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彼がいなくなるのだ。
さっきまで喋っていた彼が、跡形もなく消える。終わりは目に見えて解るし、それを止める術なんて私は知らない。
彼は何故敵だったのだろう。昔は純粋だった彼を悪意に染めて、犯罪者にしたのは何なんだろう。周りの人間か、環境か、世界か。
私は何故、彼を愛してしまったんだろう。
「死ぬの」
ポツリと零せば、彼は怪訝な顔をして私を見た。
そのあどけない顔は彼をより一層幼くさせる。私の好きな顔の一つだ。
「…だろうな」
ボロボロと崩れていく彼に、声が出せず指先が震える。
「…情けねェ顔してんじゃねぇか。さっきまでの威勢はどうした?」
確かに、彼がカンクロウの傀儡の中に閉じ込められた時は、叫び散らして彼を無理矢理引きずり出した。
カンクロウも渋々傀儡を開けたし、周りの連合軍も顔に不満がでていたが、私はそれを無視して彼を助け出した。
カンクロウが開けたのも、周りが納得しないながらも大人しくなったのも、もう彼が抵抗できる力が無いと知っていたからだ。
だからもうひとつの傀儡、未だ喚き散らして暴れているデイダラは誰も開けない。
「……嫌だ」
「…ああ?」
「消えないで、消えないでよ。残って私達と一緒に」
「無茶言ってんじゃねぇよ」
震える声は、ハッキリとした声で遮られた。
拳を握りしめてから広げると、指先がじわりと痺れる。私はゆっくりと近付き彼の崩れかけの指を握る。体温なんて感じられないけれど、なぜか温かく思えた。
「いやだよ…!っやだ…!…なんで…!」
「俺は元々こっち側の奴だ。それに、もう死んでんだよ」
「ならなんで生き返ったりするのよ!!止めてよ!私っ、やっとやっと…うぅっ、っサソリを忘れることが出来てたのに!どうして今更こんな…っ…私を…遺して逝かないでよ…!」
彼の手首を掴み、必死に叫ぶ。
泣きたくないのに涙が勝手に滑り落ちる。視界がぼやける。
やめてよ、ちゃんと彼の顔を目に焼き付けておきたいんだから。
「……綾」
「な、に…やだよサソリ、もう独りは嫌だ…三代目様もサソリもいなくなってチヨ様だっていなくなった!ずっと一緒だと思ってたのに、なのに、あんたは勝手にいなくなって勝手に死んだ!」
「綾、消えると…解っていて言うのは酷だと解ってるが……愛していた」
ひ、と息が止まり、変に吸い込んだ。
もう顔が見えない。身体は半分以上崩れてしまった。
「やめてやだ…崩れないで、やだ……っ、私も連れてっ」
「綾様!アンタは生きるんじゃん!」
カンクロウの叫び声が私を止める。
止めてよ、もう私、砂に未練なんて無いんだから。
「…カンクロウの言う通りだ、人間の心中なんざ美しくねぇ」
「……アンっタの、せいで、ひっ、婚期逃したん、だから…っ…」
そういえば、彼は笑った。
その瞬間、一気に崩れ落ちる。
遺ったのは、全く知らない人間と、塵芥。
倒れそうになった私を寸でで抱えたカンクロウの腕に爪を立て、頭がグラグラするまで泣き叫んだ。
過ぎるのは彼の最期の笑い顔。
【あなたのいない明日しか来ないのなら世界なんて消えてしまえばいいのに】
お題hmr
了