策略家
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テニスの大会も一通り終わり俺ら3年は引退した。
それでもやっぱテニスは好きやし、体訛るんも嫌やからたまには後輩の練習のために部活にも顔を出しとった。
そんな秋も半ばに入ると俺の…あまり好かん学校行事がやってくねん…
それは…
氷帝体育祭。
氷帝の体育祭はちょっと特殊な色の組み分けで基本行われるんやけど…赤=あかぐみ。やのうてルージュ言うんやで?
…まぁ、色の組み分けは今はどうでもえぇわ。
一番最後にある目玉の『クラス対抗選抜リレー』だけは組やのうてクラス対抗でやんねん。
各学年の優勝クラスには打ち上げ費全額学校負担!
というなんとも豪華な景品がついとる。
そのおかげで学年問わずどのクラスも結構本気出してメンバー組むし、それは俺のクラスも例外やなかった。
クラスメイトの話によると俺のクラスはそこそこ運動神経いい奴等が集まっとるらしい。
勿論俺にも勧誘来たんやで?
「忍足くん、クラス対抗選抜リレー走ってくれるよね!?」
って…。
「悪いなぁ。俺出たい競技他にあんねん。せやから他当たって?」
さらりと返してからスマホを取り出して愛しの彼女に連絡する。
「愛音?今どこにおるん?ランチタイムやさかい一緒に食わへん?…購買におるんか。わかった、今そっち行くわ。俺の分の焼きそばパン買うといて?」
話しながら勧誘してきた実行委員から逃げ出して購買に向かう。
まぁ、俺は身長も高い方やし、テニス部の元正レギュラーともなれば俊足にもある程度自信はあるんや。
毎年のことやから誘われるんは覚悟しとったけど…今年も上手くかわしたった。
リレーとか…疲れるし、ちょぉ面倒くさいなぁって思ってもうて。
何よりも彼女である愛音と中等部最後の体育祭、できるだけ一緒に居りたいさかいそんなリレーなんか出とる暇ないわ。
今から愛音とランチ出来るんを楽しみに購買に向かうと、無事に購入できたパンが入っているであろう袋を抱えて愛音が廊下に立って俺を待っとった。
きょろきょろと左右を見て俺がどっちから来るんか探しとる姿が可愛らしいわ。
もうしばらく物陰に隠れて見てたなるなぁ…
そんな事を考えとると俺を見つけた愛音が駆け寄ってきた。
「侑士!無事に焼きそばパン買えたよ。あといつものコーヒーね」
「おおきに。愛音は今日なんのパン買うたん?」
「私はクロワッサン~!購買のクロワッサン競争率高いから早く来ても中々買えないんだからっ」
あぁ、そういえば前にも愛音から聞いたことあったな。
そんときは買えんかったみたいでえらいがっかりしとったけど。
さり気無く愛音の手の中にある俺らの今からのランチが入った袋を取る。
愛音が自分の手からなくなった袋を見て俺に礼を言う。
「持ってくれてありがと、侑士」
「姫さんに持たせるなん男が廃るわ。…ほな、今日はお天気さんもえぇみたいやし、ちょぉ外いかへん?」
「うん。賛成っ」
並んで歩いて靴を下駄箱で履き替え中庭にやってくると噴水が見える場所にあるベンチに並んで座る。
俺が持っとる袋を座った愛音が取り、膝の上に置いてガサガサと中に手を入れてパンとドリンクを取り出す。
「はい、侑士のパンとコーヒー」
「おおきに」
差し出されたパンとコーヒーを受け取りコーヒーを傍らに置くとパンの包装を開ける。
愛音も同じように自分のパンを開けると美味しそうに口へと運んどった。
かわえぇなぁ…と思いながら、午前中の授業の内容や他愛もない会話をしていると愛音のスマホから通知音が聞こえた。
「ちょっと見てもいい?」
「あぁ、構へんよ。」
別に俺に許可なんいらへんねんけど…愛音なりの気遣いやと思う。
スマホを見た愛音が一瞬固まった…気がした。
「どないしたん?なんや緊急の用事とか…?」
「う、ううん!なんでも~」
なんやあったな…。
愛音は顔にすぐ出てまうわかりやすい性格しとんねん。
笑顔作っとるつもりやろうけど俺にはすぐわかってまうんやで?
まぁ、それでも愛音が言いたないんなら無理には聞かへんけどな。
「ねぇねぇ…そういえば侑士って…体育祭のクラス対抗選抜リレー走らないの?足凄く速いじゃない」
愛音から突然振られた『クラス対抗選抜リレー』の話題に目を少し大きく見開いて隣に座る愛音を見る。
先ほど言われたばかりのタイムリーな話題に少し驚くもコーヒーを一口飲んで冷静に答える。
「別に俺が走らんでもこういう行事張り切る奴が走ったらえぇやん。クラスに何人か必ずおるやろ?そーゆー奴が」
「でも侑士って走るの速いし絶対走ったらヒーローになれると思うんだけどなぁ」
「別にクラスのヒーローになん興味ないわ。…俺が興味あるんは愛音のヒーローだけやな」
「……もぅ」
頬赤なってる愛音を見て自然と笑みが零れる。
こーゆー愛音の顔、えぇわ。俺の好きな表情のひとつやな。
「じゃ、じゃあ!私が見たいなって言ったら侑士は走ってくれる?」
普段ならすぐ引き下がりそうな愛音が珍しくまだ粘ってきた。
なんや珍しいな…
晴れ渡った空を見上げて暫く考えてから再び愛音へ視線を戻す。
「走らへんな」
「えぇっ~」
「そないな声出さんでもえぇやんか。俺の性格知っとるやろ?目立つんとかあんま好かんし」
「し、知ってるけど…彼女のお願いでも…?」
「せやなぁ…」
隣に座る愛音の腰に腕を回して距離を詰め体を密着させると愛音の耳元で低く、わざとねっとりとした話し方で囁く。
「愛音から…今ここで舌絡ます方のキス…してくれんのやったら要検討すんで…?」
最近愛音にようやく教え込んだディープキスをその場で強請る。
…愛音が硬直しとる。
あ、あかん。笑ってまいそうや…
わかりやすく動揺してパチパチ瞬きして俺の台詞に固まっとるから愛音の視界に入らんように隠れて笑いを堪えとった。
「し…しませんっ!!もうこの話はおしまいっ!!!」
愛音が少し距離を開けて自分の分であるミルクティーを飲む。
この手の話をすればウブな愛音がすぐに折れることを俺は知っとんねん。
足を組んでその様子を楽しそうに見つめる俺に気付いた愛音が俺の少し長めの襟足あたりの髪を掴んで軽く引っ張る。
「からかったでしょ~!侑士の意地悪」
「ははっ…堪忍。天気もいいし、絶好の愛音からかい日和やってん」
「お天気は全然関係ないでしょー!」
この後少しからかい過ぎた姫さんのご機嫌取りに勤しむ俺やった。
愛音のご機嫌取り…嫌いじゃないねんけどな。
「愛音~、忍足くんに例の件聞いてくれた?」
実行委員の子が私に話しかけてきた。
例の件…
「クラス対抗選抜リレー」
の件だった。
初めに実行委員の子から相談されたのは数日前。
侑士と一緒に噴水近くのベンチでランチをしていた時だった。
私のスマホからの通知音が鳴って、一応マナーかなって思って侑士に尋ねるとすぐに返事がくる。
「ちょっと見てもいい?」
「あぁ、構へんよ。」
その台詞を聞いてからスマホを確認すると…
『愛音~!クラス対抗選抜リレーに忍足くんが出るようなんとか説得して!!
さっき直接お願いしたら断られちゃって。
もう愛音しか頼れないの!!クラスの優勝は愛音に懸かってるからね!!!!!』
なんとも熱量の籠った内容だった。
さり気無く侑士にリレー走らないかと聞いてみたけど…あっさり玉砕。
ランチ後に実行委員の子に無理そうだと伝えたけど…「もうちょっとなんとか粘ってみてっ」と言われてしまった。
侑士って変な所で譲らない性格してるから…厳しそうかなー…って思ったんだけど委員の子も譲らないから板挟み状態だった。
そしてまた今、委員の子から何度目かわからない「例の件」の話題…
「例の件ってなんのこと?」
部活が休みの雅と久しぶりに一緒に帰ろうと約束していたため隣を歩く雅が不思議そうに尋ねる。
委員の子が侑士に選抜リレーを頼んだけどダメだったこと。
私が頼んでも断られたこと。
委員の子曰く明日の体育の授業の短距離計測の結果を見てメンバー表を提出しないといけない期日が迫っていること。
その話を聞いた雅が何かを考えてから委員の子に言う。
「んーーー……。当てがあるからお願いしてみるよ。…愛音、ごめん。急用思い出しちゃったから先に帰ってくれる?」
そう言うと私に向かってごめん。と掌を合わせる。
「き、急に?」
「じゃあ私急ぐから行くねー!」
突然の出来事にきょとんとしてパタパタと走っていく雅の後ろ姿を委員の子と見つめた。
「雅の当てってなんだろう…他の子にもちょっと用があるから私も行くね」
「うん。委員がんばってね」
手を振って別れると一人になってしまいなんとなく寂しい気持ちを抱えつつも廊下を歩き学校を出て帰路についた。
テニスの大会も一通り終わり俺ら3年は引退した。
それでもやっぱテニスは好きやし、体訛るんも嫌やからたまには後輩の練習のために部活にも顔を出しとった。
そんな秋も半ばに入ると俺の…あまり好かん学校行事がやってくねん…
それは…
氷帝体育祭。
氷帝の体育祭はちょっと特殊な色の組み分けで基本行われるんやけど…赤=あかぐみ。やのうてルージュ言うんやで?
…まぁ、色の組み分けは今はどうでもえぇわ。
一番最後にある目玉の『クラス対抗選抜リレー』だけは組やのうてクラス対抗でやんねん。
各学年の優勝クラスには打ち上げ費全額学校負担!
というなんとも豪華な景品がついとる。
そのおかげで学年問わずどのクラスも結構本気出してメンバー組むし、それは俺のクラスも例外やなかった。
クラスメイトの話によると俺のクラスはそこそこ運動神経いい奴等が集まっとるらしい。
勿論俺にも勧誘来たんやで?
「忍足くん、クラス対抗選抜リレー走ってくれるよね!?」
って…。
「悪いなぁ。俺出たい競技他にあんねん。せやから他当たって?」
さらりと返してからスマホを取り出して愛しの彼女に連絡する。
「愛音?今どこにおるん?ランチタイムやさかい一緒に食わへん?…購買におるんか。わかった、今そっち行くわ。俺の分の焼きそばパン買うといて?」
話しながら勧誘してきた実行委員から逃げ出して購買に向かう。
まぁ、俺は身長も高い方やし、テニス部の元正レギュラーともなれば俊足にもある程度自信はあるんや。
毎年のことやから誘われるんは覚悟しとったけど…今年も上手くかわしたった。
リレーとか…疲れるし、ちょぉ面倒くさいなぁって思ってもうて。
何よりも彼女である愛音と中等部最後の体育祭、できるだけ一緒に居りたいさかいそんなリレーなんか出とる暇ないわ。
今から愛音とランチ出来るんを楽しみに購買に向かうと、無事に購入できたパンが入っているであろう袋を抱えて愛音が廊下に立って俺を待っとった。
きょろきょろと左右を見て俺がどっちから来るんか探しとる姿が可愛らしいわ。
もうしばらく物陰に隠れて見てたなるなぁ…
そんな事を考えとると俺を見つけた愛音が駆け寄ってきた。
「侑士!無事に焼きそばパン買えたよ。あといつものコーヒーね」
「おおきに。愛音は今日なんのパン買うたん?」
「私はクロワッサン~!購買のクロワッサン競争率高いから早く来ても中々買えないんだからっ」
あぁ、そういえば前にも愛音から聞いたことあったな。
そんときは買えんかったみたいでえらいがっかりしとったけど。
さり気無く愛音の手の中にある俺らの今からのランチが入った袋を取る。
愛音が自分の手からなくなった袋を見て俺に礼を言う。
「持ってくれてありがと、侑士」
「姫さんに持たせるなん男が廃るわ。…ほな、今日はお天気さんもえぇみたいやし、ちょぉ外いかへん?」
「うん。賛成っ」
並んで歩いて靴を下駄箱で履き替え中庭にやってくると噴水が見える場所にあるベンチに並んで座る。
俺が持っとる袋を座った愛音が取り、膝の上に置いてガサガサと中に手を入れてパンとドリンクを取り出す。
「はい、侑士のパンとコーヒー」
「おおきに」
差し出されたパンとコーヒーを受け取りコーヒーを傍らに置くとパンの包装を開ける。
愛音も同じように自分のパンを開けると美味しそうに口へと運んどった。
かわえぇなぁ…と思いながら、午前中の授業の内容や他愛もない会話をしていると愛音のスマホから通知音が聞こえた。
「ちょっと見てもいい?」
「あぁ、構へんよ。」
別に俺に許可なんいらへんねんけど…愛音なりの気遣いやと思う。
スマホを見た愛音が一瞬固まった…気がした。
「どないしたん?なんや緊急の用事とか…?」
「う、ううん!なんでも~」
なんやあったな…。
愛音は顔にすぐ出てまうわかりやすい性格しとんねん。
笑顔作っとるつもりやろうけど俺にはすぐわかってまうんやで?
まぁ、それでも愛音が言いたないんなら無理には聞かへんけどな。
「ねぇねぇ…そういえば侑士って…体育祭のクラス対抗選抜リレー走らないの?足凄く速いじゃない」
愛音から突然振られた『クラス対抗選抜リレー』の話題に目を少し大きく見開いて隣に座る愛音を見る。
先ほど言われたばかりのタイムリーな話題に少し驚くもコーヒーを一口飲んで冷静に答える。
「別に俺が走らんでもこういう行事張り切る奴が走ったらえぇやん。クラスに何人か必ずおるやろ?そーゆー奴が」
「でも侑士って走るの速いし絶対走ったらヒーローになれると思うんだけどなぁ」
「別にクラスのヒーローになん興味ないわ。…俺が興味あるんは愛音のヒーローだけやな」
「……もぅ」
頬赤なってる愛音を見て自然と笑みが零れる。
こーゆー愛音の顔、えぇわ。俺の好きな表情のひとつやな。
「じゃ、じゃあ!私が見たいなって言ったら侑士は走ってくれる?」
普段ならすぐ引き下がりそうな愛音が珍しくまだ粘ってきた。
なんや珍しいな…
晴れ渡った空を見上げて暫く考えてから再び愛音へ視線を戻す。
「走らへんな」
「えぇっ~」
「そないな声出さんでもえぇやんか。俺の性格知っとるやろ?目立つんとかあんま好かんし」
「し、知ってるけど…彼女のお願いでも…?」
「せやなぁ…」
隣に座る愛音の腰に腕を回して距離を詰め体を密着させると愛音の耳元で低く、わざとねっとりとした話し方で囁く。
「愛音から…今ここで舌絡ます方のキス…してくれんのやったら要検討すんで…?」
最近愛音にようやく教え込んだディープキスをその場で強請る。
…愛音が硬直しとる。
あ、あかん。笑ってまいそうや…
わかりやすく動揺してパチパチ瞬きして俺の台詞に固まっとるから愛音の視界に入らんように隠れて笑いを堪えとった。
「し…しませんっ!!もうこの話はおしまいっ!!!」
愛音が少し距離を開けて自分の分であるミルクティーを飲む。
この手の話をすればウブな愛音がすぐに折れることを俺は知っとんねん。
足を組んでその様子を楽しそうに見つめる俺に気付いた愛音が俺の少し長めの襟足あたりの髪を掴んで軽く引っ張る。
「からかったでしょ~!侑士の意地悪」
「ははっ…堪忍。天気もいいし、絶好の愛音からかい日和やってん」
「お天気は全然関係ないでしょー!」
この後少しからかい過ぎた姫さんのご機嫌取りに勤しむ俺やった。
愛音のご機嫌取り…嫌いじゃないねんけどな。
「愛音~、忍足くんに例の件聞いてくれた?」
実行委員の子が私に話しかけてきた。
例の件…
「クラス対抗選抜リレー」
の件だった。
初めに実行委員の子から相談されたのは数日前。
侑士と一緒に噴水近くのベンチでランチをしていた時だった。
私のスマホからの通知音が鳴って、一応マナーかなって思って侑士に尋ねるとすぐに返事がくる。
「ちょっと見てもいい?」
「あぁ、構へんよ。」
その台詞を聞いてからスマホを確認すると…
『愛音~!クラス対抗選抜リレーに忍足くんが出るようなんとか説得して!!
さっき直接お願いしたら断られちゃって。
もう愛音しか頼れないの!!クラスの優勝は愛音に懸かってるからね!!!!!』
なんとも熱量の籠った内容だった。
さり気無く侑士にリレー走らないかと聞いてみたけど…あっさり玉砕。
ランチ後に実行委員の子に無理そうだと伝えたけど…「もうちょっとなんとか粘ってみてっ」と言われてしまった。
侑士って変な所で譲らない性格してるから…厳しそうかなー…って思ったんだけど委員の子も譲らないから板挟み状態だった。
そしてまた今、委員の子から何度目かわからない「例の件」の話題…
「例の件ってなんのこと?」
部活が休みの雅と久しぶりに一緒に帰ろうと約束していたため隣を歩く雅が不思議そうに尋ねる。
委員の子が侑士に選抜リレーを頼んだけどダメだったこと。
私が頼んでも断られたこと。
委員の子曰く明日の体育の授業の短距離計測の結果を見てメンバー表を提出しないといけない期日が迫っていること。
その話を聞いた雅が何かを考えてから委員の子に言う。
「んーーー……。当てがあるからお願いしてみるよ。…愛音、ごめん。急用思い出しちゃったから先に帰ってくれる?」
そう言うと私に向かってごめん。と掌を合わせる。
「き、急に?」
「じゃあ私急ぐから行くねー!」
突然の出来事にきょとんとしてパタパタと走っていく雅の後ろ姿を委員の子と見つめた。
「雅の当てってなんだろう…他の子にもちょっと用があるから私も行くね」
「うん。委員がんばってね」
手を振って別れると一人になってしまいなんとなく寂しい気持ちを抱えつつも廊下を歩き学校を出て帰路についた。
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