キバ(nrt) 2013/10了
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頭が痛い。
寝起き早々からこんな頭痛に襲われるとは思わなかった。
今日が休日であったことに一息つきつつ、昨日何か頭痛の原因になるようなことをしただろうかと記憶を辿る。
バイト行っただけだったと思うけど。
「…いった…うー…あ…いのちゃんにばれたんだ」
いや、でもそれが原因な訳無いし。
ただの頭痛かな。片頭痛かな。風邪だったらやだなぁ。明日学校だし、治ってくれ切実に。
グダグダと考えながら、薄い布団を体に巻き付かせて静かに階段を降りる。
今日は両親とも朝から仕事でいないから、一階は静かなはず、だったんだけど。
何故かガヤガヤと音がする。どっと沸く笑い声に、テレビがついているのかとうんざりする。お母さんまさかつけっぱなしで出ていったのかな。
頭痛の中で普段はない母親のミスを考えると、なぜか無性にイラついて少しばかり足音が大きくなった。
ダンダンと音を立ててリビングへ近付いて苛立ち顔でガラスの扉を開けると、私の表情は固まる。
「な、なんでいんの、よ…!」
しかしそこにいたのは母親によるつけっぱなしのテレビではなく、よく見る幼馴染の姿。
「よぉ、起きんのおっせーな」
「わん!わん!」
キバが、普段は見ないとか言っていたテレビをつけていて、なんか勝手にビーフジャーキー食べていて、赤丸は私の足元で布団を甘噛みしている。
夢じゃないか、否夢であってほしいと思ってしまうとんでもない状況に、私は一人置いてけぼりだ。
「キバ!」
「今日任務ねーんだよ」
「だ、だったら修行とか…いつも修行してるじゃん!」
なんで、こんな日に限って!
寝起きだし、頭痛やばいし、化粧だってしてないし、そもそも頭もグチャグチャだし!
凡そ好きな人に見せられる姿ではないことに、恋する乙女心は燃えて灰になりそうだ。
キバには会いたいけど、こういう状況は全くもって望んでいない。
「昨日夜中までやってたから今日は休むんだよ。つーかお前、すっぴん?」
じっと見てきたから何かと思えば、今一番言ってほしくない言葉が吐き出された。
一瞬で私の心はぺしょりと折れ、顔は熱くなる。
「…だっ、て、キ、キバがいるなんてしらないし…てか寝起きだもんしょうがないじゃん!」
キバに指摘され、恥ずかしくて布団を口元まで引き上げる。その反動で赤丸が転がった。
「は?何怒ってんだよ。すっぴんだとちゃんと同い年みてーだよな」
いきなり語気を荒げた私に、キバは意味わかりません、といった顔で私を見てから、すい、と視線をテレビに戻した。
「…化粧してたら年上に見えるってこと?」
「老けて見える。俺あんまケバいの好きじゃねーんだよ」
私を見もせず、テレビに視線を向けたまま言われた言葉は結構ショックがでかい。
「ふ、老け…」
キバの言葉に狼狽えながらも、今度からはチークとシャドウを無しにして、ラインもブラウン系統で抑えよう、リップグロスもピンクオレンジにチェンジだ、と脳内会議は決定した。
「て、てゆーか、なんで、いるのってば」
「暇だったんだっつーの。お前も今日バイトねーんだろ?」
「ないけど…」
様々なショックの連続にもう腹をくくった。
仕方がない。
この状況は、受け入れた。
頭を手櫛で整えながら布団を引きずり、パックジュースを冷蔵庫から出す。ぶす、とストローを挿して吸えば、咥内にバナナの味が広がった。
テーブルに近付き、キバの横に立ってジュースを吸いながらテレビを見続ける横顔を見る。
「どっか行こーぜ。つか、暑苦しいって」
どっか行こーぜ。
どっか行こーぜ。
これはデートでいいんですか、いいんですよね!
未だキバの視線はテレビを見たままの言葉だったが、私には絶大に効果抜群。
自問自答してバカなテンションになる。
そんな私を尻目にキバは布団を引っぺがした。ついでに赤丸がまた転がった。
「お前、寝てるとき寒くねーのそれ」
「は?あ、…部屋着?可愛いからいいの」
訝しげな細い目のキバの視線は私の部屋着に向いていた。
モコモコのキャミとショーパン。ピンクと白だ。
「はー?可愛いとかよか機能性じゃねー?」
「それはキバが忍だからそう思うんだよー。くのいちの子も機能性は考えてるだろーけど、やっぱり見た目重視だと思うよ」
「わっかんねー」
「女の子は自分に合った可愛い服を着たいもんなんですよ」
特にあなたの前では。
と心の中で付け足しておいた。