キバ(nrt) 2013/10了
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休日の昼間、絶好のお出かけ日和に私は絶賛バイト中だ。
けれど休日は時給アップだから入れなきゃ損でしかない。
学生は何かとお金が要りようなのだ。
「いらっしゃいませー!お好きな席へどうぞー!」
お盆にお茶の入った湯呑みと餡蜜を二つ乗せ、新規のお客様には挨拶をして席へ案内をし、退店するお客様は会計をすませる。
マニュアル通りと言ってもピーク時だったりするとこれが中々キツイ。
はやく客引かないかなぁ、なんて無粋な考えを忍ばせながら黙々と注文をとる。
「すんませーん」
「はい、今行きます!」
制服である着物の襷掛けを直しながら、盆を持ったまま二卓に向かえば知った顔がいた。
「あれ、キバ」
「あ?なんでのぞみいんだよ」
「なんでって、私此処でバイトしてんだもん」
訝しげに見てくるキバを、私も少し眉間にしわを寄せながら見返す。
バイト姿を見られるのは少し恥ずかしくて、無意味に前掛けの裾を引っ張った。
「キバ、知り合い?」
かけられた声に、はっとしてテーブル全体を見渡せば結構な大所帯だった。
お茶担当しなかったからわかんなかったのか。
それにしても、くのいちの子達可愛いな。やだやだ、レベル高すぎて私申し訳なくなるわ。
「あー、幼馴染みののぞみ」
「初めましてのぞみです。皆さん忍の?」
「そうだってばよ!オレさオレさ、うずまきナルト!」
首を傾げて聞けば、金髪碧眼の男の子が声高らかに名乗り上げてくれた。
それを横の女の子が頭を殴って沈めさせる。なにそれこわい。え、忍の中では普通??
「煩いナルト!私春野サクラ。よろしく」
「でこりーんちゃんとは仲良くしなくっていーわよ。私いのってーの」
「なんですっていのぶたー!」
うずまき君を殴ったピンクの髪の子がサクラちゃんで、そのサクラちゃんに喧嘩をふっかけたクリーム色の子がいのちゃんか。
二人はあんまり仲が良くない…いや、いいからこそ言い合えるのかな。
「わ、私、日向ヒナタです…キバ君と同じ班です…よ、よろしくね」
「……油女シノだ。オレもキバと同じ班だ」
もじもじとしながら言った黒髪に、薄い白い膜で覆われたような目の女の子がヒナタちゃん。
しかし日向は聞いたことあるぞ、木の葉の名門一族だ。その嫡子か、可愛い。
油女君は寡黙…な部類かな、うん。サングラスの奥がとても気になる。
「自己紹介とかめんどくせーけど、一応礼儀だしな…奈良シカマルだ」
「ボク秋道チョウジ、よろしくね」
この二人はのんびりした感じが伝わる。まあ種類の違うのんびりだけど。
最後、サ、と全員分の視線が集まった。
その子は少し、鬱陶しそうにその視線を受け止めた。
物静かとは違う、言うならばクールな印象といったその子はボソリと呟く。
「…うちはサスケ」
「そういうとこもカッコイイー!」
「クールなサスケくん素敵ー!」
名前だけでなく、わかった事はサクラちゃんといのちゃんはうちは君のことが好きだと言うことかな。
確かに顔は格好いいけど、少し無愛想だし、怖い。
結論、私はやっぱりキバがすき。
それにしても、同じ班にあんな可愛い子がいたとは…落ち込むしかないじゃない。
鬱々としつつも切り替えて笑顔を作る。
「それで、ご注文は?」
今はバイト中。私は本来の業務に戻らないといけない。
時給が発生しているのだから、バイトとは言えしっかりと働かなければ。
「あ、そうだったそうだった」
「とりあえず、ボクお団子40本ね!」
「おいチョウジ!俺ら金ねーぞ!」
「何言ってんのー?後で先生達来るからお金は先生持ちよー」
とりあえずという量ではない注文に突っ込めばいいのか、自分達の先生に奢らせようとしているのを突っ込めばいいのかわからない。
彼らにとってこれが日常会話なのか。
「…凄すぎるよ忍者…」
「あ?なんて?つーかのぞみお前何時に終わんだよ」
「え、…は、20時上がりだけど。なんで」
キバさんよ、私は一応貴方が好きなんです。
なのでそういう期待しちゃうような発言は、ちょっとなるべく控えてくんないかな。
心の中で念じてみるが、もちろん届くはずもない。
「20時ぃ?おっせー…ダメだやめた」
「いやいや、だからなんでって」
「今日オレもう任務ねーし、母ちゃんも姉ちゃんもいねーからお前ん家で夜飯食わしてくんねーかなーとか思ったんだよ」
でもおせーからなしだな、とかいうキバ。
ここで普通は怒るか呆れるかするんだろうけれど、私はキバが好きだから、そんな発言ですらスルーしてしまう。
それよりなにより、家に来ようとしていたことに恥ずかしくなってしまうので気を回すことが出来ないという方が正しいんだけど。
ぎゅ、と盆を握り直してキバを見る。
「なに、タダ飯狙いだけ?」
「そー。だから帰り待とうかと思ったけどよー、予想外に遅かったから無し。テキトーに食うわ」
「ふー、ん」
赤くなったり泣きそうになったり、忙しい私の感情は、表に出せなくて少し口に力が入る。
それを目敏く見付けたのか、いのちゃんが指先でテーブルを叩いた。
「あんたねぇ…聞いてたらなにそれ。酷くないー?」
「は?」
「のぞみちゃんはきっとねー」
「いのちゃん」
いらぬことを言わなくていいの、と無言の視線を向ける。
いのちゃんは少し眉をひそめたが、溜め息をつき若干前のめりになっていた体制を直した。
よかった、通じた。ほっと肩をおろす。
「…ま、いーわー。のぞみちゃん、私抹茶パフェ」
「あ、私白玉餡蜜ね。皆は?」
いのちゃんとサクラちゃんが微妙な空気を治してくれた。
それにならい、次々にみんな注文していくので慌てて伝票を埋める。
「…はい、かしこまりました。では、少々お待ち下さい」
頭を下げて、私はやっとマニュアル通りにテーブルを後にした。
少しだけ、二人に感謝をしておく。