女の子と大人達(nrt) 凍
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あさおきてから、お日さまはおかおを見せてくれなくて、ずっとおもーいかんじ。まっくらじゃないけど、お空がはいいろだ。
カブトさまが「念の為に」っていって、瑚咲にはちょっとおっきい赤いかさをわたしてくれた。
でもこのかさ、瑚咲は上手にひらけないから、ひらくときは大蛇丸さまにひらいてもらう。だっておもいし、かさのほねがいっぱいで、ぱきぱきいう。このかさは、瑚咲の中で、きみまろがさってよんでる。
まだお空から雨はふってこないから、いまは瑚咲がかさをだっこしてあるいてる。大蛇丸さまは瑚咲のちょっとだけまえをあるいてる。
きょうは大蛇丸さまは大蛇丸さまじゃない。へんげのじゅつで、かみのけのみじかい、しらない男の人になってる。
いつもなら、あるいてる大蛇丸さまのながいかみのけが、ゆらゆらゆれてるのに、きょうはないからへんなかんじ。
「大蛇丸さまー」
「なに?」
大蛇丸さまは瑚咲のほうを見ないで、あるいたままおへんじをしてくれた。
「まだあるくのー?」
「ええ。後少しよ、頑張りなさい」
「はーい」
ちょっとつかれたけど、きょうは大蛇丸さまと瑚咲の2人でのお出かけだから、がまんする。それに、アジトから森を出るまでは、大蛇丸さまがよんでくれた大きいへびさんにのせてもらったから、足はまだまだいたくないもん。
よいしょってかさをだっこしなおして、よこをとんでたちょうちょさんがお空へたかーくとんでいったのを見上げてから、大蛇丸さまのせなかを見た。
「わあ!」
大蛇丸さまのまえに、大きなもんがあった。
ぱっくりとあいたドアには、赤いいろで、あんってかいてある。あんってなんだろ?あん、あん、あーんー。
「あ!あんこ?でも瑚咲、みたらしだんごのがすきー」
「……ちょっと黙ってなさい」
「あい」
このあんこのもんに入ったら、木のはがくれのさとなんだって。
ここからさきは、もくてきちにつくまで、大蛇丸さまのお名まえをよんじゃいけないっていわれた。瑚咲はあむってお口をかんだ。
もんのよこにいる、ひたいあてをしたにんじゃさんのとこで、大蛇丸さまがなにかをかいてる。じっと見てたけど、ちょっとだけにんじゃさんを見てみたら、ぱっちり目があった。
瑚咲はかさをぎゅっとした。にんじゃさんは、瑚咲にひらひらーって手をふってわらった。
大蛇丸さまがかきおわって、瑚咲のかたをたたいて「行くわよ」っていった。あるきだした大蛇丸さまにくっついてく。
ちょっとだけうしろを見たら、にんじゃさんがこっちを見てたから、瑚咲はさっきのおかえしに、ひらひらーってバイバイした。
***
ついたさきは、ひろくて、木と草とお花と白いしかくい石がぽつぽつ立ってた。
とちゅうでかってもらった、みたらしだんごをもぐもぐたべて、おだんごのくしを入り口のごみばこにぽいってした。
大蛇丸さまはまっすぐまっすぐすすんで、おくのほうにある白い石のまえでとまった。瑚咲は右も左も見たけど、だれもいなかった。
「だれもいないねー…」
「…ええ」
「文字、きえちゃってるねぇ」
石のまん中には、ひっかいたみぞみたいなのがよこにならんでる。瑚咲はしゃがんだ。かさはおなかと足のあいだにはさんだ。
まだのこってたみたらしだんごを、石のまえに大きなはっぱの上にのせて、おいてみた。
大きなはっぱは、瑚咲がかたからしてるパチンってするがま口かばんに入れてたやつ。まえ、きどまるとアジトのちかくの森であそんでたときに見つけたやつなのよー。
「長い年月が経っているもの、…当然ね」
瑚咲は、そのきずみたいなやつに手をのばして、おかあさんゆびでさわってみた。ボコボコしてるけど、石はサラサラ。
この白い石は、大蛇丸さまのおとうさんとおかあさんのおはかなんだって。でも、この石の下にいるんじゃないんだって。大蛇丸さまは、おとうさんとおかあさんのしんじゃったのを見てないんだって。
「おとうさんとおかあさんの、お名まえはー?」
「さあ?随分と昔の事よ、もう忘れてしまったわ…」
瑚咲は、しゃがんだままうしろを見上げたけど、そこにはいつもの大蛇丸さまがいた。へんげのじゅつ、とけちゃったのかな。
「ふーん……瑚咲といっしょねー大蛇丸さま」
石を見てた大蛇丸さまは、瑚咲を見下ろした。
「…お前とは少し違うわよ」
「そー?瑚咲ねぇ、大蛇丸さまたちといっしょだから、おかあさんとおとうさん、わかんなくても、しあわせよー」
大蛇丸さまを見上げるのはやめて、もういっかいまえのおはかを見た。マ…なんとかってかいてあるけど、わかんない。
「お前、幸せの意味を解っているの?」
大蛇丸さまのこえがすぐとなりできこえた。
右を見たら、大蛇丸さまが瑚咲とおなじようにしゃがんで石を見てた。
「えー?ここが、ほわほわして、おなかがきゅーってなって、ずーっとわらってられることよ?大蛇丸さましらないのー?」
ここだよって、瑚咲は瑚咲の左のむねのおようふくをぎゅってつかんだ。
大蛇丸さまは、瑚咲を見た。大蛇丸さまの、お口がちょっとだけキュッて下にさがってる。
「……私達といて、お前は幸せなの」
「うん!…大蛇丸さまちがうの?みんなといてたのしくなぁい?」
瑚咲はたのしいよ。
大蛇丸さまがいて、カブトさまがいろいろおしえてくれて、かりんちゃんがおべんきょうしてくれて、たゆやとしゅぎょーして、じろちゃんときどまるとあそんで、さこんとあほのうこんとおしゃべりして、きみまろがむずかしいこといってて、水ちゃんがいっぱいへんなことおはなししてくれて、とってもとってもたのしいよ。
しあわせよ。
「どうかしら。瑚咲、お前なら手を握れば解るでしょう?」
にやーって大蛇丸さまのお口が上にあがった。
瑚咲のまえで、ひらひらって手をふる大蛇丸さまに、瑚咲はくびをふった。
「きょうはねぇ、おててにぎらないのよー」
「……お前はイイ子ね」
「んっふっふー」
大蛇丸さまによしよししてもらって、瑚咲はほら、すごーくしあわせになった!
ゴロゴロとお空がないた。そしたら、すぐに大蛇丸さまの目の下に、お水がぴちょんってはねた。
「大蛇丸さま?」
ふい、と大蛇丸さまが上をむいてから、瑚咲をだっこして立ち上がった。
おもわず、大蛇丸さまのくびにうでをぐるりとした。じろちゃんよりほそいから、瑚咲は瑚咲の手をうしろでつないだ。
大蛇丸さまはかさを手にもってひろげた。ばさりって音がして、まっ赤なかさがひらく。
パタパタポツポツってかさから音がする。かさは瑚咲をだっこしてるのとははんたいがわの手でにぎられた。
「ふってきたわね。帰るわよ」
ほんとはね、ちょっとだけびっくりした。
大蛇丸さまがないちゃったのかとおもっちゃったのよー。なみだだとおもったら、雨だったのねぇ。
「あい」
瑚咲は小さくへんじしてから、ぎゅーってひっついた。大蛇丸さまのながくてサラサラのかみのけに、ほっぺたをひっつける。
さっき、大蛇丸さまのほっぺたにおちた雨は、瑚咲がくいってふいてあげた。
大蛇丸さまはぽふんって音をして、さいしょのしらない人にへんげして、瑚咲をだっこしなおしてかさをにぎってあるきだした。
(あーめあーめふーれふーれかあさーんがーじゃーのめでおーむかえうーれしいなぁー!はいっ)
(…うたわないわよ)
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大蛇丸さまのご両親の死体が火葬か土葬かで墓の下にいるのかどうか悩みました。いないことにしました。殉職、死体は持って帰れませんでしたということに。
瑚咲がいってる、きみまろがさ(君麻呂傘)は、緋色の蛇の目傘です。