なにもない場合は、マリエになります。
はなのわ 2022了
おなまえ
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𖤣𖥧𖥣。𖤣𖥧𖥣。
ガラル全土を巻き込んだ騒動が少し落ち着いた頃、漸く同業者のロンドフラワーズも配達輸送をガラル郵便局から元のMCA貨物へ戻した。
暴落していた株や離れていた顧客はローズ元委員長の代わりに元チャンピオンであるダンデがマクロコスモスを引き継いだことを知ると瞬く間に元の大企業としての人気と名声を取り戻したのである。
おかげでマリエも本来のようにガラル郵便局で細やかな配達が指定できるようになり新オーナー万歳だった。
テレビでは引き継ぎの業務が滞りなく終わったのか、新チャンピオンの正式発足と来年度からのジムチャレンジについてを主に放映しているが、店内でつけているラジオではチャンピオンの手持ちのことなどはどうにも伝えにくいためか、最新のヒットチャートが流れてきていて作業に適していた。
今日は朝から近所の主婦が多く来店しては自宅用に切り花を買ったり娘の新トレーナー祝いだとかでミニブーケが多く出た。
昼時になるとイエッサンに店番を頼み、手早く2階で昼御飯を済ませたマリエは午後から入っていた予定を頭で組み立てながら店へ戻る。
イエッサンにお礼を言い、電話予約が入っていた大振りの花束を作るために次々と花をケースから出して作業台へ乗せていく。
昨夜午前中にあった電話では親友でありライバルがこの度新チャンピオンになったことへのお祝いを贈りたいとのことだった。
テレビで連日流されている彼女への贈り物。顔は知っていたためイメージはわきやすいが、電話口の相手にも使う花やイメージカラーを訊ねていった。
チャンピオンへの就任祝いなのだから派手に、けれど彼女の素朴な可愛らしさも引き出して、ビタミンカラーを重点にする。
大きな花束との依頼だったので予算も聞けば10000円までで作ってほしいとのことだったので充分豪華なものが出来る。
「あ、ニャスパーそれよりもう少し大きめの、そっちのアカシアにするわ」
指示通りわさわさと黄色の細かな花がついた枝を数本持ってきてくれたニャスパーの頭を撫で、それからオレンジ、白、赤のガーベラを沢山用意する。それから数本のグロリオサを使い大きな花束に高低差を出していくととても派手なビタミンカラーの花束が大まかに出来上がる。
時計を見ればもうそろそろ来店の時間だ。
メッセージカードを挿せるようにと一応真ん中へ針金を巻き込んでおく。いらなければ抜けばいいだけだ。
それからラッピングシートを用意していればドアベルがカランコロンと鳴って来店を告げた。
「いらっしゃいませ」
店前にいたヒメンカに気を取られていたのか、店内から声をかけられて浅黒の肌の少年は驚いたように肩を跳ねさせた。
「っ、こんにちは! 電話でお願いしてたホップです」
「はい、お待ちしておりました。こちらがある程度作らせていただいたものですが」
慌ててカウンターへ向かってきたホップへ粗方完成していた花束を持ち上げて見せれば「おお」と歓声が上がる。
その反応に店主は目尻を下げて微笑む。
「大きさはこれくらいでよろしいですか? 何かご要望がございましたら追加や間引きも致しますよ」
繊細な黄色がわさわさと動きその中心には沢山のビタミンカラーのガーベラが一つの大輪の花のように咲き乱れる。全体に散りばめるように差し込まれた赤く燃えるグロリオサは可愛らしいだけの花束の印象を抑えてくれていて、ホップはこれで充分だと思った。彼女に、ユウリによく似合う可愛らしさも強さも備えた花束だ。
「いや、これで充分だけど…そうだなぁ。うーん」
「どうでしょう? 例えばここに緑を差し入れても締まりがよくなりますし、ホワイトカラーのレースフラワーやカラーを入れても柔らかい印象になりますが、このままでよろしいですか?」
「緑…」
店主の提案に呟いたホップはケースの中にあるグリーンリーフのゾーンに目を向けると「あれも大丈夫なのか?」と3つから5つに先が別れた蔓性の葉を指す。
「勿論。アイビーは緑の中でも白筋があるものも葉によってはありますし、締まりもよくなり柔らかさも兼ねるうえ、アカシアとの相性がいいので素敵なシャンペトルブーケになりますよ」
「本当か! 難しいことはよくわからないけど、良くなるんならそれでいいぞ!」
ニャスパーがいくつかケースからアイビーを取り出して作業台へ置くと、それをマリエが丁寧に花束へ織り込んでいく。
「メッセージカードはお書きになりますか?」
「うーん、それは別にいいぞ。俺は伝えたいことは自分の声で伝えるから」
「それは素敵ですね」
そっとスタンドを抜いて花束を作り上げていく。
保水処理をして予め決めていたラッピングシートと不織布で巻くと、オフホワイトのシースルーリボンとラフィアリボンを重ねてループにすれば完成だ。
出来上がった片手で抱えられる花束を見てホップは何度も感謝を述べ自分が貰ったかのように目を輝かせる。会計を手早く済ませながら紙袋を用意したマリエは、ふとホップへ質問をする。
「アカシアは、お相手のお好きな花なのですか?」
アカシアだけは、電話で伝えられていた。
黄色くて粒々した花を入れてほしいとの要望だけでは見当がつかず、細かく聞いていって導きだした花だった。
会計を終えたスマホロトムをしまいながら、ホップは頷く。
「あいつの実家の庭、花が沢山あるんだ。ユウリの母さんが好きらしくて。それで話してた時に食べ物の話しになっていって…なんとかサラダが好きって言ってたんだ。その花の名前がついたサラダで、その花も可愛くて好きって」
「なるほど。ミモザサラダですね」
「そうそうそれだ! 確か引っ越してくる前にいたカロスで食べたとかなんとか…っと話してる場合じゃないな! ユウリ今忙しくて時間限られてるんだ」
「あら、申し訳ありません。ではこちらを、どうもありがとうございました」
大きな紙袋へ入れた花束は黄色の花先が少しだけ顔を出している。
崩さないようにか、慎重に受け取ったホップはにかりとヒマワリのように笑うとマリエへ何度も礼を言って、入り口にいたままのヒメンカにも「ありがとうな!」と叫んで急いでタクシーを呼んで乗り込んでいった。
𖤣𖥧𖥣。𖤣𖥧𖥣。
*アカシア/友情、秘密の恋
*ガーベラ/前向き、常に前進、限りなき挑戦(赤)、冒険心と我慢強さ(オレンジ)、希望(白)
*グロリオサ/栄光
*アイビー/友情、永遠の愛