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他雑多


アレ、ほら、アレだよ。

俺が指をさす方向には派手に煌めく星があった。こんなもん、何が綺麗なのかよくわからない。けれど隣で腹を出して寝転がっている俺より一回りも小さいこいつはそれを喜ぶ。
ただ作られた模型の一つの偽物の星なのに。
俺にとっては心底どうでもいいし、あんなもの生きる上で不必要だしなくても困るもんじゃない。
けれど隣のシロが、なにより大事なシロが喜ぶから。

教えてやろうと思ってフロントガラス越しの天へ向けて指をさしたのに、シロは深い夢の中だった。
すぴーすぴーと間抜けな寝息をたてて、たまにへへへ、と笑って涎を啜る。
本当に、アホ丸出しでだらしない。それなのに、柔らかい感情が俺の中を駆け巡る。


「シロ」 


声をかけたところで、微動だにせず起きる気配も皆無。
俺はシロが放り出している無防備なその細く柔らかい両手を握り締めた。上から覆い被さるように、白い掌を見せていたそれに、指を絡めて握り込む。
起きるか?と思ってシロの顔を凝視したところで、そのアホ面はアホ面のまま。その黒くまん丸の目は開かないし、薄い唇から漏れるのは俺の名前じゃなくて寝息ばかり。

つまんねぇ。


「おい、シロ。起きろよ。星、出てんぞ」


呼び掛けても、何が面白いのか、ひへっと笑っただけだった。
俺は苛立つ。
起きてるときだって寝てるときだって、いつだって俺の中はシロでいっぱいで、それなのにシロときたら俺の事なんか気にも留めないようにふわふわひらひらと宝町を飛び回る。

鼠に一度「おめぇよ、クロよ。そろそろシロを手放したらどうだ」と言われたが、冗談じゃねぇ。手放してたまるか。
それにほら、俺が手放してみろよ。シロは途端に死ぬぜ。
飛び回ることが出来ても、喧嘩が弱いシロはゲリラ戦法しかできない。それも俺あっての戦法。

俺がいなきゃ飯も食えねぇし、縄張りも守れねぇし、風呂だってまともに入んねぇし、それに好きな腕時計だって集めることが出来なくなる。

ほら、な。シロは俺がいなきゃ生きてけねぇんだ。
俺だってシロがいなきゃ生きる意味なんかねえし。

なあ、シロ。
俺達、2人で一つだ。
もう二度と、離れてたまるかよ。

現にアレだろ?藤村達に保護されたシロは発狂したって話じゃねぇの。

ほら、ほらな。

ググッと握り込んだ手に力を入れる。シロの眉間にしわが寄った。
んんん、とうなり声が聞こえる。
苦悶の表情のシロを上から見下ろして、俺は舌なめずりをひとつ。
やべぇ、すげーやらしい。


「シロ」


下半身にタオルケットをかけて寝ているシロに、ギアを乗り越えて完璧に覆い被さる。

俺の少し首を擡げた股間をシロの股間へタオルケット越しに押し付ける。
ちら、と視線を上へやると、はだけたシロの腹。薄っぺらい腹が夜の車の中、薄暗く白く浮いている。
その生々しい視覚にくらりとする。

おい、俺。
やめとけ寝込みはさすがに駄目だろ。シロに嫌われるぞ。


「…っは、シロは俺のこと嫌いになんかなんねーよ」


自問自答も一刀両断。

シロは俺を嫌いなんじゃなくて、性行為が苦手なんだ。
そりゃそうだ、まだ子供だぜシロは。

銭湯で自分のちんこの先っぽ摘んで「ちんちん、やばい」とか言って笑ってる奴だぞ。
マジ、そういうのですら可愛いく見えるのは末期だと自分の事ながらそう思う。
とりあえず、シロの精通がくるまで俺はひたすらシロをオカズにマスかくしかねぇわけだ。たまに素股させてもらうけど。
出来るなら口でしてもらいてぇけど、シロはそれが苦手らしいから、無理強いはしない。

ああ、想像してたら色々やばい。
半勃ちだったのになんかガチガチんなってきた。

何だっけ、俺何でシロにまたがって覆い被さってんだっけ。


「…あー、そうだ。星だ」


シロのために、と思ってシロを起こそうとしてたのに、自分が起きる羽目になるとは。
くそ、今この状態で素股させてくれとか言ったら、それこそ明日一日機嫌悪いままだぞ。

仕方がない。
するり、と名残惜しくシロの掌を解放する。
随分握っていたせいか、手汗が酷い。冷たい空気がすーっと手の熱をさらった。

最後に、一度だけシロの下半身に自分のをぐりっと押し付けてから離れた。


「くっそ、さっさと大人んなれよシロ」


シロが聞いたらそれこそ「クロ意味わかんなーい」とか眉を顰めながら言われそうな言葉を捨て台詞かのように吐いて、俺は車から降りた。





結局の所、俺はキミを汚して汚して愛したいらしい。



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