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op


仕事と言う名の雑用が全て終わり、疲れた体を引きずって与えられている小さな部屋へ戻れば、そこには赤髪がいた。
同じ量の仕事をこなしてるはずなのに、こいつはまだ全然元気ですと言った風に部屋に入った俺へ大きく手を振った。


「バギー!やっと終わったのか!」


うっせぇよ、と視線だけ赤髪に向けて返事も返さずに自分のボックスベッドへ倒れ込む。

今日は本当疲れた。俺と赤髪は今日は違う持ち場だったから、こいつが何の仕事をしたかなんざ知らないが、俺は荒れて解れたロープの編み直しだった。
ささくれ立った縄が指に刺さるわ、炎天下の中やってて熱中症になりかかるわ、ブロンズさんから途中からかわれて作業中断するわ、赤髪が居ないから簡単に終わるだろうと思ってた仕事も随分と時間がかかってしまった。
途中でレイリーさんが水くれたから嬉しすぎて泣くかと思った。こんな末端の見習いにも気楽に声をかけてくれるレイリーさんが俺は好きだ。
船長も好きだけど、憧れるなら断然レイリーさんだな。

ベッドの薄っぺらいシーツに顔を埋めたまま、じっとしていると急に背中が重くなった。


「なっん、だ!」


ぐるりと首を回して見てみれば、派手馬鹿赤髪が俺の背中へのし掛かってニマニマしている。
ぶちりと俺の中の何かが切れた。

勢いよく起き上がり、体を反転させれば赤髪は振り落とされて俺の隣へ顔を埋めた。


「テメーなんなんだ!俺様は派手に疲れてんだ!」

「はっはっは!バギー!なぁバギー!そんな怒るなって!」

「おこらいでか!」

「俺な、いいもん持ってんだよ」


思わず叫ぶが、赤髪は知らぬ振りをして俺から少し離れて自分のベッドの下を漁ってる。
なんだ、何が出てくるんだ。いいもんでベッドの下とかゲスイ考えしか出てこねぇぞ。


「あっ、これ!なぁバギー!」

「あぁ?」


再び俺の前へ走ってきた赤髪は、ばさり、と赤い布を広げた。


「お、ま、これ」

「な、いいだろ!船長がさ、古くなったから捨てるとか言っててさ!ならくださいって言ったらくれたんだよ」


それは凡そ埃臭いベッドの下に置いてあるべきモノじゃないモノだった。
赤い布は船長のコートだ。少し薄汚れてて袖が解れてるけど。
俺は思わずコートの裾を握りしめた。


「いいな、お前これ貰ったのか!」

「おお!」

「…着ねえのか?」

「あ、そうだよな!」


ぱ、と手を離して赤髪を見ると、にぃっと笑ってから赤髪はばさりと音を立ててコートを羽織った。
赤いコートと赤い髪で真っ赤だ。


「…ぶっは!」


でも、いかんせん赤髪がチビだからか、コートを引きずってるし袖も余ってる。大人の服を子供が着てる。
俺が思わず吹き出せば、赤髪は顔まで真っ赤にした。やめろソレ以上赤くなるんじゃねぇよ面白すぎる。


「な、わっ笑うな!」

「だってサマにならねぇ!コートに着られてんじゃねぇか!」


ギャハハハハ!と腹を抱えて笑えば、赤髪は唸ってから、コートを脱いで俺にかけてきた。
ばさりと音を立てて俺の上へデカくて赤いコートが降ってきて、俺は思わずそのまま固まってしまう。すると赤髪は無理矢理俺の腕へコートの袖を通してきた。
そしてぐいっと腕を引かれ、ベッドから立たされる。

ずるりと重いコートが床へ落ちる。
赤髪を見ると、俺の腕を掴みながらにんまりと笑った。


「バギーだってコートに着られてる。俺より小さいし」

「うっせぇ!ばか!」


苛立ち、掴まれてた腕を振り払う。
そのまま俺は逃げるように部屋から外へ出ると、ばったりとレイリーさんにあった。


「あ」

「よぉ、バギー。なんだ?そんな格好して。それは…ロジャーか?」


レイリーさんは笑いながら俺の頭に手を置いた。


「あ、はい。これ、あの、赤…シャンクスの馬鹿が無理矢理着せてきたんす」


そう言いながら、ぶらりと余りまくった袖を揺らす。


「んー、そうだな…」


何かを呟いたレイリーさんを見上げようとすれば、その前にレイリーさんに帽子を取られた。
慌てて手をあげたけど、帽子は奪い返せず、レイリーさんの手の中。横に高く括って、帽子の中に纏めてた髪が揺れて、髪先が右頬を擽った。


「うん、こっちのがいいな。ロジャーのコートにこの帽子はあわないからな」

「れ、レイリーさん!返してくださいよォ!」

「綺麗な髪してんだから、帽子なんか被んなくていいじゃないか」


上に上げられてしまった帽子のためにジャンプしていたら、直ぐ近くの扉がばん!と凄い音を立てて開いた。
思わずそっちを見ると、赤髪がその勢いのまま走り寄ってきた。


「レイリーさん!何バギーと遊んでるんですか!」

「なんだシャンクス。羨ましいのか?」

「羨ましい!」


思わず隣に来た赤髪の脇腹に思いっきり拳を叩き込んだ。


「いって!!」

「なァに気持ち悪い事言ってんだ!この派手馬鹿ヤロー!」

「だって!俺、船長にコート貰ったのバギーが喜ぶかなって思ったからだし、それに今日一日離れてただろ、だから夜は沢山バギーと話したかったし…なのにコートに着られてるとか言うし、でも、ばか!って言い方が可愛くて直ぐに動けなかったし、そしたらなんか帽子取られてレイリーさんと仲良くしてるし」


ぶつぶつと言い始めた赤髪に、レイリーさんは呆れたように笑って俺に帽子を渡してくれた。
俺はそれを握りしめて隣の赤髪を見ていると、レイリーさんは俺の頭を撫でて仲良くしろよ船長と笑って去っていった。


「せん、ちょーって…」

「バギー今コート着てるからだろ…て言うかなんかバギーが船長のコート着ると…やっぱ可愛いな!」

「ふざけんなァ!!」  


今度こそそのにやけた横っ面に拳をねじ込んだ。




(バギー髪の毛そのまんまでいいじゃんかよーサイドテール可愛いのにー)
(可愛いとか言ってんじゃねェ!!)


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