北信介
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見覚えのない天井。見覚えのないベッド。
「おはようさん。身体、しんどない?」
――隣には心配そうに見つめる北くんがいた。
思わずズキンと痛む頭を押さえた。
あれ、私……。
確か昨日は、稲荷崎高校の同窓会で久々に会える友達と楽しく飲んで。その後の二次会のおに宮でも、飲んで飲んで……それから、どうしたんだっけ?
「□□?」
……待って。なんで北くんが目の前に?
というか、そもそもここってもしかして、もしかしなくてもホテル……?
「どっか痛いんか?」
何も話さない私を心配してか北くんは気遣ってくれた。
だけど、その言葉が引っかかる。
どこか痛い?……なんて、そんな聞き方はまるで……。
「き、北くん、あのさ、もしかして昨日って、」
「あぁ。結構飲んどったしな、自分。無理に思い出さんでもええよ。」
優しげな言い方が余計に気になる。
その言い方はしたの? してないの?!
……ちょっと待って。私、服が違うんだけど……!!
同窓会だったからちょっと綺麗めの服装だったのに、ホテルのガウン着てる。
一気に血の気がサーッと引くのがわかった。
もしかして、もしかしなくても私、北くんのこと襲った……?!
思わず北くんと距離をとってベッドの端っこへ移動した。
「あ、こら。あんまり寄ると落ちるで。」
「……ねぇ、私さ、北くんにその……変なことしてないよね…?」
「変なことってなに?」
「え、っと……、その、北くんのこと……、襲ってない、よね?」
北くんはきょとんと目を丸くしてこちらを見つめて、それから、
「……なんや。それ、普通逆やろ?」
少しおかしそうにして続けた。
「いや、だって北くんはそんな事しないじゃん! そしたら私からかな、って思っちゃったんだもん!」
北くんが笑ってるところ、初めて見た気がした。
「はぁ、おもろ。……安心してええよ。なんもない。」
「……本当?」
「あぁ、ほんま。」
「……あのさ、なんで私だけホテルのガウン着てるの?」
「□□は、どこまで覚えとるん?」
「いや、お恥ずかしながら、おに宮で飲んでた辺りまでです……。」
なぜか北くんからは小さくため息が漏れた。私、やっぱりなにかしたんだ。というか、迷惑かけてばかりだよね。
「……せやな、どこから話そか。」
一呼吸置いて、それから北くんは教えてくれた。
***
「美味し〜、もっと飲も!」
「なんや、えらいご機嫌やな。」
飲んでいた自分のグラスを持って、北くんが隣に座った。
「あ! 北くん、久しぶりだねぇ。元気してた?」
「おん。□□は元気やった?」
「うん! めっちゃ元気! ねぇ、この日本酒一緒に飲もうよ!」
「ええけど、□□はちょっと飲み過ぎやない?」
「大丈夫! すみませーん、日本酒一合ください! お猪口二つで!」
「あと、お水も。」
ただでさえ、普段よりたくさん飲んで、そこに日本酒を飲んでしまった。足に力は入らずほとんど立てない状態になるほどに。
飲んでも飲まれるなとはこういう事か……。
「□□、大丈夫か?」
「あれ? 北くんが二人いる〜?」
「……あかんな。ほれ、お水飲み。」
「ん〜?」
さっき北くんが頼んだお水を飲もうと手を出したら、パシャ、とお酒がかかった。それは、テーブルに置いてあった誰のものかもわからないお酒で。特に怒る人は居なかった。北くんを除いて。
「もう、だから飲み過ぎ言うたやろ。」
少し呆れながらもおしぼりを持って来てくれた。
「ほら、これで拭き。」
「ありがとう、ごめんね。迷惑かけて。」
「別に迷惑やない。そろそろお開きやけど帰れるか?」
「ん〜、大丈夫大丈夫。」
とは、言ったもののまだまだお酒は抜けていなくて足に力が入らないし、上手く立てない。
「ん。立てるか?」
「ありがと〜、北くんは優しいねぇ。」
「…………そか。」
北くんに支えられながらなんとかタクシー乗り場についた。それぞれの家に帰るはずだった。が、私が途中で「吐きそう……。」となり、近くのホテルに入り。お酒もこぼしていたので北くんがフロントからガウンを借りてきてくれた。
それだけでもかなり迷惑かけたのに、まだ北くんに迷惑かけていた。ガウンに着替える時だった。
今日は綺麗めな服装で後ろにジッパーが付いており、酔っ払いの自分では到底外せず。
「ねぇ、北く〜ん。」
「……なに?」
着替えを見ないよう、後ろを向いていた北くんに声を掛けた。
「この、服の背中のジッパー下ろすの手伝って。なんか上手くいかなくてさ〜。」
「…………おん。」
北くんは少し言葉に詰まって、それから「そっち向いてもええ?」と確認した。一瞬迷ったあと、必要な分だけジッパーを下ろしてくれて、それからようやくガウンへ着替えて。
ベッドで横になっているうちに、北くんのことなどお構いなしに気持ちよさそうに眠ってしまった。
これが、ことの結末。らしい。
***
「あの、すみませんでした!!」
その話を聞いてすぐさま、ベッドの上で正座して頭を下げた。かなり謝った。土下座するんじゃないかってくらいに。むしろ、しといたほうがよかったかもしれない。
「……別にええよ。ただ、次からは考えて飲み。」
「はい……。あの、本当にごめんね。」
「そない謝らんでもええよ。」
「で、でも……、」
小さく息を吐いて視線をそらしながら北くんは言った。
「あんな、□□はもう少し自覚しとき。」
「……自覚? なんの?」
「俺かて、なんも思っとらん相手にここまですると思うか?」
「えっ、あの、それって……、どういう意味?」
心臓がぎゅとなった。
「あ、の、近いです……。」
手の平を顔の前にだして、北くんがこれ以上近づかないようにした、つもりだった。
さっきまで正座していたはずなのに、気が付けば背中がベッドについていて私は彼を見上げるような体勢になっていた。
「北くん、近い! 近いよ!」
「そら、近づいてるからな。」
そう言うと彼は少しずつ、だけど確実に距離を詰めてくる。
「……嫌なら、やめる。」
「え……?」
「□□が嫌言うなら、俺はこれ以上近づかへん。」
一瞬、距離が止まった。
それが逆に、胸の奥をざわつかせる。
「……別に嫌、ってわけじゃ……。」
その言葉を聞くやいなや、また北くんとの距離が近くなる。
それから北くんの大きな手は私の頬に優しく触れた。
その距離は、唇は触れない。でも、お互いの吐息を感じるほどの近さで。
私の頬に触れる彼の体温からも、私を見つめる彼の視線からも逸らすことは出来なかった。
「……緊張しとる?」
私の耳元でいつもより低く囁く彼は色っぽくて、心臓はバクバクしっぱなしだ。
「待って、ストップ! 北くん、そもそも私のこと抱けるの?!」
「おん。好きな女なら抱ける。」
「す、好きな女……?」
声が荒くなる。だって好きな女って、そんなの……。
「せや。俺、□□のこと好きやったん。知らんかった?」
「し、知らんかった、です…。」
北くんの瞳は優しくこちらを見ていて、なんだかその瞳に吸い込まれそうになる。
「もう触ってもええ?」
「……はい。」
わずかに北くんは目を細めて、頬に触れていた手は顎を持ち上げた。
「……無理せんでな。嫌んなったら、すぐ言うて。」
「ん。」
これからなにが始まるのかわからないほど子どもじゃないけど、北くんの熱に耐えられるほど大人でもなかった。