男子誕生日で花言葉(アカセカ) 2017/07了
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―拝啓、幾年巡る時節の中、如何お過ごしだろうか。千香子にとってよい期間であれば嬉しく思う。さて、堅苦しい挨拶はこれまでとして、本題に移ろう。ワシは今、お前さんに会うために天の国をでたところじゃ。何、心配はいらぬぞ。どうもお前さんの顔が見たくなってな。どうであろうか、最近は。飯は食っているか?ちゃんと眠っているか?遊びに出かけているか?仕事は順調か?体は壊しておらぬか?ふとお前さんの事を考えたら、あれこれと思い浮かんでな。もうこれは会いに行くしかあるまいと思った次第じゃ。
綺麗な和紙で出来た縦書きの手紙は、流麗な細い文字が美しく並んでいる。
古の国にいる私のところへ、この手紙が届いたのは今朝。
薄緑の葉で出来た包の中に、この淡い鵯色の和紙が入っていた。
ニニギ様からだとは思ったが、読み進めてその内容に驚いた。
私の目からは涙が溢れて止まらない。
私は止め処なく溢れる涙をそのままに、枕元に置いてある薬を片付けるために手紙を置いて立ち上がる。
「なんじゃ、やはり体を壊して居ったか」
「え…」
突然、背後から可愛らしい声が聞こえたと思えば、すぐに肩を抑えられて座らされた。
「ニ、ニニギ様!え、そんなっ、はやい…手紙は今朝…」
「手紙は読んだか?ああ、まだ一枚目だったか。二枚目にほら。この手紙を読んでいる頃にはもう着いておるじゃろうと書いてあるじゃろ」
渡された手紙を見れば、確かに綺麗な文字でそう書いてある。
慌てて髪を手で梳き、座った状態から頭を下げた。
「も、申し訳ありません。このような格好でお出迎えをしてしまい…」
「ああ、よいよい。やめんか。ほらその泣いた顔を見せよ。こんなに細くなって!無理のしすぎじゃな。息抜きと言うものをすべきじゃ。旨い握り飯と暖かいお茶で一息つくと心が軽くなるぞ!」
ニカ、と笑ったニニギ様に、私の涙腺はとうとう決壊した。
倍の量になって涙が流れ落ちる。
それを見て慌てたのはニニギ様で、ぐいぐいとお袖で私の頬を擦る様は、可愛らしい。
思わずふにゃりと笑顔を浮かべると、ニニギ様は嬉しそうな顔をした。
「おっ、やはりお前さんは笑っておる方が可愛いぞ!頑張ることは良いことだが、千香子は頑張りすぎる。人付き合いも大切だが、時には肩肘張らずにゆっくりと自分の心を癒す時間を作るべきじゃ。今日と明日はワシがおるから、ゆっくりするとよい!」
ニニギ様は、私が何も伝えていないにも関わらず、私の思い悩んでいることを全て言い当て、そうして掬った。
ああ、もう、この御方はなんてお優しく、不思議で、そうして愛おしいのか。
キュウキュウと鳴る胸をそのままに、私は思い切ってニニギ様に抱き着いた。
【神秘的なあなたがくれる嬉しい便りはいつだって駆け足だ】