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!玉依姫(五年) 2017/12了の元となった話です。
「……」
五月は自分の下駄箱を見て溜息をついた。
沢山の紙屑が入っていて、試しに一枚広げてみればそこには「しね」の文字。
どうせ他の紙屑も同じような内容だと検討をした五月は、纏めて鞄の中に流しいれた。
遠くで笑い声が聞こえたが、無視してトートバッグから出した靴に履き替え、上靴を代わりに中へ突っ込んで校舎を後にした。
早歩きで帰れば20分もないところにある自宅に戻ると、庭に行って鞄の中をぶちまける。
ドサドサと音がして中からノートと先程の紙屑が出てきた。
山になるように形を整えると、五月は一度部屋の中へ引っ込み、すぐに燐寸 をもって現れ、紙の山の前でしゃがんでジャッジャッと擦った。
シュボと音をさせて大きく燃え、すぐに小さな火になった燐寸 を山裾の所へ当て、暫くしてポイと投げ入れた。
パチパチと時折音を立てて紙が燃えていく。
五月はじっとその燃える炎を見てしゃがんでいると、後ろから頭を軽い力で叩かれた。
「いた」
「大人のいないとこで火遊びすんな」
「……火遊びじゃなくて焚火だし」
「じっと火を見てるとおねしょするぞ」
「しないわバカ狐」
叩いた張本人である三郎は、静かに五月の隣にしゃがむと焚火の中に手を突っ込み一枚、紙の端を掴んだ。
焦げたそれは白い部分しか残っていなくてノートの端なのか紙屑の端なのかわからない。
それをつまんだまま、くるくると裏表確認した三郎は、フっと息を吹きかけて焦げた紙端を消した。
「私達に言えば、全部終わるぞ」
「……言わない。私の問題だもん」
「…僕たちがいるから、そんなことになってるんでしょ?だったら原因は僕たちなんだから、言えばいいのに」
「やあ雷蔵」
いつの間にか雷蔵も五月の隣にしゃがんでいた。
三郎は五月越しに雷蔵を見てニコニコする。
「…いいの。二人が手を出したら、人が死ぬでしょう」
腕に口元を埋めながら五月がボソボソと言えば、三郎がポンっと頭に手を乗せる。
「殺すなというなら、手前で止める」
「そうだよ。加減はできるからね。ねえ五月、お願いしないの?」
両サイドから甘言を囁かれ、五月は思わず耳を塞いだ。
固く瞑った目からはボロボロと涙の粒が溢れて滑れ落ちる。
「…やめて、お願い…私、弱くなんてない…二人に助けてもらうほど、弱くなんてない…!」
ぎゅうっと幼い子供の様に縮こまる五月を見て、雷蔵と三郎は顔を見合わせ、仕方がないなと困ったように笑いあった。
三郎が焚火に手を翳して消火をすると、小さく蹲ったままの五月を雷蔵が軽々と抱きかかえて部屋の中へ運ぶ。
五月はぴくりとも動かず、そうされるのが当たり前かのように酷く安心して雷蔵に身を預けていた。
「仕様のない玉依姫さんだよね、本当」
「手がかかるのも愛おしいが、巫女としてもう少し自覚を持てば、他愛無い人のいじめに傷心することもないというのにな」
「三郎、それで悩むのが人なんだよ。脆いからこそ可愛いんだよ。宇迦之様も同じことを言うでしょう」
雷蔵が五月をソファの上に静かにおろし、固く瞑ったままの瞼の下をゆっくりと撫でる。
すこしだけ五月は身動ぎしたが、中々強情の様で瞼を持ち上げることはしなかった。
「…あの神はちょっと歪んでる。私、五月以外は別に可愛いとも思わないし」
「僕もそうだなぁ。五月が一等特別だよ。神使の狐に好かれるのは、全く困ったものだね」
「自分で言うなよなー…おい五月、私達はいつでもお前の味方だ。見返りも何も求めないから、お前の言葉だけを聞き入れよう。それまでは、黙っておいてやる」
「ふふ、宇迦之様が聞いたら叱られちゃうけど、本当にその通りだからね。もう嫌だと思えば、祟ることも殺すことも…五月を連れていくことも、してあげる。いつでも言うんだよ」
そう言うと、二人は五月の額を小さく撫でてから、空気に溶けていくように消えた。
パチリと五月は目を開く。
「……ばか…」
小さく呟いてすぐ、玄関から母の声が響いた。
-----------------------------------------
双忍、狐パロでした。
二人は宇迦乃御霊様=お稲荷様の神の使いである狐さんです。
これからなんやかんや練り直して玉依姫(五年) 2017/12了こうなりました。
了
「……」
五月は自分の下駄箱を見て溜息をついた。
沢山の紙屑が入っていて、試しに一枚広げてみればそこには「しね」の文字。
どうせ他の紙屑も同じような内容だと検討をした五月は、纏めて鞄の中に流しいれた。
遠くで笑い声が聞こえたが、無視してトートバッグから出した靴に履き替え、上靴を代わりに中へ突っ込んで校舎を後にした。
早歩きで帰れば20分もないところにある自宅に戻ると、庭に行って鞄の中をぶちまける。
ドサドサと音がして中からノートと先程の紙屑が出てきた。
山になるように形を整えると、五月は一度部屋の中へ引っ込み、すぐに
シュボと音をさせて大きく燃え、すぐに小さな火になった
パチパチと時折音を立てて紙が燃えていく。
五月はじっとその燃える炎を見てしゃがんでいると、後ろから頭を軽い力で叩かれた。
「いた」
「大人のいないとこで火遊びすんな」
「……火遊びじゃなくて焚火だし」
「じっと火を見てるとおねしょするぞ」
「しないわバカ狐」
叩いた張本人である三郎は、静かに五月の隣にしゃがむと焚火の中に手を突っ込み一枚、紙の端を掴んだ。
焦げたそれは白い部分しか残っていなくてノートの端なのか紙屑の端なのかわからない。
それをつまんだまま、くるくると裏表確認した三郎は、フっと息を吹きかけて焦げた紙端を消した。
「私達に言えば、全部終わるぞ」
「……言わない。私の問題だもん」
「…僕たちがいるから、そんなことになってるんでしょ?だったら原因は僕たちなんだから、言えばいいのに」
「やあ雷蔵」
いつの間にか雷蔵も五月の隣にしゃがんでいた。
三郎は五月越しに雷蔵を見てニコニコする。
「…いいの。二人が手を出したら、人が死ぬでしょう」
腕に口元を埋めながら五月がボソボソと言えば、三郎がポンっと頭に手を乗せる。
「殺すなというなら、手前で止める」
「そうだよ。加減はできるからね。ねえ五月、お願いしないの?」
両サイドから甘言を囁かれ、五月は思わず耳を塞いだ。
固く瞑った目からはボロボロと涙の粒が溢れて滑れ落ちる。
「…やめて、お願い…私、弱くなんてない…二人に助けてもらうほど、弱くなんてない…!」
ぎゅうっと幼い子供の様に縮こまる五月を見て、雷蔵と三郎は顔を見合わせ、仕方がないなと困ったように笑いあった。
三郎が焚火に手を翳して消火をすると、小さく蹲ったままの五月を雷蔵が軽々と抱きかかえて部屋の中へ運ぶ。
五月はぴくりとも動かず、そうされるのが当たり前かのように酷く安心して雷蔵に身を預けていた。
「仕様のない玉依姫さんだよね、本当」
「手がかかるのも愛おしいが、巫女としてもう少し自覚を持てば、他愛無い人のいじめに傷心することもないというのにな」
「三郎、それで悩むのが人なんだよ。脆いからこそ可愛いんだよ。宇迦之様も同じことを言うでしょう」
雷蔵が五月をソファの上に静かにおろし、固く瞑ったままの瞼の下をゆっくりと撫でる。
すこしだけ五月は身動ぎしたが、中々強情の様で瞼を持ち上げることはしなかった。
「…あの神はちょっと歪んでる。私、五月以外は別に可愛いとも思わないし」
「僕もそうだなぁ。五月が一等特別だよ。神使の狐に好かれるのは、全く困ったものだね」
「自分で言うなよなー…おい五月、私達はいつでもお前の味方だ。見返りも何も求めないから、お前の言葉だけを聞き入れよう。それまでは、黙っておいてやる」
「ふふ、宇迦之様が聞いたら叱られちゃうけど、本当にその通りだからね。もう嫌だと思えば、祟ることも殺すことも…五月を連れていくことも、してあげる。いつでも言うんだよ」
そう言うと、二人は五月の額を小さく撫でてから、空気に溶けていくように消えた。
パチリと五月は目を開く。
「……ばか…」
小さく呟いてすぐ、玄関から母の声が響いた。
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双忍、狐パロでした。
二人は宇迦乃御霊様=お稲荷様の神の使いである狐さんです。
これからなんやかんや練り直して玉依姫(五年) 2017/12了こうなりました。
了