女の子と大人達(nrt) 凍
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きょうは、瑚咲がおかしをつくった。
おきてからすぐにりょうりをするところまではしっていって、もうそこにいたカブトさまに、おはようございますってごあいさつをして、よろしくおねがいしますっていった。
カブトさまは「うん、宜しくね」ってわらった。
とりあえず、カブトさまにみだしなみはきちんとしなさいっていわれたから、おかおもあらってかみもきれいにして、もう一どりょうりをするところにもどった。
カブトさまにうすいみどりいろのエプロンをつけてもらって、まえがみもかわいいおんぷがついたピンでちゃんととめてくれた。見ればカブトさまもまっ白なエプロンをつけていた。
「まずは、林檎を洗おうか」
「はーい」
カブトさまがきょうのおかしのざいりょうとか、つかうボールとかぜんぶ出してくれていた。
そこからカブトさまからいわれたとおり、まっ赤なりんごが入ったかごをもって、水どうの下へおく。
まるい瑚咲せんようのだいに立って、やっと瑚咲のくびの下にシンクがくる。カブトさまがキュッとおとを立てて水を出してくれた。
ゴロゴロするりんごはちょっと瑚咲の手より大きくてむーっとする。それでもあらいおわった。
それを白いちょっとぐしゃぐしゃするかみでふいて、かごに入れなおしてカブトさまへわたす。
「カブトさまーできたよー」
「うん、ありがとう。じゃあ次は、これ。このバターと砂糖をこのボールにいれて混ぜてくれないかな」
「はーい!」
瑚咲がカブトさまにりんごをあげると、かわりにおさらに入ったバターとさとうをもらった。
さとうはすき。あまくてふわっとする。このままでも“リッパ”なおかしだと瑚咲はおもう。
リッパはこのまえ、きみまろにおしえてもらった。きみまろはリッパなうつわになるんだって。きみまろはたまによくわかんないことをいうからむずかしくてすきじゃない。きらいじゃないけど。むずかしくないときはすき。
でもほねがとび出るからちょっときもちわるい。ゆびのほねのさきをポーン、ビューンってとばしたときはおもしろかったけど。
ボールにバターとさとうをぽいっと入れて、ぎんいろのカシャカシャするやつでまぜた。
ちょっとだけカブトさまを見ると、カブトさまはさっき瑚咲があらったりんごをたべやすい大きさにきっていた。
瑚咲もやりたいなー、トントンってきるの、おかあさんみたいでしょ。おかあさんはあんまりおぼえてないけど。
「瑚咲、出来たかい?」
「んー」
カブトさまがやってきて、瑚咲のうしろから見た。
ボールの中はまだバターがめちょめちょしていて、さとうもつぶつぶ見える。
「うーん、クリーム状になるまでなんだけどね…このままじゃお昼までには出来ないね…ちょっと僕に貸してくれるかい」
「…うん」
カブトさまにいわれて、ちょっといやだったけどしょうがないからボールとカシャカシャをわたす。
カブトさまはすごく早くカシャカシャをまわして、あっというまにバターとさとうは白くなった。そしてそれを瑚咲にかえしてくれた。
「次はこの溶き卵を入れて混ぜてくれないかい。ああ、一気に入れちゃ駄目だよ。分離するからね」
「はーい。カブトさま、ブンリってなに?」
ブンリ。
そうだ、まえたべた、ブリっておさかなおいしかったなー。
「ああ、…分離はね、物と物が分かれてしまうことだよ。うまく一緒になれなくて離れるんだ」
「ふーん。ブリとはちがうんだねー」
「ぶ、ぶり?なんで鰤?」
「わかったよー」
ボールに、小さいうつわに入ったたまごをちょっとずつ入れてカシャカシャする。白いクリームにきいろがとろーってしてなんかすごくおいしそうに見えた。
カブトさまはなにかまだもごもごしていたけど、ためいきをはーってしてから、おなべにりんごを入れて、そこにバターとさとうを入れて火をつけた。
ためいきすると、しあわせがにげちゃうんだって、かりんちゃんがいってた。カブトさまはしらないみたいだ。
たまごをぜんぶ入れたときには、おなべのほうからすごくあまくておいしそうなにおいがしてきた。
「カブトさまーたまごできたー」
「ありがとう、じゃあそこの机の上にあるアーモンドパウダーを振るい器にいれて、そのボールの上で振るってくれないかい。それが終わったら、今度はその横にあるグラスの中身全部と、小瓶の中身を二滴いれて混ぜてくれ」
「はーい!」
なんだかいっぱいいわれたけど、瑚咲はぜんぶおぼえてる。
“キオクリョクのよさ”は大蛇丸さまにもほめられた。
キオクリョクは、しっかりと人やことばやあったことをおぼえていることだっていわれた。
でも、すきなこといがいちゃんとおぼえてない。
カブトさまはおなべのまえからぜんぜんうごかない。すごく瑚咲がすきなにおいがしてきた。これ、しってる。
プリンの上だ。カラメル!
「カブトさまカラメルー!」
「そうだよ。コレが大事なんだ」
アーモンドパウダーはおわって、グラスの中のこいいろのえきたいをぺしゃりと入れた。おさけのにおいがして、ちょっとだけむーっとした。
いそいでとなりの小びんのふたをあけると、こんどはすごくすごくしあわせになった。
すごいあまいにおい。おいしそう。
いわれたとおりに、二かい、小びんをボールの中へふると、二つしずくがおちた。ちょっとうすいちゃいろの水はすごくおいしそうなにおいをしてる。
ちょっとだけ、とおもってそのびんの先をぺちょっと瑚咲のゆび先にくっつけてみる。するとすこしだけ中みがついた。
口にもってくと、いいにおいがふわってしてしあわせ。べろりとなめてみた。
「ん゛ぐっ!」
あじはおもってたのとぜんぜんちがった。すごくおいしくない。
あわてて水どうのところへいってペッとしたら、カブトさまがわらいながらコップをわたしてくれた。もらって、すぐにゴクリとのんだら、口の中はイチゴミルクのあじにかわった。
「やっぱりね、舐めると思ってたよ。バニラエッセンスは香りこそ甘くて美味しそうだけど、味はまあ、知っての通りだ」
「うっ…うぅー…これ、こんなの入れておいしくなるのー?」
「まあ香り付けの要素だから、味は関係ないんだ。それ以上に他の材料の味が上回るから心配はないさ」
カブトさまは瑚咲のあたまをぽんぽんっとしてから、火を止めたおなべをコンロからおろして、ケーキのかたにキャラメルをながした。
そしてそこの上に、べつのおさらに入れてあった、くたくたのりんごをきれいにならべた。
「瑚咲、ボールを貸して」
「はい」
バニラエッセンスを入れてからまぜていないから、カブトさまが少しだけまぜて、それをりんごの上にかけた。りんごはクリームいろで見えなくなる。
じっとそれを見ていたら、カブトさまが「冷蔵庫からラップで包んである生地を持ってきて」といったから、ふみだいからおりて、れいぞうこへむかった。
大きなれいぞうこのドアをかけごえをだしてあけて、ふみだいをつかって中を見た。とりやすいところにまるいきじがいた。
それをもってカブトさまへわたすと、カブトさまはそのつつみをはずしてこねてから、こんどはまるくかたちをつくりながらのばした。
「瑚咲」
「ん」
「パイ生地をそのままそのアパレイユの上に乗せて。はみ出したらそこは後で切るから大丈夫」
カブトさまからパイきじをもらって、そのくにくにするパイきじをそーっとクリームの上にのせた。すこしはみだしたところは、カブトさまがきれいにきった。そしてそれをもつようにいわれ、りょう手でゆっくりもつ。
そのままカブトさまのうしろをついていけば、大きなオーブンをカブトさまがあけてくれた。
瑚咲だったら入れる。こんどじろちゃんとかくれんぼするときはここをつかうことにきめた。
まん中にパイざらをおいて、カブトさまがボタンをまわしてなにかをぴっとおした。
ブゥーンという音がして、オーブンの中はオレンジいろにひかった。
「30分くらい焼くんだ。焼き終わったらあら熱を取ってから冷蔵庫に入れて冷やす。そうしてしっかり冷ませたらひっくり返して型から取り出して完成だよ」
「わーい!はやくしないかなー!まだかなー」
「今オーブン稼働した所だからね。その間に使ったボールやお鍋を洗ってしまおう」
「はーい!」
カブトさまに石けんをつけてもらった、あわあわのスポンジをギュッとしたら、ぼわっとあわあわがいっぱとんだ。カブトさまにしかられた。
しょうがないからあわあわであそぶのはやめて、ちゃんとあらった。りんごをきったほうちょうは、カブトさまがあらっていた。ボールをさかさまにおいて、手もきれいにふいた。
まだオーブンはブーンっていってた。
カブトさまはおしごとがあるとかいって「高い音がすると出来上がりだ。あのオレンジの光が消えるから、それまで開けちゃいけないよ」っていってから、りょうりをするところから出ていった。
カブトさまがいってから、オーブンのまえで、ぺたんとすわって、はしっこがプクプクしてきたタタンをずっと見ていたら、オーブンのはしっこにあるすう字が09になった。
「はーち、なーな、ろーく、ごーお、よーん、さーん、にーい、」
ちん!
「いちっ!!」
オレンジがきえた。
オーブンはもっとうるさくなった。いそいでドアをあけたら、中からゆげがでてきた。
「あっつーい!いいにおーい!」
「急に触んな。火傷する。ウチが出すから瑚咲はどいてろ」
「お?!」
いきなりうしろからこえがきこえた。しってるぞ。
ばっとふりむいたら、そこにはたゆやがいた。
たゆやはかわいくってすき。たゆやちゃんってよぶとおこる。
たゆやもかりんちゃんもかみが赤くてながい。瑚咲のは赤くないしながくない。大蛇丸さまもながい。でもかみのいろはまっくろ。
女の子は赤いのがふつーなのかな。でも、瑚咲は大蛇丸さまとおそろいだからそれでいいや。かみもながくしようかなー。
「たゆやーなんでいるのー?」
「眼鏡や…カブト様に言われたんだ。瑚咲が一人でオーブン前にいるから手伝ってやれって。手順は知ってるから気にすんな」
「ふーん」
たゆやはオーブンからホカホカのタタンを出した。
金あみの上におかれたそれは、あまいにおいがしてて、おいしそう。
「あら熱取るんだ。湯気が出なくなったらそれでいいってよ」
「んー、そしたらねー、れいぞーこに入れてひやすんだって!ひえたらさかさまにしてきっておわりなのよー」
「なんだ、覚えてんじゃねーか。つーかこれなんだ?ケーキ?パイか?」
「…ん、なん、たる、た、か…た……りんごのタタン!」
「てめー今何か色々端折ったろチビガキ」
たゆやから、ごりっとグーであたまのてっぺんをおされた。
いたい!たゆやはすぐにこーやってするから、こういうとこは、いや。
ぺいっとたゆやのうでをはらった。
「あ?ウチに反撃すんのか?」
「あー!ふえきんしー!大蛇丸さまにいうからねー!」
「チッ」
たゆやのよこぶえは、くらんくらんする。あとなんか、いろいろいっぱいへんなのが出てくる。
カブトさまが、たゆやはげんじゅつつかいだとかいってた。瑚咲もげんじゅつはとくいだから、よくたゆやからしゅぎょーをつけてもらう。
一かいだけ、たゆやにゆびのほねをポキってされてすごくすごくいたくて、ないてさけんだらすぐにやめてくれた。
それからすごくごめんなさいされて「幻術だから折れてねーよ」とか「熱入って思わずやっちまった」とかいわれた。あとであめちゃんとチョコをくれた。
それと、そのあと大蛇丸さまからチクチクいわれたっていってた。チクチクいわれるってなんだろう。大人はむずかしい。
「瑚咲、冷蔵庫入れるぞ。あけろ」
「あい」
たゆやが、ゆげの出てないタタンをもって、瑚咲がれいぞうこのドアをバカリとあけた。
その中にぽいっといれたたゆやは、れいぞうこのドアをしめてから、つくえをゆびさした。ふりかえってみると、つくえの上にはいろえんぴつとかみがおいてあった。
「おえかきー!」
「ああ。瑚咲朝飯まだだろ。それ描いて、ちょっと待ってろ」
「はーい!」
つくえのまえにすわって、赤いえんぴつをにぎった。
かべにあるとけいを見たら、ながいはりが10のとこにいた。とけいのよみかたはこのあいだおそわった。いまは十じだ。
赤いろでかみにせんをかいて、はだいろでまるをかく。あとは、くろともう一かい赤。これでかりんちゃんかんせいだ!おなじいろで、そのよこにたゆやをかいて、つぎはその上に大蛇丸さまをかく。
目がほそくなってしまったけど、大蛇丸さまだ。ぐりぐりとずっとかいてたら、目のまえにおさらがおかれた。
「食え」
おさらの上にはきいろいたまごやきと、きんぴらごぼうとおにぎりがのっていた。
えんぴつをぽいっとして、おはしをもつ。
「いただきまーす」
「…色鉛筆捨てんなよ…」
たゆやがなんかいったけどよくわかんなかった。それよりごはんおいしい。
ぜんぶちゃんとたべてから、ごちそうさまをして、もういっかいおえかきをした。
できたえを見せたけど、たゆやはすごくへんなかおをした。「なんで大蛇丸様の頭の上に…り、リボンついてんだ」とかいってた。あと「ウチの周りにあるハートは消せ。邪魔だ」とかいわれた。たゆやは女の子がわかってない。
そうしてたらあっというまにじかんがたって、れいぞうこからタタンを出してさかさまにした。
ぽん、とキャラメルいろのまるいタタンが出た。キラキラしてて中のりんごがおいしそうで、ほわーっとなっていたら、たゆやがサクッと二つにきった。ちょっとショック。
でもたゆやがザクザクと1人ぶんにきっていったから、それをラップでつつんでふくろに入れていく。
かりんちゃんと、カブトさまと、たゆやと、さこんと(あほのうこんのも)、きどまると、じろちゃんときみまろの。もちろん大蛇丸さまのもちゃんとある。
きりおわったたゆやに、はいっと一つわたすと、ちょっとおどろいてからありがとうっていってくれた。あと、じろちゃんときどまるとさこん(あほのうこんも)にもわたしてくれるっていったから、三人のをわたした。
きみまろはけんきゅうしつにいるから見にいけば、チューブをいっぱいつけてねてた。しょうがないからおねぼうさんのあたまのよこにおいといた。
かえりみちにカブトさまにあったから、わたした。今からかりんちゃんにあうっていってたから、かりんちゃんのもわたした。
あとは大蛇丸さまだけだ。
「おーろーちーまーるーさーまー」
なのにぜんぜんいない。
おかしいなぁ、いつもならすぐに見つかるのに。ぺたぺたと瑚咲の足音がしてるだけで、なんにもきこえない。
とりあえず、大蛇丸さまのおへやにいったら、大蛇丸さまはベッドの上で目をつむってた。
ねてる!いそいでちかよってみたら、大蛇丸さまは目をひらいた。なんだ、ねてなかった。
そして瑚咲のあたまに手をおいて、よしよししてくれた。うれしくなった瑚咲は、手の中のりんごのタタンが入ったふくろをぎゅっとおしつけてしまった。
「さっきから甘い匂いがしていると思ったらお前だったの」
「うんー。カブトさまにおしえてもらってねー、一しょにつくったのー。大蛇丸さまりんごすき?たべてねー」
「…お前、質問しておいて答えも聞かないというのはいけないわよ」
大蛇丸さまはふくろをうけとってくれた。
キャラメルいろのりんごタタンを見て、大蛇丸さまのお口がちょっとあがった。これ、ちょっとだけうれしいときにするおかおなの。瑚咲はおぼえた。
一口、パクリと大蛇丸さまはたべてくれて、それからまた瑚咲のあたまをよしよししてくれた。
「上手く出来たわね…カブトの教えが良かったのかしら」
「ええー、瑚咲がちゃんとできたのよー?」
「ふふ、そうねぇ…瑚咲は料理上手なのね」
そうやってほめてくれて、瑚咲はあったかくなった。
けど、大蛇丸さまはすぐに「忍術もこれくらい上達しなさい」といってきたから、ちょっとかなしくなった。
(まあ、僕が殆ど全部作ったようなもんですけどね)
(カブト作だと思うと味気ないわ)