男子誕生日で花言葉(アカセカ) 2017/07了
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時折、この里の端にある色とりどりの花畑に、銀髪の綺麗な人がいる。
その人は人離れした美しさで、ああきっと神様の眷属なのであろうな、と見た時から思っていた。
綺麗な人は冷徹だとよく言われるけれど、あの人はとても優しくかった。
私がたまたま葉で指を切ってしまい思いの外出血が多くて焦っていた時に、彼は静かに私の元へ来て、そうしてあれやこれやと言う前に私の指を消毒して綺麗に布を巻いてくれた。
その目は蛇のようで、金色に光っていて、とても綺麗だった。
じっとその人の目を覗き込んでいたら、とても悲しそうな顔をしたからあまり見てはいけないのかと思って小さく謝った。
すると彼はとても驚いて「お前には俺がどう見える」と呟いた。声は低くて静かだ。
私は素直に「神の眷属に見えます」と答えたら、彼はとても嬉しそうにはにかんだ。
予想外にその顔が可愛くて、先程までの切っ先のような美しさが消えていたことに、今度は私が驚いた。
「あの、手当てを有難うございました。お礼に何かしたいのですが、私は一般の庶民。貴方様のような神の眷属のような方に喜んでいただけるようなお礼が見当もつきません」
「…いや…いい。当たり前のことをしただけだ。それよりお前、俺を見てどうも思わないのか」
彼を見ても、綺麗な方だという感想が湧くが、さして不快な気持ちは湧かない。
所々、肌の奥に白いキラキラと光る鱗のようなものも見えるが、眷属なのであれば人間と異なる姿なのは普通ではないのだろうか。
首を傾げて見れば、彼は穏やかに笑った。と言うより呆れたような笑いだった。
「可笑しな奴だな…そうだな、礼ならば、お前をくれと言ったらどうする」
「私ですか」
神であれば、そういう注文もあるのであろうなと思っていたが、まさか本当にそう言われるとは思っていなかった。
しかし、彼には出血を止めて手当までしてもらった。
普通の人間相手の礼とは違うだろう。
「…はい、大丈夫ですよ。神様へのお礼ですから。私は家族もおりませんし、肉はあまりついていませんので美味しくもないかも知れませんが、それでよければどうぞ。神の贄となるのであれば幸いな死です」
私が胸の前で手を組んで目を閉じれば、暫くは風が私の頬を撫でるだけだった。
けれどすぐに彼の息遣いが耳に聞こえて、とうとう食べられてしまうのだ、と思っていたら。
「…明日も、此処に来い」
低い声でそう言うと、彼の気配は消えていた。
ぱちりと目を開いて廻りを見たけれど、どこにも彼はいなくて、ただ私の凄く煩い鼓動だけが花畑に響いていた。
【恋はいつだって情熱的になるものだけれど、用心に越したことはないのよ】