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生徒会の仕事にも慣れてきた今日この頃。
そして今は期末のテスト週間中。
学校が終わった私は学校から少し離れて大きな図書館とは言えないけど静かで集中できる図書館に来ていた。
ここの図書館は建物も少し古く、置いてある蔵書も一般的な図書館と比べると古いものが多い。
でも他ではあまり見つけられない本が多く揃っていて、人も比較的少ないため集中もできるしお気に入りの場所の1つだった。
ずっと集中して数時間勉強していたから体が固まってしまって気晴らしに今日借りて帰る本を何冊か見繕おうと席を立つ。
ん~…疲れた。もうそろそろ夕方だし…本選んだら帰ろうかな。
本棚の間をゆっくりと歩いて棚の本を見る。
ここは海外の恋愛小説を訳してあるコーナー。
ここの図書館を使う理由が実はもう1つ。
恋愛物の本を借りてるだなんて…見られるのが恥ずかしいから。
何となくっ…だけど…
なんの本を借りるのも自由だってわかってはいるんだけどっ…
あ。これ良さそう…
一冊の本を手に取り表紙を見る。
うん。これにしよ。
「それ、結構よかったで?」
「…へ?」
満足気に微笑んで席へ戻ろうとした時、目の前で私の選んだ本を覗き込んでいる忍足くんがいた。
な、なんで…!
「さっきからテスト勉強してたやろ?俺、そっちの机におってんけど新堂さん全然気づかへんねんもん」
「そ、そうなの?声、かけてくれたら良かったのに」
「んー…なんや真剣に教科書見てにらめっこしとったし」
確かに…集中してしまっている時に話しかけられるとたまに気づかない事あるって親友の雅にも言われたことあるし…
図書館だからお互いに小声で話す。
「忍足くんもテスト勉強?私はこの本借りて帰ろうと思ってたの」
「俺は本読みに来ただけや。新堂さん帰るんやったらちょうど俺も帰ろ思ってたし途中まで一緒に帰ろや」
「え。」
唐突なお誘いに目を丸くして短く声を発すると私の表情がそんなに面白かったのか、忍足くんが小さくクスクスと笑う。
「帰ろって誘っただけやんか。そない驚かんでもえぇやろ?俺も本読むの好きやし、そういうの語れる女の子おらんから話してみたいねん」
私もだ…
本は好きだけど周りには読書が好きっていう友達はいなかった。
だから1人で図書館には来ていたし、今日だってそうだった。
忍足くんも手に本を持っていて…
私も読んだことがあるその表紙と先ほどの私が手にしている本が良かったという言葉に「本の趣味が似てるのかな」なんて思い頷いた。
「忍足くんもこういう本好きなんだ…ちょっと意外」
「なんでちょぉ笑いそうやねん。俺かてこういう心に沁みる本読むんやで?」
お互いに相手の持つ恋愛小説を見て笑みが零れた。
図書館を出て忍足くんと並んで歩く。
もう夕方だけど夏間近でだいぶ日も長くなっていた。
図書館からバスも出ていたけど話しながら少し歩こうという忍足くんの提案で学校へ戻る道まで一緒に。と言う話になった。
「忍足くんもあの図書館よく行くの?」
「たまに、な。学校の図書館は話しかけられて落ちつかんし、大きい図書館やと他校の子に話しかけられたりお茶誘われたり…ゆっくり本読めんからな」
忍足くんがモテることは知っているから女の子から話しかけられている姿が容易に想像できた。
並んで歩いている所を誰かに見られてないかとキョロキョロと見渡す。
…視線は感じないから大丈夫そう。
熱の高い忍足くんファンに見つかると色々と面倒な事になりそうで困るし…
「ん?なんや急にきょろきょろして」
「ううん。なんでもないっ、それより!お昼ご飯一緒にして以来だね」
「せやな。連絡先交換したけど最初にお互い「これからよろしく」って挨拶しただけでやりとりしてへんかったからな」
そう、忍足くんとこうして話をするのは、連れ去られたお昼ご飯の時から久しぶりだった。
連絡先を交換して忍足くんからのメッセージで「よろしゅうな」ってもらって…私も短く「こちらこそよろしくね」なんて返事をして…
ちょっとだけ忍足くんからなにか連絡でも来るのかな。なんて思ったけど連絡は来ることはなく、私から送る内容も特になくそのままにしていた。
「これからおすすめの本とかあったら教えてや?俺も連絡するし。新堂さん恋愛物好きなんやろ?」
「うん。切ないけど…最後には幸せになれるようなお話が好きかな。悲恋とかは悲しくなっちゃうからあまり読まないけど」
「そうなんや。俺は恋愛物なら幅広く読んでんなぁ。」
「テニスで忙しいのに本も読んだりするんだね。跡部くんも読書したりするって言ってるけど」
「勿論テニスは好きやけどそればっかやないで?跡部とは読む本のジャンル全然ちゃうからあんまり本の話はせぇへんな」
「そっか。跡部くんはよく洋書読んでるよね。難しそうだなっていつも見てるんだけど」
「洋書な。跡部らしいっちゅー感じやな」
そう、生徒会で仕事をするようになって生徒会室にも頻繁に出入りする私は跡部くんの座る会長の机に置いてある本を見てはどんな本を読んでいるのかな。と思うことが多々あった。
殆どが洋書で帝王学の本とかテニスの本もあったけど、私が読んだことのないジャンルの本ばかりだった。
今日はテスト勉強をしに来ただけだけどこの図書館は洋書の数も多い。
時々手に取っては電子辞書片手に跡部くんが読んでいた本を必死に読んでいたこともあった。
忍足くんは跡部くんの事もよく知っているから話が弾む。
雅以外には私が跡部くんに憧れていることを誰も知らない。
私みたいな普通の子が跡部くんに憧れてるだなんて、身分違いもいいとこだもん。
やっぱり可愛いとか綺麗とか家柄が立派だとか…
そういう人が似合うんだろうなって思ってるから、私は近くに居られるだけでも十分だった。
だから親しい雅以外の子には話しづらくて跡部くんの話題を私から話すことなんてなかった。
でも、忍足くんは男の子だし、伊達眼鏡仲間だし、跡部くんのこともよく知っているし話しやすくて普段話せない反動もあってつい話したくなってしまう。
この前跡部くんの机に置かれていた本で自分も同じように読んだ本の事を思い出して笑いながら話す。
「この前もね、跡部くんが読んでた本探したら図書館にあって電子辞書片手に読んでみたの。難しい本だったから面白いっていうより読み切った達成感の方が強くて。ぺらぺら読んでた跡部くん凄いなぁって感心しちゃったんだもん」
「お疲れさんやったなぁ。今日のその本は海外物やけど日本語訳の本やな」
「やっぱり電子辞書片手に本を読むより楽だし物語が入ってくるもの。今日のこの本は大好きなジャンルだから浸って読みたいもん」
「へー…なんや新堂さんって……」
「…?私が…なあに?」
楽しく話をしていると忍足くんが少し声のトーンを落とし私の名前を呼んで何か言いかけて言葉を止めた。
忍足くんへと顔を向けて首を傾げる。
忍足くんも私を見るから思わず正面を向いて顔を逸らしてしまった。
忍足くんも…跡部くんと同じようにイケメン部類なんだから…隣に並んで話してはいるけど、改めて視線を合わせると恥ずかしい。
まともに見られないっ…
正面を向いて歩きながら妙な緊張感で体に力が入る。
歩く足を止めた忍足くんの声が数歩後ろから聞こえる。
「いや、なんでもあらへんわ…」
すぐに私の隣に並んで、今声のトーンが落ちたと感じたけど…気のせいだと思い忍足くんが私の名前を呼ぶ。
思ったより近くで声がした。
「新堂さんって、なんやシャンプーのめっちゃえぇ匂いするわ」
「!?」
突然言われた台詞に今度は私が足を止める。
学校へ行く時はいつも髪を縛ることが多い。
今日もいつもの髪型で思わず自分の髪を握る。
そんな事言われ慣れてない私は顔が赤くなっているんだと思う。
だって…凄く顔が熱い…
忍足くんを見るとクスクスと笑っているから、からかわれているんだとすぐにわかった。
「…な……なに突然っ!」
「隣歩いとって俺の顔くらいに丁度新堂さんの頭があるんやもん。そしたらめっちゃえぇ匂いやなって思ってん」
「やだっ…!」
「やだってなんやのー。めっちゃ褒めてんねんで?」
あまりにも普通に言うからっ…
言われ慣れてなくて動揺する私と違って、言い慣れているであろう忍足くんがからかって楽しいのか声を弾ませる。
驚きで止めた足を動かし歩き始めて、私に釣られて足を止めていた忍足くんをスッと追い抜いてスタスタと少し早足で歩く。
「ちょぉっ!新堂さん!なんで置いてくん!?」
「知らないっ」
「知らんことあらへんやんか」
「忍足くんが変なこと言うからいけないのっ」
もう学校近くまで来ており見慣れた校舎が見えてくる。
恥ずかしさから早足になり、体力のない私は少し呼吸を乱すも普段テニス部で鍛えている忍足くんはその様子はあるはずもなかった。
「堪忍っ!俺が悪かったって。ほんま、堪忍てっ」
ただ恥ずかしくてやり場のない気持ちをぶつけてしまったしまっただけなのに忍足くんは私の少し後ろから必死に謝ってくれる。
…これじゃ…私が悪者じゃない。
息を吐きだして歩く速度をゆっくりと落としていく。
丁度校門へと着いたときに立ち止まり後ろにいる忍足くんに振り返る。
「お詫びに…今度忍足くんのおすすめの本、紹介してね?」
まださっきのシャンプーの香りという発言に照れはあるけど…女の子として言われて嫌なことでもないため振り返って微笑む。
私の台詞に忍足くんが頷き安心したのか微笑み返してくれた。
「新堂さんには特別に俺のとっておきの1冊教えたるわ」
「楽しみにしてる。じゃあ、また学校でっ」
手を振ってから忍足くんに背を向けて家への帰り道を歩き出す。
図書館を出た時にはもう少し高い位置にあった夕日が沈み始めていた。
話すのが楽しかったからなのか、思ったよりゆっくりと歩いてしまったんだと一人になって気付く。
借りた本を読むのを楽しみに、家へと帰る足を速めた。
生徒会の仕事にも慣れてきた今日この頃。
そして今は期末のテスト週間中。
学校が終わった私は学校から少し離れて大きな図書館とは言えないけど静かで集中できる図書館に来ていた。
ここの図書館は建物も少し古く、置いてある蔵書も一般的な図書館と比べると古いものが多い。
でも他ではあまり見つけられない本が多く揃っていて、人も比較的少ないため集中もできるしお気に入りの場所の1つだった。
ずっと集中して数時間勉強していたから体が固まってしまって気晴らしに今日借りて帰る本を何冊か見繕おうと席を立つ。
ん~…疲れた。もうそろそろ夕方だし…本選んだら帰ろうかな。
本棚の間をゆっくりと歩いて棚の本を見る。
ここは海外の恋愛小説を訳してあるコーナー。
ここの図書館を使う理由が実はもう1つ。
恋愛物の本を借りてるだなんて…見られるのが恥ずかしいから。
何となくっ…だけど…
なんの本を借りるのも自由だってわかってはいるんだけどっ…
あ。これ良さそう…
一冊の本を手に取り表紙を見る。
うん。これにしよ。
「それ、結構よかったで?」
「…へ?」
満足気に微笑んで席へ戻ろうとした時、目の前で私の選んだ本を覗き込んでいる忍足くんがいた。
な、なんで…!
「さっきからテスト勉強してたやろ?俺、そっちの机におってんけど新堂さん全然気づかへんねんもん」
「そ、そうなの?声、かけてくれたら良かったのに」
「んー…なんや真剣に教科書見てにらめっこしとったし」
確かに…集中してしまっている時に話しかけられるとたまに気づかない事あるって親友の雅にも言われたことあるし…
図書館だからお互いに小声で話す。
「忍足くんもテスト勉強?私はこの本借りて帰ろうと思ってたの」
「俺は本読みに来ただけや。新堂さん帰るんやったらちょうど俺も帰ろ思ってたし途中まで一緒に帰ろや」
「え。」
唐突なお誘いに目を丸くして短く声を発すると私の表情がそんなに面白かったのか、忍足くんが小さくクスクスと笑う。
「帰ろって誘っただけやんか。そない驚かんでもえぇやろ?俺も本読むの好きやし、そういうの語れる女の子おらんから話してみたいねん」
私もだ…
本は好きだけど周りには読書が好きっていう友達はいなかった。
だから1人で図書館には来ていたし、今日だってそうだった。
忍足くんも手に本を持っていて…
私も読んだことがあるその表紙と先ほどの私が手にしている本が良かったという言葉に「本の趣味が似てるのかな」なんて思い頷いた。
「忍足くんもこういう本好きなんだ…ちょっと意外」
「なんでちょぉ笑いそうやねん。俺かてこういう心に沁みる本読むんやで?」
お互いに相手の持つ恋愛小説を見て笑みが零れた。
図書館を出て忍足くんと並んで歩く。
もう夕方だけど夏間近でだいぶ日も長くなっていた。
図書館からバスも出ていたけど話しながら少し歩こうという忍足くんの提案で学校へ戻る道まで一緒に。と言う話になった。
「忍足くんもあの図書館よく行くの?」
「たまに、な。学校の図書館は話しかけられて落ちつかんし、大きい図書館やと他校の子に話しかけられたりお茶誘われたり…ゆっくり本読めんからな」
忍足くんがモテることは知っているから女の子から話しかけられている姿が容易に想像できた。
並んで歩いている所を誰かに見られてないかとキョロキョロと見渡す。
…視線は感じないから大丈夫そう。
熱の高い忍足くんファンに見つかると色々と面倒な事になりそうで困るし…
「ん?なんや急にきょろきょろして」
「ううん。なんでもないっ、それより!お昼ご飯一緒にして以来だね」
「せやな。連絡先交換したけど最初にお互い「これからよろしく」って挨拶しただけでやりとりしてへんかったからな」
そう、忍足くんとこうして話をするのは、連れ去られたお昼ご飯の時から久しぶりだった。
連絡先を交換して忍足くんからのメッセージで「よろしゅうな」ってもらって…私も短く「こちらこそよろしくね」なんて返事をして…
ちょっとだけ忍足くんからなにか連絡でも来るのかな。なんて思ったけど連絡は来ることはなく、私から送る内容も特になくそのままにしていた。
「これからおすすめの本とかあったら教えてや?俺も連絡するし。新堂さん恋愛物好きなんやろ?」
「うん。切ないけど…最後には幸せになれるようなお話が好きかな。悲恋とかは悲しくなっちゃうからあまり読まないけど」
「そうなんや。俺は恋愛物なら幅広く読んでんなぁ。」
「テニスで忙しいのに本も読んだりするんだね。跡部くんも読書したりするって言ってるけど」
「勿論テニスは好きやけどそればっかやないで?跡部とは読む本のジャンル全然ちゃうからあんまり本の話はせぇへんな」
「そっか。跡部くんはよく洋書読んでるよね。難しそうだなっていつも見てるんだけど」
「洋書な。跡部らしいっちゅー感じやな」
そう、生徒会で仕事をするようになって生徒会室にも頻繁に出入りする私は跡部くんの座る会長の机に置いてある本を見てはどんな本を読んでいるのかな。と思うことが多々あった。
殆どが洋書で帝王学の本とかテニスの本もあったけど、私が読んだことのないジャンルの本ばかりだった。
今日はテスト勉強をしに来ただけだけどこの図書館は洋書の数も多い。
時々手に取っては電子辞書片手に跡部くんが読んでいた本を必死に読んでいたこともあった。
忍足くんは跡部くんの事もよく知っているから話が弾む。
雅以外には私が跡部くんに憧れていることを誰も知らない。
私みたいな普通の子が跡部くんに憧れてるだなんて、身分違いもいいとこだもん。
やっぱり可愛いとか綺麗とか家柄が立派だとか…
そういう人が似合うんだろうなって思ってるから、私は近くに居られるだけでも十分だった。
だから親しい雅以外の子には話しづらくて跡部くんの話題を私から話すことなんてなかった。
でも、忍足くんは男の子だし、伊達眼鏡仲間だし、跡部くんのこともよく知っているし話しやすくて普段話せない反動もあってつい話したくなってしまう。
この前跡部くんの机に置かれていた本で自分も同じように読んだ本の事を思い出して笑いながら話す。
「この前もね、跡部くんが読んでた本探したら図書館にあって電子辞書片手に読んでみたの。難しい本だったから面白いっていうより読み切った達成感の方が強くて。ぺらぺら読んでた跡部くん凄いなぁって感心しちゃったんだもん」
「お疲れさんやったなぁ。今日のその本は海外物やけど日本語訳の本やな」
「やっぱり電子辞書片手に本を読むより楽だし物語が入ってくるもの。今日のこの本は大好きなジャンルだから浸って読みたいもん」
「へー…なんや新堂さんって……」
「…?私が…なあに?」
楽しく話をしていると忍足くんが少し声のトーンを落とし私の名前を呼んで何か言いかけて言葉を止めた。
忍足くんへと顔を向けて首を傾げる。
忍足くんも私を見るから思わず正面を向いて顔を逸らしてしまった。
忍足くんも…跡部くんと同じようにイケメン部類なんだから…隣に並んで話してはいるけど、改めて視線を合わせると恥ずかしい。
まともに見られないっ…
正面を向いて歩きながら妙な緊張感で体に力が入る。
歩く足を止めた忍足くんの声が数歩後ろから聞こえる。
「いや、なんでもあらへんわ…」
すぐに私の隣に並んで、今声のトーンが落ちたと感じたけど…気のせいだと思い忍足くんが私の名前を呼ぶ。
思ったより近くで声がした。
「新堂さんって、なんやシャンプーのめっちゃえぇ匂いするわ」
「!?」
突然言われた台詞に今度は私が足を止める。
学校へ行く時はいつも髪を縛ることが多い。
今日もいつもの髪型で思わず自分の髪を握る。
そんな事言われ慣れてない私は顔が赤くなっているんだと思う。
だって…凄く顔が熱い…
忍足くんを見るとクスクスと笑っているから、からかわれているんだとすぐにわかった。
「…な……なに突然っ!」
「隣歩いとって俺の顔くらいに丁度新堂さんの頭があるんやもん。そしたらめっちゃえぇ匂いやなって思ってん」
「やだっ…!」
「やだってなんやのー。めっちゃ褒めてんねんで?」
あまりにも普通に言うからっ…
言われ慣れてなくて動揺する私と違って、言い慣れているであろう忍足くんがからかって楽しいのか声を弾ませる。
驚きで止めた足を動かし歩き始めて、私に釣られて足を止めていた忍足くんをスッと追い抜いてスタスタと少し早足で歩く。
「ちょぉっ!新堂さん!なんで置いてくん!?」
「知らないっ」
「知らんことあらへんやんか」
「忍足くんが変なこと言うからいけないのっ」
もう学校近くまで来ており見慣れた校舎が見えてくる。
恥ずかしさから早足になり、体力のない私は少し呼吸を乱すも普段テニス部で鍛えている忍足くんはその様子はあるはずもなかった。
「堪忍っ!俺が悪かったって。ほんま、堪忍てっ」
ただ恥ずかしくてやり場のない気持ちをぶつけてしまったしまっただけなのに忍足くんは私の少し後ろから必死に謝ってくれる。
…これじゃ…私が悪者じゃない。
息を吐きだして歩く速度をゆっくりと落としていく。
丁度校門へと着いたときに立ち止まり後ろにいる忍足くんに振り返る。
「お詫びに…今度忍足くんのおすすめの本、紹介してね?」
まださっきのシャンプーの香りという発言に照れはあるけど…女の子として言われて嫌なことでもないため振り返って微笑む。
私の台詞に忍足くんが頷き安心したのか微笑み返してくれた。
「新堂さんには特別に俺のとっておきの1冊教えたるわ」
「楽しみにしてる。じゃあ、また学校でっ」
手を振ってから忍足くんに背を向けて家への帰り道を歩き出す。
図書館を出た時にはもう少し高い位置にあった夕日が沈み始めていた。
話すのが楽しかったからなのか、思ったよりゆっくりと歩いてしまったんだと一人になって気付く。
借りた本を読むのを楽しみに、家へと帰る足を速めた。
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