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「次の俺の担当の子は…あの子か…」
ここは都内の大学病院。
樹齢何年かは知らないが大きい木の人が登れない程の高さの枝にちょこんと腰かけてそこから見える3階病室の一人の女の子を見つめた。
俺が腰かけた場所は彼女の部屋の窓から見えるどこにでもありふれた木。
まだ春とは呼べんけどもうすぐ訪れそうな新しい木々が芽吹きだすころやった。
比較的暖かい日差しが差し込む今日は調子がいいらしい。ベットの上ながらも上半身を起こし開けている窓から入り込む風が長い髪を靡かせて柔らかな表情で静かに本を読んどった。
「あの子はどんくらいもつんかな…」
俺は俗にいう『天使』ってやつや。背中には大きい羽根もあんねんで?真っ白な自慢の羽根や。
人間界で羽根生やしとると目立つことこの上ないし面倒なこともあるさかい、見えへんように体内に収納もできる。便利やろ?
天使は天使でも少し特殊な部類…なんやと思う。
死が近づいてきている人間のそばで最後を見届け、天界へ案内すること。
それが俺の役目や。
だから今、こうして見守っとる子も死ぬっちゅーことや。
まだ若いのになぁ。
見た目は俺と同じくらいの見た目やろか。…ま、俺は数百年この格好で生きとるし、もっともーっと年上さんなんやけど。
確認したデータによると…彼女の名前は『新堂愛音』。
まだ15歳なんか。
病状は…なるほど。
人を見て欲しいデータは頭の中に流れ込んでくる。
便利なもんや。
頭の中へ流れてきた個人データを色々と確認する。
見守る人間の事を色々と確認すんのは毎回のルーティンや。
それでも俺でも見えへんこともある。
それは…いつ、どこで、どうやって、死ぬか。
それだけはわからへんようになっとる。
いつも通りの日常を送っているだけでそれは突然訪れる。
徐々に弱ってやがて絶えることもあれば不慮の事故で突然絶たれたり、自ら命を絶ったり突然他人に奪われたり。
色んな瞬間に立ち会ってきた。
初めて見た光景を思い出そうとする…が、全く思い出せへん。
多すぎるんや。俺が見てきた人の死というものが。
「この子は…まぁ、病気が原因なんやろなぁ。場所が場所やし。あとどれくらいもつんかなぁ」
病状、病院、ベットの上。
細い線の体と色白な肌。
これだけ条件が揃っていたらおおよその検討はつく。
まぁ、予想外の原因ってパターンもあるんやけど。
俺が担当になってすぐに死ぬこともあれば数か月こうしてただ眺めて過ごすこともある。
この木の上が俺の定位置になった。付かず離れず。ただ毎日彼女の姿を眺めて過ごす。
本を読むことが好きらしい。読み終えるとまた次の本。
家族が持ってきたフルーツを食べると嬉しそうにして口に運ぶ。フルーツ好きなんかなぁ。なんて考えることもあった。
反対に食事が運ばれてきて人参があると嫌そうな表情をして鼻をつまんで食べたりしていたから思わず笑ってもうた。露骨に人参さん嫌がりすぎやで。愛音チャン。
面会にくる人々はそない多くなかった。彼女に会いに来るのは、担当医、看護師、家族、片手ほどで足りてしまう友人らしき人物達。
たいがい彼女は自分の事を話すよりも微笑んで「うんうん。」と頷いたり楽しそうに笑ったり、調子の悪そうな日には申し訳なさそうにしたり。聞き役に徹することや他人を気遣うことが多いように思った。
読書中、会話中、点滴中、食事中、外を眺めている最中…ふいにこっちを見とる気がすることもあったけど、彼女から俺の姿が見えることはないし、気にすることなくいつもただ彼女の姿を見とった。
「…今日は天気あんま良くあらへんなぁ」
いつもの木、いつもの枝に今日も座ってどんよりとした灰色の雲が空を覆いつくしとってなんだが気も重くなってため息交じりに空を見上げ呟いた。
天気が良くないさかい、彼女とは今日は硝子越し。顔色もよぉなかった。リクライニングベットで上半身を起こして膝に本を置いとるけどそれを読む仕草は見られない。
「今日は体調よぅあらへんみたいやね…」
毎日見とると何となく顔色とかもわかるもんやね。医者に向いてるんちゃうの。俺。
そんなことを考えている時、目を閉じて寝ていると思った彼女がゆっくりと目を開けて俺の方を向いた。
…視線が合った気が…した。
いや、まさかな。そんなはずないやん。
見えてへんのやで?
焦るな。偶然や。
俺らしくもないけど、見えるはずもあらへんし、今までにそんな経験したこともなかったから妙に焦ってしもうた。
でもそんな俺の思考お構いなしにベットから起き上がった彼女は窓を開けて俺をまっすぐに見つめて微笑み話しかけてきた。
「今日はお天気そんなに良くないね。もしよかったら貰った林檎があるんだけど一緒に食べない?」
「そ…やね。林檎もらおうかな」
めっちゃ動揺しまくりながら声を絞り出した。
なんなん。なんで見えてんねん。
なんで会話しとんの!
ってか、林檎一緒に食べることになってもうてるやんか!
「今用意するから病室きてくれる?流石に、こことそこじゃあ…ね。」
窓を開けているとは言え妙な距離感で話す俺にくすくすと笑いながら俺の視界から離れると個室である部屋の奥を歩き林檎や皿、ナイフを準備し始めていた。
羽根を広げて木の上から地面に足を付けて降りると、天使の装束から人間界で良く見るデニムにワイシャツとなんともシンプルな服に変化させ羽根を収納し不自然にならないよう人間達に自分の姿が見えるまじないをかけてから病室へと急いだ。
…緊急対応時、姿を現すまじないをかけることも禁じられてへんけど、これは特例として許されるんやろか。
病室へ急ぎ足で向かいながらぼんやりと考えたが部屋を開けた瞬間にそんな考え…どっかに行ってもうた。
「次の俺の担当の子は…あの子か…」
ここは都内の大学病院。
樹齢何年かは知らないが大きい木の人が登れない程の高さの枝にちょこんと腰かけてそこから見える3階病室の一人の女の子を見つめた。
俺が腰かけた場所は彼女の部屋の窓から見えるどこにでもありふれた木。
まだ春とは呼べんけどもうすぐ訪れそうな新しい木々が芽吹きだすころやった。
比較的暖かい日差しが差し込む今日は調子がいいらしい。ベットの上ながらも上半身を起こし開けている窓から入り込む風が長い髪を靡かせて柔らかな表情で静かに本を読んどった。
「あの子はどんくらいもつんかな…」
俺は俗にいう『天使』ってやつや。背中には大きい羽根もあんねんで?真っ白な自慢の羽根や。
人間界で羽根生やしとると目立つことこの上ないし面倒なこともあるさかい、見えへんように体内に収納もできる。便利やろ?
天使は天使でも少し特殊な部類…なんやと思う。
死が近づいてきている人間のそばで最後を見届け、天界へ案内すること。
それが俺の役目や。
だから今、こうして見守っとる子も死ぬっちゅーことや。
まだ若いのになぁ。
見た目は俺と同じくらいの見た目やろか。…ま、俺は数百年この格好で生きとるし、もっともーっと年上さんなんやけど。
確認したデータによると…彼女の名前は『新堂愛音』。
まだ15歳なんか。
病状は…なるほど。
人を見て欲しいデータは頭の中に流れ込んでくる。
便利なもんや。
頭の中へ流れてきた個人データを色々と確認する。
見守る人間の事を色々と確認すんのは毎回のルーティンや。
それでも俺でも見えへんこともある。
それは…いつ、どこで、どうやって、死ぬか。
それだけはわからへんようになっとる。
いつも通りの日常を送っているだけでそれは突然訪れる。
徐々に弱ってやがて絶えることもあれば不慮の事故で突然絶たれたり、自ら命を絶ったり突然他人に奪われたり。
色んな瞬間に立ち会ってきた。
初めて見た光景を思い出そうとする…が、全く思い出せへん。
多すぎるんや。俺が見てきた人の死というものが。
「この子は…まぁ、病気が原因なんやろなぁ。場所が場所やし。あとどれくらいもつんかなぁ」
病状、病院、ベットの上。
細い線の体と色白な肌。
これだけ条件が揃っていたらおおよその検討はつく。
まぁ、予想外の原因ってパターンもあるんやけど。
俺が担当になってすぐに死ぬこともあれば数か月こうしてただ眺めて過ごすこともある。
この木の上が俺の定位置になった。付かず離れず。ただ毎日彼女の姿を眺めて過ごす。
本を読むことが好きらしい。読み終えるとまた次の本。
家族が持ってきたフルーツを食べると嬉しそうにして口に運ぶ。フルーツ好きなんかなぁ。なんて考えることもあった。
反対に食事が運ばれてきて人参があると嫌そうな表情をして鼻をつまんで食べたりしていたから思わず笑ってもうた。露骨に人参さん嫌がりすぎやで。愛音チャン。
面会にくる人々はそない多くなかった。彼女に会いに来るのは、担当医、看護師、家族、片手ほどで足りてしまう友人らしき人物達。
たいがい彼女は自分の事を話すよりも微笑んで「うんうん。」と頷いたり楽しそうに笑ったり、調子の悪そうな日には申し訳なさそうにしたり。聞き役に徹することや他人を気遣うことが多いように思った。
読書中、会話中、点滴中、食事中、外を眺めている最中…ふいにこっちを見とる気がすることもあったけど、彼女から俺の姿が見えることはないし、気にすることなくいつもただ彼女の姿を見とった。
「…今日は天気あんま良くあらへんなぁ」
いつもの木、いつもの枝に今日も座ってどんよりとした灰色の雲が空を覆いつくしとってなんだが気も重くなってため息交じりに空を見上げ呟いた。
天気が良くないさかい、彼女とは今日は硝子越し。顔色もよぉなかった。リクライニングベットで上半身を起こして膝に本を置いとるけどそれを読む仕草は見られない。
「今日は体調よぅあらへんみたいやね…」
毎日見とると何となく顔色とかもわかるもんやね。医者に向いてるんちゃうの。俺。
そんなことを考えている時、目を閉じて寝ていると思った彼女がゆっくりと目を開けて俺の方を向いた。
…視線が合った気が…した。
いや、まさかな。そんなはずないやん。
見えてへんのやで?
焦るな。偶然や。
俺らしくもないけど、見えるはずもあらへんし、今までにそんな経験したこともなかったから妙に焦ってしもうた。
でもそんな俺の思考お構いなしにベットから起き上がった彼女は窓を開けて俺をまっすぐに見つめて微笑み話しかけてきた。
「今日はお天気そんなに良くないね。もしよかったら貰った林檎があるんだけど一緒に食べない?」
「そ…やね。林檎もらおうかな」
めっちゃ動揺しまくりながら声を絞り出した。
なんなん。なんで見えてんねん。
なんで会話しとんの!
ってか、林檎一緒に食べることになってもうてるやんか!
「今用意するから病室きてくれる?流石に、こことそこじゃあ…ね。」
窓を開けているとは言え妙な距離感で話す俺にくすくすと笑いながら俺の視界から離れると個室である部屋の奥を歩き林檎や皿、ナイフを準備し始めていた。
羽根を広げて木の上から地面に足を付けて降りると、天使の装束から人間界で良く見るデニムにワイシャツとなんともシンプルな服に変化させ羽根を収納し不自然にならないよう人間達に自分の姿が見えるまじないをかけてから病室へと急いだ。
…緊急対応時、姿を現すまじないをかけることも禁じられてへんけど、これは特例として許されるんやろか。
病室へ急ぎ足で向かいながらぼんやりと考えたが部屋を開けた瞬間にそんな考え…どっかに行ってもうた。
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