屈折
空が綺麗だ。
青々と、真っ白な雲がひとつもない、残暑が残るこの季節には少し似合わない空。
そして季節以上に似合わない建物がちらほらと視線に入ってくる。とても高いビルたち。わたしの素敵な空を邪魔するんじゃねぇ。いや、わたしのじゃないけど。頭の中で自分にツッコミを入れながら手に持ってるスマートフォンで空を撮る。
パシャリ。パシャリ。
角度をああでもないこうでもないと、ベストな写真を記録に残すべく連写に近い速度でシャッターボタンを押す。わたしの周りを歩いてる人達は、わたしなんかに見向きもしない。これが都会ってものか。ちらりと辺りを見回す。こんなに空が綺麗なのに、上を向いてる人も、下を向いてる人もいなく、ただただ直線に向かってみんなは突き進んで行く。寂しい人間達。この人たちを撮ってもなんの意味もない。心が暖まらない。まあ撮ったら盗撮になっちゃうからそもそも撮らないんだけれど。
カメラモードの設定を1回解除して今の時間を見る。15時17分。
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