他雑多
!醜草生きてる設定。
大晦日。
山寺の麓の町にある医者の家で笹百合とその子が女医達から祝いを受けていた。
「ほんっま可愛えなぁ」
「赤ん坊は白くていいな」
「肌が?」
「椿あほやな!その流れは腹や腹!」
「心だ!このバカモノどもめっ」
「ふふ」
嬉しそうに赤子を抱き直した笹百合に、鳳仙は少し残念そうな顔をする。
「醜草も、来れたら良かったのにな」
そうポツリと呟くと、椿が空になった徳利を投げ付けた。見事に鳳仙の頭に命中する。
「馬鹿だねぇ先生。醜草は尼寺から出たら死んじまうんだよ」
「わかってるよ!」
いたたた、と頭を摩る鳳仙を見ながら笹百合は赤子を撫でて笑う。
「尼寺に帰れば、会えますから」
今はいいんですと笑う笹百合に、竜胆が酒を呑みながら、しかしと紡ぐ。
「当主である笹百合が出歩いてええん?敵対者はあんまおらんって分かってても、まだ尼寺には沢山…」
「大丈夫ですよ。殆どの方が、私を認めて下さいました。華鬘様の口添えもあり、醜草のことも解って下さいましたし」
腕に抱く赤子の額に口を付け、柔らかく笑う笹百合に竜胆や椿の口許も緩くなる。
そんな中、鳳仙と日輪は赤子をじぃっと見つめ頷いた。
「あの、笹百合さん」
「はい?」
「赤ん坊の名前は、決まったんですか?」
「…名前…」
キョトンとした笹百合に、二人は肩を組み笑いかける。
「アレでしたら俺達がかんがぐえ!」
言い終わる前に椿の肘鉄で鳳仙の頭が机に叩き付けられた。
「ほんっとにお節介だねぇ先生。寺院当主の子供に春画の大先生が名付け親じゃ面目立たないだろう?」
「絵師だ!」
「…鳳仙様、お気持ち感謝いたします。ですが、この子の名前は、醜草と二人で考えたいのです」
「あ…そうですよね、すみません…なんか」
困ったように笑った笹百合に、鳳仙は自分の口走った事が恥ずかしくなり、頭を掻く。
日輪は日輪で竜胆に睨まれて落ち込んでいた。
「…雪だ」
何気なく、椿が窓を見遣るとふわりふわりと牡丹雪が降ってきていた。
ガーデニアの胸飾りを君に贈る
笹百合は立ち上がり、荷物と赤子を抱え直して頭を軽く下げた。
「私はこれでおいとましますね。竜胆さん、お邪魔いたしました」
「なんやもう帰るん?雪降ってきたから一人はあかんなぁ」
「笹百合、私らが送ってくよ」
笹百合と同じ様に立ち上がった二人に、慌てて首を振る。
「い、いいですよぅ!大丈夫です!」
「いいんだよ。ほら、先生もはやく」
「あ、ああ解ってる」
「日輪、上掛けとか用意してや」
四人は先に玄関に立ち、笹百合を振り返る。
それに、笹百合も笑って頷いた。
***
しんしんと降る雪の中、長い長い階段を歩く。
もう少しで、尼寺の門が見える。綺麗に直された門はあの事件があったのか疑うほど。
「あ」
尼寺の門は開いていて、その中に人が一人佇んでいた。その姿を見て、笹百合の顔が綻び足が速くなる。
「醜草っ」
「お帰り、笹百合」
「ただいま」
息を切らしつつ門にたどり着いた笹百合をしっかりと抱きしめて、彼女の柔い腕から赤子を抱えあげる。
そして大事な妻を送ってくれた四人に、醜草は頭を下げた。
「…ありがとう、ございました」
「ありがとうございます!」
「気にすんな!いい正月を!」
「あ、名前をつけ」
「はいはいほな帰ろなぁー先生」
ズルズルと引きずられるように連れて行かれた鳳仙を見て、二人は苦笑しながら庵へ足を向けた。
(醜草、醜草、名前はどうしよう?)
(そうだな。……桜玉 はどうだろうか)
了
大晦日。
山寺の麓の町にある医者の家で笹百合とその子が女医達から祝いを受けていた。
「ほんっま可愛えなぁ」
「赤ん坊は白くていいな」
「肌が?」
「椿あほやな!その流れは腹や腹!」
「心だ!このバカモノどもめっ」
「ふふ」
嬉しそうに赤子を抱き直した笹百合に、鳳仙は少し残念そうな顔をする。
「醜草も、来れたら良かったのにな」
そうポツリと呟くと、椿が空になった徳利を投げ付けた。見事に鳳仙の頭に命中する。
「馬鹿だねぇ先生。醜草は尼寺から出たら死んじまうんだよ」
「わかってるよ!」
いたたた、と頭を摩る鳳仙を見ながら笹百合は赤子を撫でて笑う。
「尼寺に帰れば、会えますから」
今はいいんですと笑う笹百合に、竜胆が酒を呑みながら、しかしと紡ぐ。
「当主である笹百合が出歩いてええん?敵対者はあんまおらんって分かってても、まだ尼寺には沢山…」
「大丈夫ですよ。殆どの方が、私を認めて下さいました。華鬘様の口添えもあり、醜草のことも解って下さいましたし」
腕に抱く赤子の額に口を付け、柔らかく笑う笹百合に竜胆や椿の口許も緩くなる。
そんな中、鳳仙と日輪は赤子をじぃっと見つめ頷いた。
「あの、笹百合さん」
「はい?」
「赤ん坊の名前は、決まったんですか?」
「…名前…」
キョトンとした笹百合に、二人は肩を組み笑いかける。
「アレでしたら俺達がかんがぐえ!」
言い終わる前に椿の肘鉄で鳳仙の頭が机に叩き付けられた。
「ほんっとにお節介だねぇ先生。寺院当主の子供に春画の大先生が名付け親じゃ面目立たないだろう?」
「絵師だ!」
「…鳳仙様、お気持ち感謝いたします。ですが、この子の名前は、醜草と二人で考えたいのです」
「あ…そうですよね、すみません…なんか」
困ったように笑った笹百合に、鳳仙は自分の口走った事が恥ずかしくなり、頭を掻く。
日輪は日輪で竜胆に睨まれて落ち込んでいた。
「…雪だ」
何気なく、椿が窓を見遣るとふわりふわりと牡丹雪が降ってきていた。
ガーデニアの胸飾りを君に贈る
笹百合は立ち上がり、荷物と赤子を抱え直して頭を軽く下げた。
「私はこれでおいとましますね。竜胆さん、お邪魔いたしました」
「なんやもう帰るん?雪降ってきたから一人はあかんなぁ」
「笹百合、私らが送ってくよ」
笹百合と同じ様に立ち上がった二人に、慌てて首を振る。
「い、いいですよぅ!大丈夫です!」
「いいんだよ。ほら、先生もはやく」
「あ、ああ解ってる」
「日輪、上掛けとか用意してや」
四人は先に玄関に立ち、笹百合を振り返る。
それに、笹百合も笑って頷いた。
***
しんしんと降る雪の中、長い長い階段を歩く。
もう少しで、尼寺の門が見える。綺麗に直された門はあの事件があったのか疑うほど。
「あ」
尼寺の門は開いていて、その中に人が一人佇んでいた。その姿を見て、笹百合の顔が綻び足が速くなる。
「醜草っ」
「お帰り、笹百合」
「ただいま」
息を切らしつつ門にたどり着いた笹百合をしっかりと抱きしめて、彼女の柔い腕から赤子を抱えあげる。
そして大事な妻を送ってくれた四人に、醜草は頭を下げた。
「…ありがとう、ございました」
「ありがとうございます!」
「気にすんな!いい正月を!」
「あ、名前をつけ」
「はいはいほな帰ろなぁー先生」
ズルズルと引きずられるように連れて行かれた鳳仙を見て、二人は苦笑しながら庵へ足を向けた。
(醜草、醜草、名前はどうしよう?)
(そうだな。……
了