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里中が深く静かになる日、その日はたった一人の、金色の人間が産まれた日。
望まれて産まれたのに、育てば憎悪を向けられる存在となった子。
護ってくれるはずの親は早すぎる死で、傷つけられる我が子を見ることだって出来ない。
そんな可哀想な子が産まれた日は、里が壊れた日。
誰かが言った「この日はあいつの姿を見なくていい」と。
誰かも言った「空気の読める子でよかったわ、本当に」と。
彼はこんな言葉や感情を聞かぬ振りして、見ぬ振りして、心も耳も、口も閉ざして、自分の家という名の城へ閉じこもる。たった一日だけの籠城だ。
自分が産まれた日は哀悼の日。
誰も喜んではいけない日。
静かな追悼に目を閉じる日。
そうやって、とても小さい頃から刷り込まれて育ってきた彼は、彼自身に深い溝を作ることとなった。
普段の彼は天真爛漫、馬鹿をやって笑われる。私から見れば里の道化のようなその行為も、彼からすれば自分を知らしめる重要なことらしい。
一度「やめなよ、笑われてるよ」と、我ながら冷たい声で言ってしまったとき、彼は私に「やめれば誰もオレを見なくなるんだってば」と笑ってみせた。
ああ、可哀想だ、と子供ながらに思ったのを覚えている。
彼の心はきっと轍まみれで。心無い大人に踏みにじられて、土足で荒らされて、きっと治りようのないグズグズの柔らかい心のままなんだ。
そこへ、私が不意にフォークを刺してしまったようだ。柔らかい心にそれは鋭く奥に刺さったに違いない。
私は自分の心も冷えていくのを感じた。
それからは、私だけでも、と思った。
私だけでも彼に優しくしよう、存在を認識して、一緒に歩んでいこう、と。
だから、私はこの日、1と0の並ぶ日。
里の中で浮いた人間となる。
誰もが深海のようになるこの日、私は1人、煩く鳴いて秋の空を飛び回る百舌鳥のように口を開く。
飛び回って彼の家へ行き、真っ白な顔をして佇む暗い金色を押し退けて、彼の部屋を好き勝手に飾りたてる。
「ケーキを食べよう」
「勿論蝋燭も立てて、大きい奴を」
「ラーメンだって食べよう」
「プレゼントだってあるよ」
「やりたいことも、好きなことも、全部しよう」
「手を繋いで、火影岩の上で里を見下ろそう」
「夜は一緒に月を見よう」
「季節外れの花火もしよう」
「出逢えて嬉しいよ」
「おめでとう、おめでとう、ナルト」
私が止まらない言葉の羅列を滑り落とすのを、彼は黙って聞いていて、それでも、皆にするように耳も心も閉ざすことはなくて。
私の言葉はちゃんと彼に届いている。
だって彼は、煩そうに、けれど嬉しそうにこんな私を見るんだ。
そして、2人では大きすぎるホールケーキの蝋燭に火をつけた私の横に並ぶ。ゆらゆらする部屋の中で、私の右手を撫でるようにしてから握って、私の右手を彼は自分の額へこつりと当てる。暫くそのまま、2人とも動かずに静かになる。
漸く手を降ろした彼は、目線をやっと私の目へ。
そして小さく静かに瞬きをしてから、すぐに大きな口を開いて「ありがとう」と笑い飛ばすんだ。
私も大きく頷く。
彼のたった1人の籠城は、私という間者で2人きりの一日籠城になった。
ゆらゆら揺れる淡い炎で光る、右目の下の、頬の上に滑る細い筋には、私は一度だって触れたことはない。
そしてたぶん、いや、きっと、これからも、ふれることはない。
【10/10のアイ】
(ナルトはさ、静かにしてる方が得するよ)
(はー?喋んなってことかってば?)
(口開くと煩いからモテないね)
(えええー!!!)
happy birthday to naruto! I luv u never.
了