上げるわたしは、そっとその大きな腕に包まれた。
ふたつの影がひとつに重なる。密着したコートの中から伝わってくるぬくもりは、凍える寒さから守られているように暖かい。
司さんからはフワッと爽やかないい香りがした。
「レス子。可能なら、このまま君をどこかへ浚ってしまいたいな」
「え?」
さらりととんでもないことをいわれた気がした。
本心なのだろうか?
不思議に思っていると、司さんが自嘲気味に笑う。
「いや、それでは君が来るのを待っているシンやカイトを裏切ってしまうことになる」
そうだ。
今宵は3 Majestyの皆とクリスマスパーティー。
「行こうか」
離れてしまった体温を名残惜しく感じていたら、優しく微笑む司さんの大きな手のひらが差し出された。
そのさりげなさは、プリンセスをエスコートする王子さまそのもの。
そして、わたしは自然にその手に手を絡ませたのだった。
おしまい
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