短編。
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先を行く彼の影を踏むように後ろを歩けば
霞んだ海の遠くを行き交う駆逐艦が見えた。
港を見渡せるこの丘も海も一面が夕陽に染められて、まるで赤いビードロのよう。
『バージルさん。』
名前を呼んでも歩みを止めることはない。
いつもそう、彼は冷酷で淡々としている。
『何も言わずに行ってしまわれるのですか?』
着物の裾を力一杯握りしめ、声と肩を震わせながら大きな声を発すると彼は歩みを止めて振り返った。
『ここに長居する気はない。』
予想どおりの返答に拳も震えてしまう。
このままでは彼は何処か遠くへ行ってしまう
それならいっそのこと
私も。
『お願いです、私も連れていってください。』
暫くの沈黙のあと、表情変わらぬまま彼は言った。
『アヤと言ったか。これから俺が向かうのは【地獄】だ。』
『…ここに居ても同じです。もう時期この国は炎に包まれます。それならっ…バージルさんと!!』
感情的になってしまい息が荒くなると鼓動が鬱陶しいほどに激しくなる。
『愚かだ。自分が何処に向かうかも知らぬまま。』
彼の指が私の顎を持ち上げた。
『お前が望むならこの世から、アヤという存在も何もかも連れ去ってやろう。』
『…ええ!』
そして、散り落ちた椿の花びらが風と共に舞い上がっていった。
fin
霞んだ海の遠くを行き交う駆逐艦が見えた。
港を見渡せるこの丘も海も一面が夕陽に染められて、まるで赤いビードロのよう。
『バージルさん。』
名前を呼んでも歩みを止めることはない。
いつもそう、彼は冷酷で淡々としている。
『何も言わずに行ってしまわれるのですか?』
着物の裾を力一杯握りしめ、声と肩を震わせながら大きな声を発すると彼は歩みを止めて振り返った。
『ここに長居する気はない。』
予想どおりの返答に拳も震えてしまう。
このままでは彼は何処か遠くへ行ってしまう
それならいっそのこと
私も。
『お願いです、私も連れていってください。』
暫くの沈黙のあと、表情変わらぬまま彼は言った。
『アヤと言ったか。これから俺が向かうのは【地獄】だ。』
『…ここに居ても同じです。もう時期この国は炎に包まれます。それならっ…バージルさんと!!』
感情的になってしまい息が荒くなると鼓動が鬱陶しいほどに激しくなる。
『愚かだ。自分が何処に向かうかも知らぬまま。』
彼の指が私の顎を持ち上げた。
『お前が望むならこの世から、アヤという存在も何もかも連れ去ってやろう。』
『…ええ!』
そして、散り落ちた椿の花びらが風と共に舞い上がっていった。
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