不器用なキス
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帰り道、何もいわず足早に前を歩く魁斗さんの背中を追いかけ、寮に着いた。
鍵を開け部屋のドアを開くと、手を引かれ半ば強引に玄関に引き込まれる。
「……‼」
びっくりしたわたしを余所に魁斗さんは素早く鍵を掛け、ドアの横の電気を付けた。くるりとこちらに向き直り、顔を挟むように彼の両手がドアに押しつけられた。わたしの身長に合わせるように頭を下げ、いきなりキスをされる。
「……っ!」
勢い良くぶつかった唇に、痛みが走った。
「あっ……ごめ、ごめん」
やっと聞けた魁斗さんの声は謝罪の言葉だった。
突然の強引なキスに驚きの表情を浮かべるわたしを見て、しまった、と眉間を寄せて険しい表情のまま目をつぶるも、再び開いたピジョンブラッドの瞳は怒りにキラキラと輝いていた。
「あんまりシンくんや霧島くんと仲良くすんな。つか、楽しそうに笑うな。なんか……ムカつくだろ」
プイとよそを向いた彼の不貞腐れた横顔。
「もしかして嫉妬……?」
浮かんだ疑問に、
「ばっそんなわけ……っ!」
魁斗さんは全力で否定しかかって、止めた。そしてやり場のない気持ちも一緒に吐き出すように大きくため息をついた。
「はぁ……そうだよ。かっこ悪。俺……レス子のことになると余裕なくなる」
帰りがけ、仕事が残るふたりと話した後で急に不機嫌になったのは、妬いていたから……。
どうして怒っていたのか分からなかったけど、理由が妬いていたからだと分かると、怖いよりも喜びのほうが胸を締めた。
「なんだよその締まりのない顔。あ……血が出てる」
魁斗さんが呟き、その視線がわたしの唇に注がれる。
「ごめん、痛かったよな」
ドアについていた片手が顎に掛り、上を向かせられる。
じんじんと痺れる痛みに、
「あ、待て」
唇を舐めようと舌を出したところで止められた。
「いま、俺がやるからーーー」
俺がやるって、なにを!?
唇の血を拭いてくれるのだろうか?
されるままに待っていると、魁斗さんの頭が下がり、唇が近づく。
頬に吐息を感じ、間近に迫る大好きな人の整った顔にドキドキと動悸が早くなった。
半分閉じた瞼に、ルビーの瞳が隠れる。
「………」
熱を感じるほど至近距離にある彼の存在に目を開けていられなくなって、閉じる。
「ーーー!?」
唇が温かく濡れたもので撫でられる感覚に、背中を甘い痺れが走った。
反射的に目を開けると魁斗さんの舌が、わたしの唇を優しく舐めていた。
「……っ」
「逃げんなって」
反射的に身をよじった足がドアにぶつかった。すると魁斗さんの体が押し付けられ、身動きがとれなくなる。顎を掴んでいないほうの手が、逃がさないようにと腰に回った。
「で、でも」
「まだ、終わってない……」
今まで聞いたことのない熱を含んだ甘い声が、耳から侵入してきて思考を奪う。
ど、どうしよう。
困っていると、再び魁斗さんの舌が優しく唇を舐めはじめた。
それだけで痛みを感じていた唇の感覚なんてどっかへ飛んでいってしまった。それよりいまは体が甘い痺れに襲われている。
わたしたちは付き合ってまだ数ヶ月。
唇を合わせるだけのキスしかしていない仲なのに、これは。
押し退けようと魁斗さんの胸に手を置くも、力が入らない。
「魁斗さん、もう大丈……んっーーー」
止めようと開いた唇に、不意に魁斗さんの舌が入って来た。全くの偶然。
舌を噛まないように、注意深く唇でそっと挟むと魁斗さんが甘い呻き声を上げ、びくりと体を震わせた。
そして離れていくかと思われた舌が、そのまま口内を探り始めた。
「……!」
敏感な口の中を探られて、体が熱くなっていく。冷静な判断が出来なくなって、されるがままに受け入れていると次第に息が乱れていった。貪るようなキスを続けていた魁斗さんが息を乱しながら離れ、
「いいのか……?」
掠れた声で問いかけられる。
濡れた唇で浅く息を繰り返し見上げた。一ミリもまともなことが考えられなくなっていた。思考回路は溶けてしまい、ぼうっとした頭でなんて答えたらいいのか分からない。
「そんな潤んだ瞳されたら……我慢出来なくなるだろ」
触れたら火傷してしまいそうな欲望の炎を宿した彼の瞳から目が離せない。
「そんな……」
「誘ってるようにしか見えない」
顎に添えていた親指がわたしの唇を優しくゆっくり撫でる。
まるで愛撫みたいな仕草に、涙をにじませた瞳でうっとりしてしまう。
「さ、誘ってなんか……」
否定する声に力が入らない。
「なぁ、レス子も舌、絡めろ」
再び、キスで唇が塞がれる。遠慮も戸惑いもなく、舌が滑り込んできてわたしの舌に絡んできた。
魁斗さんを押し退けようと、胸に当てていた手はいつしかそのシャツをギュッと握り締めている。
お前からも。
そういうように、舌で舌を突っつかれる。
勇気を出して魁斗さんの舌を追いかけ、絡める。
そこからはもう、お互いのことしか考えられなくなった。魁斗さんが与えてくれる快感に、わたしが魁斗さんに与える快感に没頭した。
「もっと……っ」
ねだられるままに応える。
乱れたふたりの息遣い。時折互いの口から漏れるのは甘い呻き声。そしてキスの度に紡ぎだされる濡れた音。
玄関に響くのは恋人たちの奏でるメロディ。
ふたりは飽くことなく、相手の唇を求め合った。
おわり
鍵を開け部屋のドアを開くと、手を引かれ半ば強引に玄関に引き込まれる。
「……‼」
びっくりしたわたしを余所に魁斗さんは素早く鍵を掛け、ドアの横の電気を付けた。くるりとこちらに向き直り、顔を挟むように彼の両手がドアに押しつけられた。わたしの身長に合わせるように頭を下げ、いきなりキスをされる。
「……っ!」
勢い良くぶつかった唇に、痛みが走った。
「あっ……ごめ、ごめん」
やっと聞けた魁斗さんの声は謝罪の言葉だった。
突然の強引なキスに驚きの表情を浮かべるわたしを見て、しまった、と眉間を寄せて険しい表情のまま目をつぶるも、再び開いたピジョンブラッドの瞳は怒りにキラキラと輝いていた。
「あんまりシンくんや霧島くんと仲良くすんな。つか、楽しそうに笑うな。なんか……ムカつくだろ」
プイとよそを向いた彼の不貞腐れた横顔。
「もしかして嫉妬……?」
浮かんだ疑問に、
「ばっそんなわけ……っ!」
魁斗さんは全力で否定しかかって、止めた。そしてやり場のない気持ちも一緒に吐き出すように大きくため息をついた。
「はぁ……そうだよ。かっこ悪。俺……レス子のことになると余裕なくなる」
帰りがけ、仕事が残るふたりと話した後で急に不機嫌になったのは、妬いていたから……。
どうして怒っていたのか分からなかったけど、理由が妬いていたからだと分かると、怖いよりも喜びのほうが胸を締めた。
「なんだよその締まりのない顔。あ……血が出てる」
魁斗さんが呟き、その視線がわたしの唇に注がれる。
「ごめん、痛かったよな」
ドアについていた片手が顎に掛り、上を向かせられる。
じんじんと痺れる痛みに、
「あ、待て」
唇を舐めようと舌を出したところで止められた。
「いま、俺がやるからーーー」
俺がやるって、なにを!?
唇の血を拭いてくれるのだろうか?
されるままに待っていると、魁斗さんの頭が下がり、唇が近づく。
頬に吐息を感じ、間近に迫る大好きな人の整った顔にドキドキと動悸が早くなった。
半分閉じた瞼に、ルビーの瞳が隠れる。
「………」
熱を感じるほど至近距離にある彼の存在に目を開けていられなくなって、閉じる。
「ーーー!?」
唇が温かく濡れたもので撫でられる感覚に、背中を甘い痺れが走った。
反射的に目を開けると魁斗さんの舌が、わたしの唇を優しく舐めていた。
「……っ」
「逃げんなって」
反射的に身をよじった足がドアにぶつかった。すると魁斗さんの体が押し付けられ、身動きがとれなくなる。顎を掴んでいないほうの手が、逃がさないようにと腰に回った。
「で、でも」
「まだ、終わってない……」
今まで聞いたことのない熱を含んだ甘い声が、耳から侵入してきて思考を奪う。
ど、どうしよう。
困っていると、再び魁斗さんの舌が優しく唇を舐めはじめた。
それだけで痛みを感じていた唇の感覚なんてどっかへ飛んでいってしまった。それよりいまは体が甘い痺れに襲われている。
わたしたちは付き合ってまだ数ヶ月。
唇を合わせるだけのキスしかしていない仲なのに、これは。
押し退けようと魁斗さんの胸に手を置くも、力が入らない。
「魁斗さん、もう大丈……んっーーー」
止めようと開いた唇に、不意に魁斗さんの舌が入って来た。全くの偶然。
舌を噛まないように、注意深く唇でそっと挟むと魁斗さんが甘い呻き声を上げ、びくりと体を震わせた。
そして離れていくかと思われた舌が、そのまま口内を探り始めた。
「……!」
敏感な口の中を探られて、体が熱くなっていく。冷静な判断が出来なくなって、されるがままに受け入れていると次第に息が乱れていった。貪るようなキスを続けていた魁斗さんが息を乱しながら離れ、
「いいのか……?」
掠れた声で問いかけられる。
濡れた唇で浅く息を繰り返し見上げた。一ミリもまともなことが考えられなくなっていた。思考回路は溶けてしまい、ぼうっとした頭でなんて答えたらいいのか分からない。
「そんな潤んだ瞳されたら……我慢出来なくなるだろ」
触れたら火傷してしまいそうな欲望の炎を宿した彼の瞳から目が離せない。
「そんな……」
「誘ってるようにしか見えない」
顎に添えていた親指がわたしの唇を優しくゆっくり撫でる。
まるで愛撫みたいな仕草に、涙をにじませた瞳でうっとりしてしまう。
「さ、誘ってなんか……」
否定する声に力が入らない。
「なぁ、レス子も舌、絡めろ」
再び、キスで唇が塞がれる。遠慮も戸惑いもなく、舌が滑り込んできてわたしの舌に絡んできた。
魁斗さんを押し退けようと、胸に当てていた手はいつしかそのシャツをギュッと握り締めている。
お前からも。
そういうように、舌で舌を突っつかれる。
勇気を出して魁斗さんの舌を追いかけ、絡める。
そこからはもう、お互いのことしか考えられなくなった。魁斗さんが与えてくれる快感に、わたしが魁斗さんに与える快感に没頭した。
「もっと……っ」
ねだられるままに応える。
乱れたふたりの息遣い。時折互いの口から漏れるのは甘い呻き声。そしてキスの度に紡ぎだされる濡れた音。
玄関に響くのは恋人たちの奏でるメロディ。
ふたりは飽くことなく、相手の唇を求め合った。
おわり
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