賢者の石
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もうすぐホグワーツに到着するという車内放送を聞き、ルイスとソフィアは顔を見合わせる。そっとコンパートメントから顔を出すと通路には沢山の生徒達が服を着替え、待ちきれないと言ったように既にそわそわとしているのが見えた。
「まいったな…服はハリー達がいるコンパートメントだよ」
ルイスは呟き、ソフィアも頷いた。すでにジョージ達はホグワーツの制服に身を包んでいる。今からこの人の群れの中に入り目的のコンパートメントに行くのは少し覚悟がいる事だった。
「このままホグワーツに行ったら間違いなく、注目の的になるわね」
「仕方ない…行こうか」
2人はジョージ達に別れを告げ、覚悟が決まった顔で扉を開けると人の群れを押し分け謝罪しながら目的地へ急いだ。
「──はぁ!やっとついた!」
群衆に揉みくちゃにされた2人は乱れた髪を手で撫で、はあはあと荒い呼吸を整えた。
すでにハリーとロンは服を着替え終わり、まだ私服でいる2人を見て驚き、自分のことのように慌てた。
「ルイス!ソフィア!もう列車が停まりそうだよ、早く着替えなきゃ!」
「うん、わかった!」
2人は荒くなった呼吸を抑え、すぐに着替えにようと上着に手をかける。
「うわっ!」
「ちょ、ちょっと待ってソフィア!」
ハリーとロンは上擦った声で焦りながらばっと視線を逸らした。
何の躊躇いも無く服を脱いだソフィアのその白い腹をちらりと見てしまった2人はロンの髪色のように顔を赤く染めた。
「…あ、ごめんなさいね?ちょっとだけ後ろを向いててもらえるかしら」
ソフィアはいつもルイスと共に行動している、それこそ、いつも、だ。
風呂に入る時だって何も考えず一緒に湯船に浸かっていた。幼い頃からそうだったため、男女として成長したとしても、2人の間に恥じらいは生まれなかった。ついその癖で何も考えず服を着替えようとしたが、ルイス以外の男の子の前で着替えるのは常識的に考えると──少し、まずいのだろう。
「出て行くから!」
ハリーとロンは声を揃えて叫ぶようにいうと、わたわたと扉を開けすぐに出ていった。
ぴしゃりと強めに締められた扉を見た2人は少しだけ笑ってしまった。
2人も新品のホグワーツの制服に身を包む。ネクタイの色は新入生を示す黒だった。はやく、お揃いのネクタイが欲しい、そう2人は思った。
「おまたせ!」
「さあ、行こう!」
ルイスとソフィアはまだ頬を少し赤くしながら通路で待っていたハリーとロンにそう声を掛ける、4人は人の群れの中に混じり、ざわざわと期待と興奮に満ちた声を聞くうちに自然と4人の表情も他の新入生と同じく少し緊張したものになって行く。
列車から降りると、そこは4人が想像していたような豪華な場所では無く、寂れた暗いプラットホームだった。目の前にホグワーツがあると思っていた生徒たちはキョロキョロとあたりを見渡し不安げに顔を見合わせた。
だが、新入生の自分達とは違い、上級生達はなんの不安も抱かず楽しげに話しながら悩まず進んでいく。きっとここから徒歩か、何かに乗ってホグワーツに向かうのだろう。
「イッチ年生!イッチ年生はこっち!ハリー!元気か?」
突如大きな声がプラットホームに響いた。ルイスとソフィアは自分の頭上高くから聞こえてきた声に驚き、上を見上げる。
ルイスとソフィアを足してもまだ大きな人が新入生を誘導する為に手を振っていた。
こんなに大きな人は見たことが無い、2人は目を輝かせ巨人──ハグリッドに近づいた。
「さあついて来いよ、足下に気をつけろ。いいか!イッチ年生ついてこい!」
2人はハグリッドと話したかったが、自分の半分もない子供が足元でうろうろとしている事にハグリッドは気づかない、そんな事よりも彼はダンブルドアから任された一年生を無事に届けるという任務で頭がいっぱいだった。
「残念!気付いてないわ」
「忙しそうだね、まぁホグワーツに居るなら会えるさ!僕たちもついていこう」
2人は残念さを言葉に滲ませながらも気を取り直し他の生徒と同様にハグリッドの後ろをついて行く。その中で1人足元をキョロキョロと見て何かを探すように歩くネビルに気付き、ルイスはそっと駆け寄りその落ち込む肩を叩いた。ネビルの隣にはハーマイオニーがちらちらと彼を気遣うように見ている。
「ネビル!まだトレバーは見つかってない?」
「うん…」
「ルイス、あのヒキガエルチョコの大群見た?どうも同じ一年生がやったらしいの!まさかホグワーツに行く前にあんな魔法使える子が居るなんて!もっと勉強するべきだったわ…どうしましょう…」
「ソフィアって子がトレバーを預かってるみたいなんだけど…誰か知らない?」
ネビルは落ち込んだままため息混じりに言い、ハーマイオニーはぶつぶつと「まぁあんな悪戯に魔法を使うなんてどうかと思うけど」と呟きながらもソフィアの魔法の凄さに感心しているようだった。
ルイスは自分の隣に居るその話題の中心であるソフィアを見た。
ソフィアは嬉しそうに笑い、どこか悪戯っぽくローブのポケットからヒキガエルを取り出す。
「トレバー!…じゃあ君が…!」
「ええ、私がソフィアよ!」
「まぁ!あなたがあの魔法を使ったの?凄いわ!…でも悪戯はちょっと…もっと魔法は有効に使うべきよ」
「そう?トレバーはちゃんとこの子の手元に帰ってきたんだし、有効な活用じゃないかしら?」
咎めるようなハーマイオニーの言葉にソフィアはさらりと言いかえす、ソフィアの言葉も最もだったが、ハーマイオニーは眉をぐっと顰め「でも…だからといって…」と更に言葉を探していた。
「ソフィア・プリンスよ、2人はルイスを知ってるのよね?わたしは双子の妹なの」
「ネビル・ロングボトムだよ、本当にありがとう!」
「…ハーマイオニー・グレンジャーよ」
まだ納得の行っていないハーマイオニーは、目に涙を浮かべ何度も感謝を述べるネビルとは対照的にやや冷めた言葉でそっけなくソフィアに名前を名乗った。
ソフィアはちょっとだけムッとしたようだったが、この子は規律を守る事を良しとしているのだ、まぁ大多数はそうだろう、自分達が少しズレているだけで。
そのまま4人は人の波に流されるままに大きな黒い湖のほとりに出た。急に開けた視界の先に見えるのは高い山と、そして壮大な城だった。あれがホグワーツ城。誰もが歓声を上げその城を見つめる。いよいよ始まるのだ、皆が心を弾ませた。
「四人ずつボートに乗って!」
ハグリッドのその声に、ネビルとハーマイオニー、ルイス、ソフィアが同じボートに乗り込んだ。
ルイスとソフィアもまた、胸を期待でいっぱいにして揺れるボートの上からホグワーツ城を見つめていた。
これから起こるだろう想像もつかない輝かしい日々、そして、そこで自分達の到着を待っているだろう父親を思い、顔を合わせ嬉しそうにはにかんだ。
一年生を乗せたボートは1人でに船付き場に留まる、全員がボートから降り、ハグリッドに続いてゴツゴツとした大きな岩の路を登る、背の低いルイスとソフィアは必死になりながらみんなの後をついていった。
「も、もうちょっと整備してくれないかしら…!」
「っていうか…汽車…ボート…徒歩って…!魔法でなんとかすればいいのに!」
魔法族の者なら皆が思っただろう当然の疑問をルイスはぜいぜい言いながら代弁する。
一年生達は額に滲んだ汗を拭きながら巨大な樫の木の扉の前に集まる。ハグリッドは一年生が全員揃っている事を確認して大きな握り拳を振り上げ、城の扉を3回叩いた。