古森元也
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「あれ、□□さん?」
油断していた。休日だから誰にも会わないと思っていたのに。
一番会いたくない職場の人と会ってしまった。それも古森くんに。
いつもは職場では動きやすいようにオフィスカジュアルのパンツスタイルで出勤している。
理由は単純。スカートだと動きづらいから。それにオンオフの切り替えを大事にしたい。
スカートや職場でしない服装やメイク、髪型は休日に思いっ切り楽しみたいから。
だから休日の今日もお気に入りの服を身に纏って、アイシャドウやリップで瞼や唇を大好きな色で彩って、アクセサリーと髪型で仕上げて、最近買った香水を振りかけて、休日の私が完成する。
行きたかったカフェに寄って、新作のコスメを買って、次はどこに行こうか……なんて考えていたら声を掛けられた。
それも古森くんに。
見つかったのは偶然、きっと彼も何か用事か、もしくはデートの帰りだったのかもしれない。
「□□さん、だよね?」
「うん……。偶然だね。」
なんだか頭から足元まで視線を感じる。こうなるから職場の人とは会いたくなかった。
何か言われるんだろうな。
これまでの経験からなんとなくそう思って。彼から発せられる言葉に備えてた。
「そういうのも似合ってるね。」
意外だった。古森くんはもっと大げさに言ってくると思っていたから。静かな反応にこっちが驚いて言葉が出なかった。
「じゃ、俺、ちょっと用事あるから。」
「あ、うん。またね。」
「待って、せっかくだから連絡先交換しよ。」
「いいの? バレー選手なのに簡単に連絡先教えて。」
「それくらい平気だよ、ほら早く。」
言われるがまま彼が差し出したスマホのバーコードを読み取り、簡単にスタンプだけ送信した。
「ありがと。それじゃ、また職場で。」
「またね。」
それだけ言うと彼は人混みへ消えていった。
というか、わざわざ用事あるのに声掛けてきたんだ。律儀というかなんというか。
今日の見た目のこと、誰にも言わないでくれたらいいな。
それから翌日。私はまたいつも通りのパンツスタイルで出社している。
「今日はスカートじゃないの?」
頼まれた荷物を倉庫へ運んでいると、先日も話しかけられた声が聞こえた。
「仕事中は動きにくいので。」
「ふーん。」
ふーんって、なに。なんか意味深。
「どこまで運ぶの、それ。」
「倉庫までだよ。こういう時にスカートだと動きづらいから職場では履かないの。」
「貸して、俺が運ぶよ。」
「いいよ、私の仕事だから! それに選手に怪我でもされたら大変だし。」
「大丈夫! そんくらいで怪我しないって。鍛えてるから。」
結局彼は私の持っていた資料を倉庫へ運ぶのを手伝ってくれた。
おかげで私一人で運ぶより数倍早くて、古森くんも言った通り怪我もなく無事に終わった。
「ごめんね。私の仕事だったのに。」
「女の子なんだから、こういう時くらい頼りなって。」
「ありがとう。」
入社してそれなりになるのに女の子だなんて、なんだか照れくさい。こういう事を恥ずかしげもなく言えるのが古森くんの良いところなんだな。
***
「スカート珍しいね?!」
「ねー! 似合ってるしかわいいよ!」
「俺もそっちのが好きだわ。」
これだよ。これが嫌なの。
休日と同じで服装、メイク、髪型を整えたら好き勝手に言う人達が出てくる。
「なに?! デートでもあんの?」
「それか合コン?」
「もう! 違いますよ〜!」
笑顔を貼り付けて絡まれた人達から抜け出し席に戻った。
ため息出そう。
仕事なのに休日仕様なのには理由がある。そう仕事終わりに友達とご飯に行くのだ。久々に合える人だからいつもの格好だと味気ないし、私自身もテンションが上がらない。
職場でこの服装をするかはかなり迷った。
けれど、友達と会うことを考えて休日仕様にした。退勤後にカバンに入っているアクセサリーと香水を身に纏えば完成となる仕様だ。
今朝から今日のご飯を楽しみにしていたのに、好き勝手言われてモヤがかかったような気持ちになった。
別に誰が何着てようが迷惑かけてないなら放っておいてほしい。
勝手に土足で踏み荒らされたみたいで気分が悪い……。
引っ掛かりはなかなか取れなくて仕事内容も、なかなか頭に入ってこなかった。
***
やっと退勤できた。
お手洗いでお化粧直しをして、アクセサリーと香水を軽く振りかけて今度こそ今日の私の完成。
休日仕様で仕事するとやっぱりペースも乱れるし、ザワザワして私自身落ち着かなかった。平日にご飯の予定入れるのはやめよ。
「よし、行こう。」
お手洗いを出てエレベーターを待っていると、またまた聞き慣れた声が聞こえた。
「おつかれ。もう上がり?」
「うん……。おつかれ。」
「あり? なんか元気ない?」
「ううん、なんでもないよ。」
「ちょっとこっち来て。」
無意識に手を捕まれて、連れられたのは休憩スペースの自動販売機前。チャリンとお金を入れる音が響いて、ピッとスイッチが押されると小さなペットボトルが出てきた。
こうして見ると古森くんってこんなに背が高かったんだ。
自動販売機と殆ど背丈一緒……。
「どうぞ。」
「え?」
見とれていたら、古森くんから差し出されたのはミルクティーだった。
選手の彼が飲むようなものではないから、私に渡すためにわざわざ買ってくれた……?
「甘いもの飲むと落ち着くだろ?」
「……ありがと。」
「あとさ、」
ゆっくりとこちらに向かってきて距離が近くなる。なんてことないはずなのになぜか心臓がだんだん早くなっている。少しかがんで目線を合わせて彼は言った。
「俺と出かける時もその服着てくれる?」
「……どういうこと?」
彼を見上げたまま動けずにいると、さらに距離は近くなって。
耳元で普段より落ち着いた声色で、でも、いつも通り優しく囁かれた。
「俺とデートしてください。」
交換した連絡先を使うまで、きっとあと少し。