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最近、 綾が会ってくれなくなった。
綾というのは、僕のことを怖がらずに一緒に遊んでくれる、僕より少し年上の優しい女の子。なんで僕のことを怖がらないのか聞いたときに、笑顔で「だって、我愛羅かわいいよ。それに私も一緒。特別なんだよ」と言っていた。
綾は灼遁使いの一族とかいう要するに血継限界の一族らしくて、一族の人間以外の友達があまりいないらしい。そして僕は里の特別で、夜叉丸しか周りにいなかった。
いつも通り公園で一人でいたら、そこに偶然綾が来てくれた。みんな逃げるのに綾は一緒に遊んでくれて、優しくて面白くて可愛い綾のことが、僕はすぐに大好きになった。
綾はその日あったことや家のこと、一族のことも全部僕に教えてくれていた。
なのに、そんな綾が今、僕と会ってくれなくなった。
一週間前からやたら色々と質問してきていたけど、その次の日にはぱたりとやんで、今は少しも会えない。
綾の影すら見えなくて。
綾は僕より大きいし、特別な一族の子供だから、もう任務にでも就いていて大変なのかな、と思うようにするしかなかった。
でも、前は朝から暗くなるまで一緒にいたのに。
「…やっぱり、なんか、しちゃったのかな」
任務なんて、そう考えても急にこんなに会えなくなる筈はない。
それに綾なら何か一言言ってくれる。
そう、たとえば、もしかしたら僕がなにかしてしまって、それで怒らせたのかもしれない。
それとも、里の偉い人たちに僕のことで何か言われたのかな。それともそれとも。
ああ、考え出したらキリがない。
だっていわれ無き悪意を向けられることは慣れてしまっていて、いつの間にか怖がられていることにも慣れてしまっていて。
でもやっぱり嫌われることには慣れなくて、それが信頼していた綾からだと尚更怖くて痛くて。
「…あら!………我愛羅!」
「!」
久し振りに聞いた綾の声は遠くに聞こえた。
恐る恐る顔を上げると、嗚呼何だ、遠くに聞こえる筈だよ。
だって周りには、僕の周りには砂の壁が出来ていた。きっと外からは、まぁるい砂の塊。
不安になると僕の周りに壁を作る砂。
砂。こいつのせいで、僕の周りからみんないなくなる。なくなっちゃえばいいのに。
こんな砂。
「我愛羅!いるんでしょー?中に。砂、どけてよ」
もう一度聞こえた綾の声は、少し楽しげに弾んでいた。それに、何故だかムカムカする。
なんだ。会えなくて、綾と遊べなくなって、泣いていたのは僕だけだったのか。なんでそんなに楽しそうなの。
「……なに。僕に、会うなって言われた、んでしょ?」
じっと、砂の壁を見つめながらそこにいるのであろう綾に向かって話しかければ、綾の足が、じゃりっと砂を踏んだ音がした。
「なにそれ。しらないよそんなの。誰かに言われたの?」
「……だって、」
綾、会いに来なかったじゃないか。
「とにかく!!」
どんっと鈍い音がした。
もしかしたら、僕の砂の壁を叩いたのかな。
ぼんやりと考ると、砂がざわめいて、綾の方へ向かっていく感じがして、急いで止めた。
ダメだダメだ!綾を傷つけるのは絶対ダメ!また、僕一人に。
ずしゃり、と重たい音がして砂の壁は溶けた。
光が僕の顔の前にさして、吃驚して無理矢理作られた穴を見つめる。砂の穴の縁が微妙に煙と音を立てて溶けている。
穴の向こうには、少し傷付いた綾がいた。
壁に、攻撃なんかするから、無意識に砂が反撃したんだ。
僕、僕、最低だ。
「な、なんで……!」
「もう!我愛羅がさっさと砂、どけてたら無理矢理することなかったのに。私、まだあまり灼遁上手くないんだから」
いてて、と笑いながら僕に手を差し出した。
穴から伸びる、綺麗な白い手にはうっすらと赤みの差す擦り傷ができていた。
申し訳なく思うけれど、それでも、暗闇の中に光と共に差し伸ばされる綾の白い腕は、とても綺麗で、現実離れしていて。
思わず素直に手を取った。
途端に崩れる砂。
視界が開けると、いつもの変わり映えしない僕の部屋に、綾と、それから綾の後ろに大きな包み紙。
「んふふ、引き籠もりの我愛羅クン!今日は引きこもっちゃだめだよ。何たって……」
じゃじゃーん!と繋がったままの僕の腕を引いて、大きな包み紙の前に押し出された。
「…な、なに?」
「ちっ、ちっ、ちっ!察しが悪いわよ我愛羅クン!今日は何の日だー?」
「……きょ、う?……なんか、あったかな」
そう言えば、見事に綾の眉間にしわが寄った。
それに慌てて、ごめんと謝れば、綾からは大きな溜め息。それにもっといたたまれなくなって、思わず俯いてしまう。すると腕は離された。
それに少し寂しくなって、もっと苦しくなって、泣きそうになる。
「んもう!」
ぐいっといきなり視線があがって、綾の目と視線が絡む。
僕の顔に綾の手が添えられて、無理矢理上を向かされているらしい。
かっと顔に熱が集まるのがわかった。
「今日は、我愛羅の誕生日。生まれた日でしょ?」
そう、少し悲しそうに笑った綾は僕の頭を撫でた。
「忘れたりしないで。我愛羅が我愛羅として生まれてきたこの日を。生まれてきてくれてありがとう、会えてとっても嬉しいよ」
だからね、プレゼント!とさっきの悲しそうな顔が嘘のように、ぱっと笑顔が咲いた。
僕は、綾の言葉と、笑顔と、プレゼントと、それとそれと、もう色々なものが重なって嬉しくて、視界がブレて仕方がなくて、どもりながら小さく小さく、「ありがとう」と言うので精一杯だった。
【愛しているよ、小さな君へ】
(な、なんで会えなかったの?)
(プレゼント探すので忙しくってね!ごめんね。ほらあけてあけて)
(お、おおきいくまさんだ!!)
happy birthday gara!2013-1/19
了