無邪気な子供たちの声と美味しそうな夕飯の匂い
穏やかさと優しさで溢れているものの何処か悲しい気持ちにさせてくれるこの静かな住宅街は


もうすぐ終わらせようとしてる【私】の世界。





『…誰？』

『名乗る必要もない。お前がアヤか。』



死の天使でも死神でもないのはすぐにわかった

目の前に現れたのは経典に載っている
決して会いたくはないと思っていたバージルという魔界最強の悪魔。



『…だったらなんなの。私もう【逝く】から』

『望んだ世界を創り出すとは、さすが強い魔力だ。』

『あなたは望んでないわ？』

いつものように悪魔が魔力を奪いに来ただけなんだと冷たく返答すれば喉元に刀の先があてがわれる。


『…好きにして』


私は…
恋敗れて生きることに絶望した魔女。

強い魔力があっても相手の心を操ることもできず失恋に立ち直れず

今まさに全てを終わりにさせようとしている。



『呆気ない最期だな』

『いいえ、最期に美しい悪魔バージルに殺されるなら私の魔女生活幸せだったのかもね』


目の前の悪魔は狂気を含んだ冷たい笑みを投げかけると刀でドレスの胸元を引き裂いた。



『ならばアヤの望みどおり、好きにしてやろう』


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出会いは突然。