賢者の石
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2人は箒をとりあえず傍に起き、プレゼントを開ける作業を再開させていたが、フクロウが窓を突く音にぱっと弾かれたように立ち上がると何処か緊張した面持ちで顔を見合わせ、足速に窓の側に向かいフクロウが持っている手紙を真剣な面持ちで見つめた。
セブルスもまた、誕生日に届く手紙の意味をよく知っていた為、静かに2人を見つめた。
「「ホグワーツからの手紙!!」」
2人は声を揃えて叫び──フクロウはその声に驚き翼を広げた──フクロウが持っていた二通の手紙を手に取る。緑色のキラキラとした文字で住所が書かれ、ホグワーツのエンブレムが記されている。
だが、2人はそこに書かれている名前を見て、眉を顰めた。
「…ルイス…プリンス?」
「ルイスのも?私のも、ソフィア・プリンスになっているわ…間違って届いたの?」
2人は困惑し、手紙に書かれた名前と住所を何度も見た。住所は間違っていない、名前もだ、ただファミリーネームだけが異なっていた。
「父様…これ、…どうして?」
2人は不安げに目を揺らせセブルスの元に駆け寄り、手紙を見せた。セブルスは2人を安心させるために目線を合わせ、2人の肩を優しく掴む。
「…本来、教師の子どもはホグワーツに通う事を許されない」
「えっ…そうなの?」
「そんな…知らなかったわ…」
2人は驚き顔を見合わせる。
「…ここに、イルヴァーモーニー魔法魔術学校の入学許可証もある。アメリカにある、ホグワーツと似た良い学校だと聞いている」
セブルスはローブから二通の手紙を取り出し2人にそれぞれ手渡した。
ホグワーツの手紙とよく似たその手紙に書かれている名前は、ルイス・スネイプ。ソフィア・スネイプ宛であり、名前に間違いは無い。
2人は二つの学校から届いた手紙の真意が分からず、首を傾げていた。
「…ホグワーツに通うのであれば…私が父親であると、知られてはならない。それが約束出来るのであれば…ダンブルドア校長は特例として、入学を許可するとの事だ」
教師の子どもが入学してしまえば、どれだけ親が他の生徒と同じように接し、特別扱いするつもりはないとしても、周りの生徒は納得しないだろう。例えば、授業で加点されたとして、それが公平的な加点であっても、そう思わない者は必ず現れる。
学舎は全ての者に公平で無ければならないのだ。
2人はセブルスの言いたい事を理解した。
親子だとバレてはならない。きっと父は子どもだからといって贔屓する事はないだろう。
「…もし、バレたら…どうなるの?」
「…ホグワーツを退学し、別の魔術学校に編入する事となるだろう。…私としては、ホグワーツに来るより…イルヴァーモーニーへ入学する事を勧める」
セブルスは、2人が7年間も隠し通せるとは思ってはいない、もちろん、約束は守る子どもだと思っている。だがそれでもどこから秘密がバレるかは分からない。そうなったとき友人と離れ、ようやく慣れた学生生活をまた初めからやり直す事となる。辛い思いをするのは自分ではない、2人なのだ。
それともう一つ、ホグワーツに入学して欲しくない理由がセブルスにはあった。
あの、憎いポッターの息子、ハリー・ポッターが入学する。出来れば2人とハリーを会わせたくないと考えていた。
しかし、2人は何故それ程にセブルスがジェームズを憎み、恨んでいるのかは知る由もない。セブルスも、また言うつもりは──…言う決心は今までつかなかった。
2人はセブルスの真剣な目を見て、ちらりと顔を見合わせた。双子である彼らは言葉を交わさずとも、お互いの思いを理解していた。
「「ホグワーツで学びたい」」
はっきりとした意志で2人は同時に答えた。
セブルスは暫く無言だったが、諦めたように小さくため息をこぼし、少しだけ2人に微笑んでみせた。
「…わかった。イルヴァーモーニーへは断りの手紙を送ろう。…必ず、親子だとバレてはいけない。…誓えるか?」
「もちろんだよ!僕たち大切な約束は絶対に守るから!」
「そうよ父様!安心して!」
2人は自信満々に告げ、胸を張った。
「でも、プリンスって…何なの?」
「…私の母方の性だ」
「と言うことは、お婆様の?…プリンスねぇ…」
セブルス・プリンス。…王子様?
2人は王子様の格好をする父を想像し、同時に吹き出し、腹を押さえて笑った。
2人はセブルスを父だと言えない事は残念だと思っていたが、それでもホグワーツに行きたかった。父親から魔法薬学を学ぶのをずっと心待ちにしていたし、友人のドラコもいる。それに…たまにしか会えなかった父親と、毎日会えるのだ。7年間関係を偽ることの見返りにしては十分な物だと2人は笑った。
こうして、ルイス・スネイプは、ルイス・プリンスとして。ソフィア・スネイプは、ソフィア・プリンスとして、ホグワーツの入学が許可されたのだった。
ホグワーツに通い続ける為の約束はただ一つ。
──セブルス・スネイプと親子だと、バレてはいけない。