ワードパレット
メガネ越しに目線があう。肌の熱で溶け消えるような冷たさや、ほんの少しの温もりさえも含んでない、あの無機質な瞳が覗いてくる。
光が差し込まないような闇色の深さに、呑まれそうになってしまった少女は小さく息を詰めた。
「大丈夫? 椿ちゃん」
「大……丈夫。ちょっと目が乾いたみたい」
零れた涙の理由は分からない。少なくとも彼に対して恐怖心を感じている訳では無くて。目元に乾いた感触を覚えて「ああ」と自身で納得した。
誠人はその言葉に頷くと、興味を読みかけの朝刊に移した。細かい文字列を、あの目線が追ってる。
「そ。ならいいけど、コンタクトって大変そうね」
「慣れれば意外とそうでも……ない、かな?」
「ふーん? それなら試してみようかな。今度」
薄く口端で笑った彼に、椿はくすぐったそうにはにかむ。これから視線を落とそうとした雑誌を手渡して、二人でコンタクトレンズ選び。吸いかけのセブンスターの火種が、静かに灰皿へと落ちた。
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