キバ(nrt) 2013/10了
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キバとのプチデートが一昨日。
昨日はまだ続いていた頭痛を無視して学校に行ったが、今朝は布団から動けそうになかった。
中々降りてこない私を心配したお母さんが部屋を覗きに来てくれて、ベッドで唸る私を見て慌てて体温計やら氷嚢やらを持ってきてくれた。
体温計で計った結果、なんとまぁ38.9゚。私にしてはかなり高熱だ。
風邪でも引いたのかしらねぇ、と首を傾げたお母さんに、大丈夫だからと手を振った。
「じゃあ、薬置いておくから、ちゃんと飲むのよ?お母さん仕事行かなきゃいけないから…ねえ、本当にお母さん休まなくて大丈夫?」
「うん…。大丈夫…いってらっしゃい」
「…行ってきます」
渋るお母さんをあまり力の入らない手をフリフリして、行っておいでの合図をすれば、心配そうな表情はそのままに、仕事に向かうためゆっくりと私の部屋を出た。
お母さんが階段を下りる音、玄関を開けて閉めて鍵を掛ける音がやけに耳に響く。
天井を見上げ、寝相を整えて布団を引き寄せると、ちょっと体が沈んだ気がした。
頭が重くて目の前がゆらゆらしている。これはきっと生理的な涙が薄い膜を作ってるからなんだ。
「…病気になると弱気になる…ぁー…朝…行けなかったー……」
くそ、毎朝欠かした事なかったのに。
こう言うとき家が隣なら良かったのに、と思う。
なんで徒歩5分…木ノ葉マートの立地条件じゃねーんだぞ。徒歩5分じゃねーよ、直ぐ隣に変えやがれ。
「…変な事考えてる……寝よう…」
食べていなくても大丈夫!を謳った箱に入っていた風邪薬を飲み、暫くベッドでゆるゆる沈む体を遠くで見ている感覚になりながら、瞼を閉じていれば、案外早く意識を手放した、気がする。
***
「……ん……」
視界がぼやける。
私を覗き込む顔が見える。
「お、目ぇ覚めた?」
「…イト…なんでいんの」
夢なのかな、と思っていた私の想像は、きちんとしたイトの声によって消えた。
何度か瞬きをしてから、ゆっくりと体を起こせば、ベッドに腰かける制服姿のままのイトがいた。
なんであえてそこ座ったの。椅子あんじゃん。てか玄関鍵掛かってたでしょ。
「見舞いだっつの。平気?」
「だいぶ…鍵掛かってたでしょ?ピッキング?」
「失礼な!学校帰りにのぞみママの店寄ったら鍵預けてくれたんだし」
胸を張って得意げに言ったイトに呆れながら、のそりと座り直し、寝過ぎてぺったんこになった後頭部を手透きしつつ、ついでに用意してあったハンドタオルで首元の汗を軽く拭く。
「あの人さ…危機感ないよね…普通娘寝てんのに鍵渡す?」
「私がいい子だからじゃん?」
「なんなのあんた」
胡乱とした目で見るが、軽くスルーされた。
そのままイトは横に置いてあった木ノ葉マートのビニール袋を漁り、中から飲み物とプリンを取り出す。
「ねえプリン食べる?買ってきた!」
「食う」
「よし、開けてやろう!」
食べる?と質問しながらもそれと同時に渡してきたこいつは本当どうなの。せめて答えを聞けよ、返事を待てよ。いや、食べるんだけども。
寝起きで力が出ない私の代わりに、イトが蓋だけ開けてくれる。
スプーンで掬ってみれば案外弾力性のあるプリン。安価なのにムッチンプリンて凄い奴だ。
「そう言えば、なんなの?風邪?」
「知らずに来たの」
「うん」
「…お母さんなんも言わなかったの?」
「頭痛と高熱って言ってたかな。あれか、知恵熱?」
「馬鹿じゃないの?知恵熱は大人は発症しねーよ乳児限定だよ」
イトは吃驚した顔で私を見てくる。本当アホ面だな。
それにしてもプリンてば喉越し良すぎる。
バカな会話でも苛立たない。
それにいつの間にか頭痛が治っている!これはもう熱は下がったのかな。それとも一時期によくなってるだけなのかな。
「マジ?知らなかった」
「脳みそに刻んどきなさい。てかさ、イトさ、こっち来るまでに誰か会わなかった?」
「…例えば?どんな?」
「忍者の方とか」
スプーンを銜えて聞いてみると、口から引き抜かれた。歯に当たって地味に痛い。
「いなかったと思う。…のぞみが聞きたいのって好きな人のことっしょ」
「お、うん」
「見たことないからわかんねーよ。名前すらしんねーし。何さんよ?」
「あれ、言ってなかった?キバだよ、犬塚キバ」
「犬塚ぁ?あれだ、獣一族だ」
名前を言えば、何故か怪訝な顔をされた。
「うん、そう。知ってた?」
「まぁ、それなりに。意外だな…」
イトのお父さんは忍で上忍だから、イトは私より忍世界に聡い。
やっぱり、キバの一族も知っていたか。
「意外?」
「うん。のぞみってばもっと静かで大人っぽい人好きそうだったから」
「あら」
キバは正反対。あ、でもそんなに煩いとは思わないけどなあ。私が必死すぎて気付かないだけか。
いや、それでもキバは比較的私には冷めている気がする。
「犬塚ねぇ…ま、頑張れば?私は今日彼氏出来たし」
「…は?」
まさかの爆弾発言にプリンを掬う手が止まった。
「今日告白されたの、隣のクラスの奴に」
「ぎゃぁああ!でオッケーしたの?!私が、友達が病気で苦しんでる時に!」
「おうよ。関係ねぇな。だからまぁのぞみも頑張れ」
軽い絶望に打ちひしがれながら最大級の悪態を飲み込み、舌打ちで返事しておいた。